
健康診断の再検査っていつまでに受ければいい?クリニック理事長赤松先生が疑問にお答えします
会社や学校で毎年受ける健康診断。
面倒、あんまり意味ない・・・と思っている方はいませんか?
健康診断は、自分自身の体の情報が得られる貴重な機会なのです。
西梅田シティクリニック理事長の赤松敬之先生による解説です。

健康診断をしっかり受けて、自分自身の情報をアップデートしよう
新年度が始まり、職場や自治体から健康診断の案内が届く時期になりました。
「めんどう」「なんとなく言われたから受けている」
そんな声を、健診・人間ドックを専門に運営する西梅田シティクリニックでも本当によく耳にします。
ですが、健康診断は「自分の体の取扱説明書」を毎年アップデートする貴重な機会です。
ご自身のためにもしっかり受けましょう。
そして、受けた後の結果を見ることも大切ですが、意外とどこをどう見ればいいか迷ってしまうことも。
健康診断の受け方や結果の受け止め方、検査の種類など、患者さんから寄せられがちな素朴な疑問に、臨床現場の医師の立場からお答えします。
Q1.健康診断の前日、やってはいけないことは?
押さえてほしいポイントは次の通りです。
・食事は検査の10時間前までに済ませる(前日21時以降は食べない、が目安)
・アルコールは前夜から控える(特に深酒)
・激しい運動は避ける(筋肉が壊れて肝機能の数値[AST・ALT・CKなど]が一時的に上がります)
・高脂肪食を避ける(中性脂肪が跳ね上がります)
・睡眠はしっかり取る(血圧・血糖値に直接影響します)
・当日朝の水分は基本OK(コップ1杯程度の水。ただし糖入り飲料・牛乳・コーヒーはNG)
意外と知られていないのが、激しい運動と寝不足の影響。
また、「健康のためにジムへ」と前日に頑張ってしまう方がいますが、検査値だけ見ると逆効果になりかねません。
Q2.健康診断前だけお酒やたばこをストップ・・・これって意味がある?
正直に申し上げると、「直前だけ整える」のはあまり意味がありません。
・前日の飲酒:γ-GTPなど肝機能の数値に影響するため、控えるのは正しい
・数日前からの「駆け込み禁酒」:肝機能の根本的な状態は変わりません
・喫煙:当日朝は控えてください(血圧上昇、検査前の体調変化の原因に)
※ただし、普段から吸っている方の長期的なリスク評価は変わりません
健康診断は「日々の生活を映す鏡」。
前日だけ取り繕った数値ではなく、普段の状態を正しく把握することが本来の目的です。
「お酒をやめたら数値が良くなった」ではなく、「お酒を飲む生活を続けたらどうなるか」を知るために受けるもの、と考えていただくのがよいと思います。
Q3.結果の数値、どれを見ればいい?特に重要な項目は?
優先的にチェックしてほしいのは、いわゆる「サイレントキラー」に関わる項目です。
自覚症状なく進行し、ある日突然脳梗塞・心筋梗塞などにつながるためです。
確認しておきたい領域と注目しておきたい項目をセットでチェックしましょう。
・血圧:収縮期/拡張期血圧
・血統:空腹時血糖、HbA1c
・脂質:LDLコレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール
・肝機能:AST、ALT、γ-GTP
・腎機能:クレアチニン、eGFR、尿蛋白
・尿酸:UA(高尿酸血症は痛風だけでなく腎機能・心血管リスクにも)
特にHbA1c(過去1〜2か月の平均血糖)とeGFR(腎機能)は、年に一度の推移を見てほしい数値です。
1回の数値より「去年と比べてどう変化したか」を見るのが、健診結果の正しい読み方です。
Q4.年代ごとに、特にチェックしておきたい項目は?
年代ごとにチェックしておきたい項目は変動します。
おおまかな目安として、次のように考えています。
20〜30代
体重・BMI、血圧、脂質、肝機能、女性は子宮頸がん検診。
この年代の「軽い異常」は、放置すると40代以降に一気に問題化します。
40代
HbA1c、脂質異常、胃部検査(できれば胃カメラ)、女性は乳がん検診開始。
生活習慣病が「見える化」してくる年代です。
50代
心電図、頸動脈エコー、大腸がん検診(便潜血→陽性なら大腸内視鏡)、男性はPSA(前立腺)、胃カメラの定期化。
60代以降
腹部エコー、肺がんCT、骨密度、認知機能、眼科健診(緑内障)。「がん」と「血管病」「フレイル」が3大テーマになります。
Q5.「再検査」と書かれていました。本当に行かないとダメ?いつ?
結論から言うと、必ず行ってください。
健康診断はあくまでスクリーニング(ふるい分け)。
「異常の疑い」が出た時点で、診断は確定していません。
確定診断や経過観察の方針は、再検査・精密検査ではじめて出るものです。
タイミングの目安:
再検査・要精密検査:原則1か月以内、遅くとも3か月以内
要治療:速やかに(数週間以内)
経過観察:次回健診で再評価。ただし症状が出たら早めに
実際の臨床現場で、「3年連続で再検査と出ていたが放置していて、受診時にはがんが進行していた」というケースを何度も目にしてきました。
再検査の通知は、未来の自分への手紙だと思って、ぜひ受けてください。
Q6.オプション(追加料金)で付けるなら、おすすめは?
