バリウムと胃カメラはどちらを選べばいい?特徴についてクリニック院長の安江先生に伺いました

健康診断や人間ドックで胃の検査を受ける際、「バリウム検査と胃カメラのどちらを選べばよいのか」と悩まれる方は多いのではないでしょうか。
どちらも胃がんをはじめとする消化器疾患の早期発見を目的とした重要な検査ですが、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。
バリウム検査と胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)の違いや選び方とは?
天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック院長の安江千尋先生による解説です。

バリウム検査とは?

■検査の概要
バリウム検査は、正式には「上部消化管造影検査」と呼ばれます。
造影剤であるバリウムを飲み、胃や食道、十二指腸の形や粘膜の状態をX線(レントゲン)で観察する検査です。
■検査の流れ
1.発泡剤を飲んで胃を膨らませる
2.バリウムを飲む
3.検査台の上で体位を変えながらX線撮影を行う
4.検査後はバリウムを排出するために下剤を服用する
■メリット
・検査時間が比較的短く(10~15分程度)、身体への負担が少ない(個人差あり)
・内視鏡を挿入しないため心理的な抵抗が少ない
・健康診断で広く実施されており、費用が比較的安価(自費で5,000~15,000円程度)
・胃全体の形態を俯瞰的に評価できる
■デメリット
・粘膜の微細な形態変化や色調変化を見つけにくい
・組織検査(生検)ができない
・異常が見つかった場合、胃カメラによる再検査が必要
・被ばくを伴う
・検査後に便秘や腹部不快感が生じることがある
・誤嚥のリスク(特に高齢者)

胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)とは?

■検査の概要
胃カメラは、口または鼻から細い内視鏡を挿入し、食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察する検査です。
現在では、早期胃がんの発見に最も優れた検査とされています。
■検査の方法
・経口内視鏡:口から挿入する一般的な方法
・経鼻内視鏡:鼻から挿入し、嘔吐反射が少ない
・鎮静剤を使用した内視鏡:眠っている間に検査が可能
■メリット
・微小な病変や早期胃がんの発見に優れている
・検査時間自体は5~10分と短時間(ただし鎮静剤を使用すると検査後に30分~1時間休憩する必要あり)
・組織検査(生検)が可能
・ピロリ菌感染や炎症の評価ができる
・その場で止血などの処置・治療が可能
・放射線被ばくがない
■デメリット
・内視鏡挿入に対する不安や抵抗感
・嘔吐反射が生じやすい(鎮静剤の使用により軽減)
・鎮静剤使用時は当日の車の運転ができない
・まれに出血や穿孔などの合併症
・医療機関によっては費用が高くなることがある(自費で15,000~25,000円程度)

バリウム検査と胃カメラの比較

観察方法
バリウム検査:X線による間接的観察
胃カメラ:直接観察
早期胃がんの発見
バリウム検査:△
胃カメラ:◎
組織検査
バリウム検査:不可
胃カメラ:可能
被ばく
バリウム検査:あり
胃カメラ:なし
検査後の再検査
バリウム検査:必要になることが多い
胃カメラ:不要なことが多い
苦痛
バリウム検査:比較的少ないが個人差あり
胃カメラ:鎮静剤で軽減可能
検査時間
バリウム検査:10~15分程度
胃カメラ:5~10分程度
費用
バリウム検査:比較的安価
胃カメラ:比較的高価
誤嚥リスク
バリウム検査:あり
胃カメラ:あり(比較的少ない)

どちらを選ぶべきか?

■胃カメラが推奨される方
以下のような方には、胃カメラが特に推奨されます。
・ピロリ菌感染歴がある、または除菌後の方
・胃がんの家族歴がある
・過去に胃潰瘍や胃ポリープを指摘されたことがある
・胸やけ、胃痛、食欲不振などの症状がある
・精度の高い検査を希望する方
・40歳以上で定期的ながん検診を受けたい方
■バリウム検査が適している方
以下のような場合には、バリウム検査も選択肢となります。
・内視鏡に対する強い不安や抵抗がある
・鎮静剤を使用できない方
・簡便に検査を受けたい方
・職場健診などで胃カメラの選択が難しい場合

胃がん検診としての位置づけ

日本では、胃がん検診としてバリウム検査と胃カメラのいずれも有効とされています。
しかし、近年では内視鏡技術の進歩により、胃カメラの方が早期胃がんの発見率が高いことが明らかになっており、多くの自治体でも内視鏡検査が導入されています。
特に、ピロリ菌感染率の高い世代では、内視鏡検査による定期的なフォローが重要です。

検査を受ける際の注意点

■バリウム検査
・検査後は水分を十分に摂取する
・便秘予防のため下剤を適切に使用する
・白色便が数日続くことがある
■胃カメラ
・検査前は絶食が必要
・鎮静剤を使用した場合は当日の車の運転を避ける
・検査後の咽頭違和感は通常一過性

消化器専門医からのメッセージ

胃の病気は早期に発見することで、内視鏡治療のみで完治が期待できる場合も少なくありません。
「つらそう」「怖い」といったイメージから検査を避けてしまう方もいらっしゃいますが、現在では鎮静剤を使用することで、苦痛の少ない検査が可能となっています。
ご自身のリスクや体調、生活スタイルに合わせて適切な検査を選択し、定期的に胃のチェックを受けることが大切です。

まとめ

■バリウム検査の特徴
・簡便で広く実施されている
・被ばくを伴う
・異常があれば胃カメラによる精査が必要
■胃カメラの特徴
・早期胃がんの発見に優れている
・組織検査や治療が可能
・鎮静剤により苦痛を軽減できる
■選び方のポイント
・精度を重視するなら胃カメラ
・簡便さを重視するならバリウム検査
・症状やリスクがある場合は胃カメラが推奨
バリウム検査と胃カメラはどちらも有用な検査ですが、早期胃がんの発見という観点では胃カメラがより優れています。
ご自身の健康状態や費用、不安の程度を踏まえ、医師と相談しながら最適な検査を選択することが重要です。

[執筆者]

安江千尋(やすえちひろ)先生
天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック院長

2009年、防衛医科大学校卒業。初期臨床研修後、同大学病院にて消化器内科の研鑽を積む。その後、自衛隊横須賀病院、自衛隊舞鶴病院などで内科診療に従事し、消化器疾患の診療経験を重ねる。
2017年よりがん研有明病院下部消化管内科に勤務し、2020年には副医長に就任。
早期胃がん・大腸がんに対する内視鏡診断・治療において豊富な経験を有する。
2024年12月、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニックを開院し、院長として地域医療に貢献している。

資格・所属学会
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器病学会 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医

天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック
https://www.tennoji-naishikyo.com/

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