
ノンケミの日焼け止めの方が肌にいいの?2種類の紫外線防御剤のはたらきを知って正しく使いましょう。
日焼け止めを購入するときに「ノンケミカル」「紫外線吸収剤フリー」などといったワードを目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。
こう書かれると、そっちの方が肌に良いのかな、と思ってしまいますよね。
実際はどうなのでしょうか?
今回は、大きく分けて、2種類ある紫外線防御剤と、それぞれの働きについてお話ししたいと思います。
紫外線吸収剤とは?
紫外線吸収剤は、その名のとおり紫外線を吸収し、熱など体に害のないほかのエネルギーに変化させる作用を有しています。紫外線吸収剤にはたくさん種類がありますが、いくつか代表的なものをご紹介いたします。
主にUVBを吸収するもの
・メトキシケイ皮酸エチルヘキシル
・オクトクリレン
・ジメチルPABAエチルヘキシル など
主にUVAを吸収するもの
・ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル
・t-ブチルメトキシベンゾイルメタン など
UVA・UVB両方吸収するもの
・オキシベンゾン-3
・メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール
・ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン など
UVBの防御能(SPFとして数字で表されます)と、UVAの防御能(PAとして+の数で表されます)、日焼け止めにはどちらも重要です。
そのため、さまざまな紫外線吸収剤を組み合わせてつくられていることが多いです。
紫外線吸収剤は肌に悪いって本当?!
一部の紫外線吸収剤に関しては、2018年に珊瑚礁や海洋生物への影響が懸念され、ハワイなどではオキシベンゾン(オキシベンゾン-3)、オクチノキサート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)を含んだ日焼け止めの使用が禁止される法案が可決されました。
配合禁止、なんて言われると、人体に悪い影響があるのでは、と思われるかもしれませんが、これは海洋環境保護を目的としたもので、人体への影響を想定したものではありません。
紫外線吸収剤はポジティブリストに掲載された成分で、配合量には上限が定められた成分です。
しかし、それは規定された配合量の範囲内では安全性が確認されている成分であるともいえます。
実際、紫外線防御効果の高いメトキシケイヒ酸エチルヘキシルは、日本で最もポピュラーな紫外線吸収剤で、多くの日焼け止めやUV機能を有する化粧品に使用されています。
また、紫外線吸収剤=ケミカル(化学合成された成分)と思われがちですが、実は天然由来の原料で紫外線吸収剤としてポジティブリストに収載されている成分もあります。
それは、コメヌカなどから得られる「フェルラ酸」です。
天然由来の紫外線吸収剤としては唯一の成分になります。
フェルラ酸には、UVA・Bの吸収による紫外線防御効果が確認されていますが、さらにチロシナーゼ活性阻害という美白効果も確認されています。
紫外線防御しながら美白効果も期待できるなんて、とても魅力的な成分ですよね。
今後、注目の成分となるかもしれません。
紫外線散乱剤とは?
紫外線散乱剤には、主に酸化チタンや酸化亜鉛などのミネラル(無機質)が使用されています。
紫外線散乱剤は名前のとおり、紫外線を反射・散乱させることで紫外線から皮膚を防御すると思われる方も多いでしょう。
しかし、酸化チタンや酸化亜鉛は、可視光線は反射しますが、紫外線は吸収する作用があることが報告されています(出典:Arch Dermatol. Feb;135(2):209-10. (1999))。
更に、その後の研究で、酸化チタンと酸化亜鉛紫外線の4~5%ほどを反射・散乱させ、残りを吸収すること、粒子のサイズや結晶構造によって吸収能に大きな違いがあったことなどが報告されています(出典:Photodermatol Photoimmunol Photomed. Jan;32(1):5-10.2016)。
紫外線散乱剤として使用される成分も、紫外線を吸収しているなんて面白いですよね。
また、これらは可視光線を反射させる(白く明るく見せる)作用を持つため、紫外線を防御する目的だけでなく、顔料としてメイク品などにも使用されています。
ファンデーションなどにも欠かせない成分です。
紫外線吸収剤・散乱剤、どちらがお肌にいいの?
