「最近、肩を上げると痛い」「後ろに手を回すのがつらい」・・・そんな症状に心当たりはありませんか？
もしかすると、それは四十肩かもしれません。
今回は、肩の痛みの原因や予防・対策方法について姿勢専科KCSセンターの姿勢調整師である下條恵理子さまに伺いました。
四十肩と五十肩、違いはある？
「四十肩」「五十肩」と聞くと何が違うのとおもわれると思いますが、実は基本的に症状や病態はほぼ同じです。
正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、肩の関節や周囲の組織（腱、靭帯、関節包）が炎症を起こすことで痛みや動かしにくさが出ます。
40代で発症する場合は四十肩、50代で発症する場合は五十肩、と便宜的に呼ばれるのでしょう。
また、四十肩は名前の通り40歳前後に起こりやすい肩の痛みですが、30代後半でも症状が出ることがあります。
四十肩の原因は完全には解明されていませんが、加齢による肩の腱や関節包の硬化、長時間の座り姿勢やスマホ使用、悪い姿勢も大きく関係しています。腱板（肩の回旋筋腱）に炎症が起きたり、肩複合体のアライメント不備で動かしにくくなるのです。
どんな症状がある？よくある肩こりとは違う？？
痛みの部位は、人によって異なりますが、主に腕を動かすときに痛むのが特徴ですが、動かし方によって強く痛みが出たり、また出ない場合もあります。
「肩全体が重い」「腕を上げると痛い」「腕を後ろに回せない」といった症状が出たら、早めにチェックが必要です。放置すると、症状が長引いたり、肩が完全に固まる「凍結肩」に進行する可能性もあるため、早めに適切な処置が必要です。
肩の不調として肩こりをイメージする方も多いと思いますが、肩こりは主に筋肉の疲労や血流の滞りからくる鈍い痛みが中心です。
一方、四十肩は肩関節自体の可動域が制限され、腕を上げたり後ろに回す動作で強い痛みを感じます。
夜間痛や安静時の痛みがあることもあり、肩こりの延長とは少し違うことを覚えておきましょう。
四十肩の予防はできる？
四十肩は日常の生活習慣である程度は予防可能です。
姿勢の関与がある程度わかってきているので、姿勢の専門家（姿勢調整師や姿勢科学士など）に相談してみてください。
専門家のアドバイスを受け、自分の姿勢の状態に合った肩甲骨を動かすストレッチや、肩周りの筋肉をほぐすエクササイズを日常に取り入れると良いでしょう。
長時間のデスクワークでは、1時間に一度肩を回す、胸を開くストレッチをするだけでも負担軽減につながります。
自分の姿勢を日頃から良くしておくことで、根本的に症状を起こさない身体づくりも可能です。
良い姿勢とは？
横から見たときに耳の穴・肩（鎖骨を辿った先のポコっとした骨：肩峰）・股関節（大転子）・膝の中心・くるぶしが一直線上に並び、背骨が自然な生理的カーブを描いて重力に抵抗できる姿勢が良い姿勢です。
この姿勢は、身体にかかる負担が最も少なく、力学的・構造的・工学的に安定した状態であり、長時間維持しても疲れにくく、健康維持やパフォーマンス向上に繋がります。
ただし、この良い姿勢を保つためには、意識だけでは難しく、背骨の歪みや関節の硬さ、機能障害（セグメンタルディスファンクション）を取り除き、筋肉の変な癖を改善し、自分の状態にあった姿勢改善エクササイズをするのが有効です。
本格的に良くしたい方は、姿勢の専門家に相談するのがおすすめです。
痛みを感じたらどうする？自分でケアできる？
急に肩に強い痛みが出た場合は、まず安静にしましょう。
しかし、長いあいだ動かさないのも逆効果です。
炎症が引いてきたら痛みのない範囲で動かすことは、血流を促し、関節が固まるのを防ぎ、予後の状態を安定させます。
軽症であれば自然に痛みがなくなっていくこともあります。
ですが、中途半端に痛みが減ったからといって無理したり、我慢して放置すると肩の可動域が制限されたまま慢性化することもありますので、放置しない方が良いケースが多いです。
四十肩向けのセルフケアとして、ストレッチ・体操がさまざまな方法がネットなどでも紹介されています。
ですが、素人判断でやってみることは却って痛みが増したり悪化したりする可能性もあるため、あまりおすすめしません。
またストレッチや体操は、基本的に筋肉のみへのアプローチのため、根本的解決にならない場合も多いので、早めに専門家へ相談しましょう。
医者？それともカイロプラクティックや鍼灸？
肩のつらさをどこに相談するか・・・これは判断が難しいところですが、手術が必要なケースは少ないため、整形外科では、痛み止めやシップなどの対症療法が中心になることが多いでしょう。
注射や理学療法の指導がある場合もあります。
カイロプラクティックは国際基準をクリアしている先生は安心ですが、そうでない所は国民生活センターにも被害報告があるようです。
鍼灸院は筋肉のこわばりや血流改善に有効はケースもあるようです。
新しい分野と言われている科学に基づいた姿勢調整は、身体全体の姿勢バランスを調整し、肩関節や胸鎖関節、背骨などの痛みを取り除くことがいくつもの論文や症例報告で確認されているので、おすすめです。
どれも自分の状態に合わせて選択したり組み合わせることで回復を早めることができます。
誰にでも起こりえる四十肩。
デスクワークや運動不足の方が増えているせいか、最近では35歳でも四十肩になる方がいらっしゃいます。
肩の違和感を感じたら、早めに姿勢や生活習慣の見直しをしていきましょう。
痛みが続く・悪化するなどのときは、早めに専門家にご相談ください。
［執筆者］
下條恵理子
姿勢調整師
長年悩んでいた腰痛、肩こり、さらに事故による怪我の後遺症を救ってくれた「姿勢医学」に興味を持ち、自らも医療系資格を取得。現在は『姿勢調整師』として臨床現場で活躍。
ウェスタンステーツ大学国際コース修了。
姿勢科学ディプロマ取得。
UCLA（ロサンゼルス校）にて、人体解剖学修了。
姿勢専科KCSセンター武蔵中原責任者。
一般社団法人KCSテクニカルマネージャー。
2022年に国際学会で発表した、研究は最優秀論文賞を受賞。
2024年4月に日本に10名しかいない『認定セラピスト』に選定された。
また、プロピアニストとしても活躍しており、CD『人生で聴いておきたい名曲』はタワーレコード第１位、不定期のコンサートも好評。
姿勢専科 KCSセンター
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