高カロリーな食事が肥満菌を増やす!?腸内細菌とダイエットについて

太る体質、痩せる体質の違いは腸内細菌=「腸内フローラ」の違いにありました!

私たちの腸の中には、1000種類以上の腸内細菌が600~1000兆以上も (なんと総重量は1~1.5kgにもなります!)、住み着いています。
普段はあまり意識することのない、目立たない存在である腸内細菌ですが、彼らは私たちの食事から栄養を得る代わりに様々な有益な物質をつくり出すことで私たちの健康を保ってくれています。
私たちと腸内細菌は、ギブ&テイクの関係を築いているのです。

腸内の細菌がつくり出す生態系を「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼び、腸内フローラはその人の食生活や人種・年齢などにより様々で、人によって全く異なります。
腸内フローラは、健康な人だと善玉菌 (ビフィズス菌など、良い作用をもたらすもの):20%、悪玉菌(黄色ブドウ球菌など悪い作用をもたらすもの):10%、日和見菌 (善玉菌が優勢だと良い働きをし、悪玉菌が優勢だと悪い働きをする):70%といった割合で形成されています。

腸内細菌と聞くと、便通や整腸などお腹の調子についての働きを思い浮かべる方も多いかと思いますが、それだけではなく、腸内フローラは免疫系や精神状態など様々なところに影響を与える、とても重要なものだということが分かっています。
更に最近の研究により、この腸内フローラのバランスが崩れ、「肥満菌」ともいえる特定の細菌が増えると、太りやすくなるということが分かってきました。

太った人の腸内にはびこる「肥満菌」とは?
今回は、腸内細菌とダイエットについてお話ししたいと思います。

高カロリーな食事が原因!肥満菌のヒミツ

アメリカの国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所で、次のような実験がおこなわれました。

1. 標準体型の男性数名と、肥満体形の男性数名のグループをつくります。
2. 標準グループ、肥満グループに、普通食(標準摂取カロリー)を3日間食べてもらい、その間排出される尿と便に残されたエネルギー量と、便に含まれる腸内細菌を分析します(食べたもののカロリーがどれだけ吸収され、その時の腸内フローラはどうなっているのかを調査するため)。
3. その後、両グループに、今度は高カロリー食を3日間食べてもらい、同じように尿・便・腸内細菌を分析します。

その結果、肥満グループの男性は、どちらの食事をとってもエネルギーの排出率は一定で、エネルギーの吸収率に変化はありませんでした。
ところが、標準体型の男性群が高カロリー食を摂った場合、エネルギーの排出量は減少、すなわち体内にエネルギーを吸収する率が高まっていたのです!
同時に、腸内フローラにも、大きな変化が現れました。

通常、ヒトの腸内細菌はBacterodetes門(バクテロイデス門)と、Firmicutes門(フィルミクテス門)の2つに大きく分けることができるのですが、高カロリー食を摂取した場合、フィルミクテス門の菌が増え、バクテロイデス門の菌が減っていました。
フィルミテクス門の菌は、通常、ヒトが分解して吸収しないような栄養成分まで分解・吸収して栄養源としてしまうような、「肥満菌」ともいえる存在です。
たった3日間の高カロリー食の摂取で、肥満菌が増え、標準体型の男性群の腸内フローラが肥満体形の人のものに近付いてしまったのですね!

今回の研究では、標準体重の方の体内に吸収されたエネルギーが150kcalアップするごとに、フィルミクテス門の菌(肥満菌)が20%も増え、バクテロイデス門の菌が減ってしまったそうです。
だいたい、ご飯小盛り一膳(100g)で約168kcalなので、ご飯一膳を余分に吸収するだけで、腸内フローラは肥満型に変化していってしまうことになります。
肥満菌が増やす1日分のエネルギーの吸収量は、私たちが普段食べて得るものに比較すると大きなカロリーではありませんが、それが1年、3年、10年……と続き、積み重なった時に、目に見える変化として現れるのでしょうね。
日々の心がけが大切なようです。
(出典:Am Clin Nutr.2011 Jul:94(1):58-65.)

いかがでしたか?
腸内の細菌が肥満をコントロールしているかもしれないなんて、ちょっと驚きですよね!
次回は、さらに気になる、
「痩せた人の腸内細菌をもらえば、誰でも簡単に痩せられるのでは?」
という疑問に迫った実験と、腸内フローラを整えるためにぜひ続けていただきたい、腸に良い食事など、対策方法についてお話ししたいと思います。

[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]

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