巷ではいろいろいわれているようですが、吸収剤と散乱剤、どちらにもメリット・デメリットはあります。
●紫外線吸収剤のメリット・デメリット
[メリット]
紫外線吸収剤は、化粧品に配合しやすく、使用感もよく仕上がりも良い日焼け止めを作りやすいという特徴を持っています。
使用感が軽く、塗っても肌が白くならないなどの特徴を有する日焼け止めに使用されていることが多い成分です。
[デメリット]
まれに、紫外線吸収剤にアレルギーがある方がいます。
目に刺激(しみる)を感じる方もいます。
●紫外線散乱剤のメリット・デメリット
[メリット]
アレルギーを起こしにくいため、米国皮膚科学会では子供や敏感肌の方にはこのタイプの日焼け止めの使用をすすめています。
実際、幼児用やベビー用の日焼け止めにも良く用いられています。
[デメリット]
可視光を反射させ、肌を白くみせる作用があるため、白浮きしてしまうことがあります。
また、使用感も若干重めとなる傾向があります。
目に刺激(しみる)を感じる方もいます。
しかし、最近は原料メーカーや化粧品メーカーも工夫を重ね、吸収剤や散乱剤そのものを改良したり、処方化技術によってデメリットをなくしたり・・・と、上記メリット・デメリットも一概にはいえません。
また、両タイプの成分をうまく組み合わせることで、使用感も紫外線防御効果も高くなっている日焼け止めも市場には多く出回っています。
さまざまな要素から、自分にとって一番良い日焼け止めを選ぶようにしましょう。
どんな日焼け止めを選んだとしても、一番大切なのは「使い方」
実は、日焼け止めの選び方以上に重要なのが、日焼け止めの使い方です。
最近は伸びや塗り心地の良い日焼け止めが多いので、塗布時に薄く延ばし過ぎててしまい、塗布量が不足している方も見受けられます。
SPFを測定する試験では1㎠につき2mgの使用量が規定となっており、顔全体への塗布量で考えると、0.8g程度必要となります。
つまり、これより塗布量が少ないと、表示されたSPFどおりの紫外線防御効果が得られません。
規定量の半量しか使用しなかった場合、
・SPF4の日焼け止めの場合→SPF2へ
・SPF15の日焼け止めの場合→SPF4へ
・SPF50の日焼け止めの場合→SPF7へ
と、大幅に下がってしまったという日本化粧品工業連合会による報告もあります。
SPF50のつもりが7しかないなんて、びっくりしてしまいますよね。
使用量としては、剤型にもよりますが全顔1回分で1円玉2枚程度の量になります。
1度に塗ろうとするるとムラになりやすいので、2度塗りをするなどの工夫をして、きっちり使用量を守りましょう。
また、いくらきちんと塗っていても、どんなタイプの日焼け止めであっても、時間の経過によりどうしても紫外線防御効果は薄れてしまいます。
そのため、きちんと塗り直すことも大切です。
なるべく数時間に1度は塗り直すよう心がけましょう。
特に、汗をたくさんかいたときやタオルで拭いたときなどは、なるべく早めに塗り直しましょう。
スプレータイプやスティックタイプなど、塗り直し時に手が汚れず便利なタイプの日焼け止めもありますので、好みに合わせて使いやすいものを持っておくと安心ですね。
[執筆者]
船木 彩夏
化粧品メーカー研究員
[出演情報]
2023.12.2 TBSラジオ:井上貴博 土曜日の「あ」
<資格>
・サプリメントアドバイザー
・健康管理士上級指導員
・健康管理能力検定1級
・日本化粧品検定 特級コスメコンシェルジュ
[監修]キレイ研究室編集部