コーヒーに発がん性?!コーヒーは体にいい?悪い??

「オトナの朝は1杯のコーヒーから……」

朝食に欠かさないという方、オフィスでの1杯に癒されている方、さまざまいらっしゃると思います。

しかし、先日米国カリフォルニア州の裁判所がコーヒーチェーン大手のスターバックスに「発がん性を警告するラベルを貼る」ことを命じた判決への支持を示し、コーヒーの安全性が話題となっています。

もともとコーヒーは、カフェインや多くの抗酸化物質などを含むため、たびたび健康へのメリットとデメリットが話題になる飲み物。

今回は、コーヒーは体にいいのか悪いのか、調べてみたいと思います。

 

コーヒーに発がん性あり?! アクリルアミドとは??

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今回の裁判所の判断は、『コーヒー豆の焙煎時に生じる「アクリルアミド」によって生じる発がん性のリスクが、コーヒーを飲むことで得られるメリットを超えないことが説明できなかった』というもの。

農林水産省によると、アクリルアミドは人間の体を構成するアミノ酸の一種であるアスパラギン酸と糖類(還元糖)が、高温での加熱(120℃以上)による化学反応(メイラード反応の一種)の過程によってできるとされています。

メイラード反応とは、簡単にいうとアミノ酸と還元糖でできたコゲのことで、パンやホットケーキなどを焼くときのこんがりとした焼き目や、たまねぎを炒めてあめ色にするような、褐色の色素が生成される反応のこと。

つまり、私たちにとってはとても身近な反応であり、食品の香りや美味しさにも関わるものといえます。

そのため、アクリルアミドはコーヒーにのみ含まれているわけではなく、アスパラギン酸が含まれており、加熱する多くの食品、パン、クッキー、ポテトチップスなどの食品から麦茶、ほうじ茶といった飲み物まで、多くのものに含まれています。

また、アイスコーヒー1kgに含まれるアクリルアミドの量は、平均0.02mgと報告されており、他の食品と比較して特に多く含まれているわけではありません。

WHOの研究機関であるIARC(国際がん研究機関:International Agency for Research on Cancer)は、2016年にコーヒーに関してはGroup3(Drinking coffee was not classifiable as to its carcinogenicity to humans)という「ヒトに対する発がん性について分類できない」という結果を発表しています。

(出典:https://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2016/pdfs/pr244_E.pdf)

今回の裁判所の判断は、コーヒーの危険性を断定したものではなく、「コーヒーが人体に害を及ぼさないこと」「コーヒーを飲むことによる健康に対するメリット」を証明できなかったものという風にとらえることができます。

面白いことに、IARCはコーヒーをグループ3に分類しましたが、65℃以上の非常に熱い飲み物は“グループ2:ヒトに対して恐らく発がん性がある”に分類しています。

コーヒーを飲む・飲まないというよりは、熱すぎる飲み物を飲まないことの方が、私たちの健康にとっては重要なようです。

 

えっ?! コーヒーには抗がん作用があるの??

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実は、コーヒーの摂取ががんのリスクを下げるという報告もあります。

日本の国立がん研究所によると、コーヒーをたくさん飲む人は全く飲まない人に比べて口腔・咽頭・食道がんのリスクが下がるとのこと(出典:Am J Epidemiol. 2008 Dec 15;168(12):1425-32)。

また、米国・ハーバード大学のEdward Giovannucci教授によると、コーヒーを1日に4杯以上飲んでいる女性はそうでない女性に比べて子宮体がんのリスクが下がるとも発表されています(出典:Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2011 Dec; 20(12): 2487–95.)。

実はがん以外にも、Ⅱ型の糖尿病や肝臓疾患発症のリスク低減についても着目されています。

これらは、コーヒーに含まれるクロロゲン酸というポリフェノールやたくさんの抗酸化物質による効果だと考えられています。

ちなみにコーヒーは、私たち日本人(コーヒーを日常的に飲んでいる人)にとっては一番のポリフェノール摂取源となっているといわれています。

 

『コーヒーは飲むべき? それとも飲まない方がいいの??』

内閣府の食品安全委員会の調査によると、コーヒーを含む飲料からのアクリルアミドの摂取は約17%(出典:https://www.fsc.go.jp/osirase/acrylamide1.data/acrylamide_QA.pdf)。

アクリルアミドの摂取量を減らしたい方は、コーヒーの摂取量を気にするよりは、調理方法を高温になりがちな「揚げる・炒める」回数を減らし、高温になりにくい「茹でる・蒸す」といった調理法に変える方が有用だと考えられます。

コーヒーはそもそも嗜好品であることを考えると、美味しさや香り、それがもたらすリラックス効果などを得るためのもの。

ほどほどに楽しむのが一番ではないでしょうか?

[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]

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