紫外線対策でビタミンDが不足!?ビタミンDと日焼け止めについて

日光を肌に浴びないため、日傘や長袖、そして日焼け止めを欠かさないという方も多いと思います。
しかし、布団や洗濯物を殺菌したり、体内時計を調節したり…と、日光には大きなメリットもあります。
そのなかでも、私たちの健康の維持に大きな役割を持つ、日光浴によるビタミンDの生成。
日焼け止めを塗ることによりビタミンDの生成が妨げられ、ビタミンD不足を心配する声も挙がっていますが、実際にビタミンDは不足しているのでしょうか?
また、どの程度の日光浴でどれくらいのビタミンDが生成されるのでしょうか?

今回は、ビタミンDと日光についてお話ししたいと思います。

本当に不足しているの? ビタミンDについて

ビタミンDは、骨の形成にかかわることで知られる脂溶性のビタミンです。

カルシウムやリンが十分な量を摂取できていても、ビタミンDがなければ骨や歯をきちんとつくることができなくなります。

ビタミンDが欠乏すると、小児ではくる病(骨の石灰化障害が起き、脊椎や四肢骨に変形や湾曲が起こる)、成人では骨軟化症を引き起こし、骨粗鬆症の原因となることがわかっています。

しかし、ビタミンDは食事からも摂取することができるうえ、紫外線に当たることで体内のコレステロールを材料に皮膚で合成されるため、不足する心配はないとされてきました。

摂取目安量(厚生労働省2015年版日本人の食事摂取基準より)と実際の摂取量(厚生労働省H27年度国民健康・栄養調査結果より)を見てみると、どの年代も目安量を上回る量を食事より摂取しています。

充分に摂取できていると思われるビタミンDですが、なぜ不足が危惧されているのでしょうか?

実は日本の目安量に比べ、アメリカやカナダでは成人の摂取量が15μg(70歳以上は20μg)と高い設定となっているのですが、これは口腔摂取や日光浴による生成などの区別をせず、ビタミンDそのものの摂取目安量で設定しているからです。

つまり、私たちも、15μgから摂取量を引いた分のビタミンDを、紫外線を浴びて産生させる必要があるのです。

では、紫外線対策を万全にしている人が多い現代、皮膚から産生されるビタミンD量は不足しているのでしょうか?

日照時間とビタミンDの産生量について

WHOでは、週に2~3回、手・顔・腕に5~15分ほど日光を浴びれば十分なビタミンD濃度を保つことができるとされています
(参考:https://www.who.int/uv/faq/uvhealtfac/en/index1.html)。

日本臨床皮膚科医学会では、「一日の必要量の合成には両手の甲程の面積を15分程日光に当るか、日陰で30分過ごす程度で充分」とされています
(参考:https://www.jocd.org/disease/disease_32.html)。

環境省(2015年版紫外線環境保健マニュアル)によると、標準的な日本人(スキンタイプⅢ/参考:あなたは何タイプ?知って賢く対策!日焼けの仕方から分かるお肌のタイプ)が、皮膚の25%(両腕と顔に相当)を、日焼け止めを塗らずに外出すると、東京都心では、真夏(8/1)の昼だと3分で10μgのビタミンDを産生することができると計算されています。

同様に真冬(1/1)の昼ごろに12%(顔と手に相当)を露出して外出すると、約50分となります。

この程度の日光であれば、ほとんどの方が十分な量を浴びていると思いますが、ネックは日焼け止めの使用にあります。

実は、ビタミンDをつくる紫外線の波長が日焼けを起こす波長に近く、SPF30の日焼け止めを使用すると、ビタミンDの産生量が5%以下になるという報告もされているのです。

だからといって、日焼け止めを塗らずに紫外線を過度に浴びると、シミやシワなどの光老化、さらには皮膚がんなどの原因となることが考えられます。

また、いくら紫外線対策をしていても、塗り忘れた個所があったり、こまめに塗り直しができなかったりして、いつでも日焼け止めの効果を100%発揮できているわけではありませんよね。

春から夏にかけての紫外線の照射量が多い季節は、あまり意識しなくても、ビタミンD産生に十分な紫外線を浴びていると考えてもいいのではないでしょうか?

秋から冬にかけて、紫外線照射量が少なくなり、寒さなどもあって、なかなか外出しなかったり、防寒具に覆われていて肌に日光を浴びる部位が減ったりしてしまう季節は、意識的に日光浴をするように心がけましょう。

肌にダメージが起こらない範囲内で、日差しが強くなる前などに軽く日光浴をする、日焼け止めをあまり塗らない手のひらを日光に当てるなど、日光と上手に付き合っていきたいですね。

今回は、紫外線とビタミンDについてお話ししました。

紫外線は肌にとっては、百害あって一利ありといった感じでしょうか、多少の日光浴が必要であることもわかっていただけたと思います。

ですが、どうしても日焼けしたくないという方、紫外線を浴びることができないという方もいらっしゃると思います。

次回は、食事から摂るビタミンDについてお話ししたいと思います。

[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]

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