職場の基本健診だけでは見えない領域をカバーする項目をおすすめします。
胃カメラ(内視鏡)
バリウムより圧倒的に精度が高く、ピロリ菌の有無も評価できます
腹部超音波(エコー)
肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓を一度に評価。脂肪肝・腎嚢胞・胆石などの発見に有用です
頸動脈エコー
動脈硬化の進み具合を「見える化」できます
ピロリ菌検査
一生に一度は確認しておきたい検査です(胃がんリスクに直結)
婦人科オプション(女性)
乳腺エコー、子宮頸がん細胞診
脳ドック(MRI/MRA)
40代以降、特に高血圧・家族歴のある方
大腸内視鏡
40代以降、便潜血陽性歴がある方は強く推奨
一気に全部を追加するのは予算的にも難しいので、「数年に一度のローテーション」で回していくのが現実的です。
Q7.バリウム、本当につらい・・・受けないとダメ?
まず前提として、協会けんぽなどの健診ではバリウム検査(胃部X線)が基本的に組み込まれていることが多いため、制度上は受診が求められるのが実情です。
そのうえで、医学的にどう考えるかをお話しします。
胃がんの発症にはピロリ菌感染の有無が大きく関わっており、ピロリ菌がいない方は、胃がんに至るリスクがかなり低いことがわかっています。
そのため、ピロリ菌陰性の方であれば、毎年律儀にバリウムを受ける必要は必ずしもないと考える余地があります。
現実的な落としどころとしては、バリウムと胃カメラを隔年で組み合わせるという方法もよい選択肢です。
胃カメラは鎮静剤を使うことができるため、想像されているよりもずっと楽に受けられるようになっています。
「眠っているうちに終わっていた」という声も多く聞きます。
一方、バリウム検査には以下のような弱点があります。
・飲みづらい、げっぷを我慢する苦痛
・検査後の便秘・腸閉塞リスク
・放射線被ばくがある
・病変を見つける精度は胃カメラに劣る
・異常が出たら結局、胃カメラを受けることになる
特にピロリ菌に感染している(または過去に感染していた)方は、胃カメラの方をおすすめします。
重要なポイントとして、ピロリ菌を除菌したことがある方でも、胃がんのリスクはゼロにはならず一定残ることが知られています。
そのため、除菌歴のある方こそ、定期的に胃カメラで直接観察しておくことが安心につながります。
まとめると、
(1)ピロリ菌の有無を一度しっかり確認する
(2)陰性なら毎年のバリウムにこだわらず隔年でもOK
(3)陽性・除菌歴ありの方は胃カメラを軸に組み立てる
というのが現実的な戦略です。
バリウムが本当につらい方は、医療機関や健保に相談のうえ、胃カメラへの切り替えを検討してみてください。
Q8.マンモグラフィーが痛すぎる・・・どうにかなりませんか?
マンモグラフィーは、乳房を圧迫して薄く広げることで小さな石灰化や腫瘤を見つける検査です。
圧迫しないと精度が落ちるため、ある程度の痛みはどうしても伴います。
ただ、軽減する工夫はあります。
生理周期に合わせる:
生理開始後7〜10日目あたりが、最も乳腺の張りが少なく痛みも軽いと考えられます。
生理前1週間はホルモンの影響で乳腺が張り、痛みが強くなりがちなので避けましょう。
検査前にカフェインを控える:
乳腺の張りを助長します。
技師さんに「痛みに弱い」と伝える:
圧迫の調整をしてもらえます。
また、マンモグラフィーには痛みだけでなく放射線被ばくの問題もあります。
そのため、人によっては乳腺エコー(超音波)を選ぶ、あるいは併用するという選択肢もおすすめです。
エコーは痛みも被ばくもなく、特に日本人女性に多い「高濃度乳腺(デンスブレスト)」の方ではマンモグラフィー単独で見えにくい病変を拾える強みがあります。
「痛いから乳がん検診そのものをやめる」が一番リスクの高い選択肢です。
マンモグラフィー単独にこだわらず、自分の乳腺の性質や年齢に合わせて、乳腺エコーとの組み合わせを医療機関と相談してみてください。
さいごに
健康診断は「受けて終わり」のイベントではなく、毎年積み重ねていく自分のデータベースです。
1年単位では小さな変化でも、5年・10年でつなげて見ると、その人の体の傾向がはっきり見えてきます。
「めんどう」で済ませず、結果が届いたら必ず開いて目を通す。
気になる項目が一つでもあれば、ためらわず医療機関に相談する。
それだけで、未来の自分の健康は大きく変わります。
健康診断は、未来の自分への投資です。
今年の結果も、ぜひそんな視点で眺めてみてください。
[執筆者]

赤松敬之先生
医療法人星敬会理事長・西梅田シティクリニック理事長・クラウドドクター代表取締役・医師
大阪・梅田で内科、消化器、婦人科、健診センターなど幅広く対応する「西梅田シティクリニック」を運営。糖尿病をはじめとする生活習慣病の早期介入と、がんの早期発見をテーマに、現役世代の予防医療に取り組む。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、全国向けオンライン診療プラットフォーム「クラウドドクター」、および美容クリニックを展開し、対面・オンラインの両面から働く世代の医療アクセス改善に取り組んでいる。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事。
株式会社クラウドドクター
https://cloud-dr.jp/



