「美白」という言葉にときめく女性は多いと思います。
透き通るような白い肌。
明るく透明感のある肌。
女性の憧れですよね！
私たちは、いつ頃から、なぜ美白を目指しているのでしょうか？
美白命は平安時代から！現代でも人気の美容原料を使っていた？！
今日では、美白コスメはポピュラーなアイテムとなっていますが、美しい白い肌を求める女性の心は、すでに平安時代からあったそうです。
平安時代、丹羽頼康によって記された「医心方」という医学書には、「豊麗で白い肌にする方法」「濃艶な白い肌にする方法」など、なりたい肌別に10種類以上の美容方法が紹介されています。
スキンケアに使うものとしては、「酢」「ハチミツ」「お酒」「卵」などが登場します。
アミノ酸が豊富なお酢、栄養たっぷりのハチミツ、米などを発酵させたお酒は現在でも化粧品の原料としてヘアケアやスキンケアに利用されていますし、卵の殻にある薄い膜（卵殻膜）も、最近は美容効果が高い素材として注目されています。
現代に生きる私たちと同じような素材を、当時の女性たちも使っていたのですね。
白い肌ともうひとつ、平安時代のお姫様といえば、背丈よりも長い豊かな黒髪。
医心方には、ヘアケアに関する情報も多く掲載されています。
洗髪後、お酒で髪をすすぐとサラサラになるという、何となく今の私たちにも理解できるものから、焼いた猫の糞を混ぜた油を塗る（！）という驚愕のケア方法（円形脱毛症のケアだそうですが、効果は・・・？？）までさまざまですが、当時の人の“美”に対する思いが伝わってきます。
キレイになりたいという気持ちは、平安女子も現代女子も同じなのですね。
人気の白粉は水銀や鉛製！昔は美白も命がけ
平安時代には、伊勢白粉が公家御用達の上質な白粉として人気を集めたそうですが、その原料となるのは何と人体への毒性があり、水俣病の原因としても知られる水銀！
伊勢白粉は伊勢詣の流行とともに全国に伝わり、伊勢地方の特産品となったそうです。
今昔物語集にも、伊勢の水銀商人が鈴鹿峠で盗賊に襲われる話が載っており、平安時代には水銀商人が盛んに往来していたことがわかりますね。
江戸時代に入ると、今度は京白粉とよばれる鉛を主原料にした白粉が、伸びの良さや仕上がりの美しさ、そして価格面からも人気を集めます。
鉛も、水銀同様に人体への有毒性が知られる金属。
皆さんは、白いキレイな肌になれるからといって、鉛や水銀を使用した白粉、使えますか？
たぶん、ほとんどの人が「無理」「怖い」と感じるのではないでしょうか。
鉛も水銀も、中毒を引き起こす有害なもの。
実際、中毒症状によって亡くなった方もかなりの数だったようです。
より魅力的に見せようと、母親が顔だけでなくデコルテや胸元まで白粉をはたくため、母乳を飲むときに白粉を口にしてしまい、赤ちゃんに症状が出るケースも多かったとのこと。
明治時代になると、人気歌舞伎俳優であった五代目中村歌右衛門が鉛中毒になるという事件が起き、危険性が認知されてくるのですが、明治末に使用禁止となるまで使い続けられていました。
実は当時、すでにお米の粉や、デンプン、オシロイバナの種子を利用したものなど、植物由来のものもあったようですが、肌へのツキのよさやのび、白さから、危険だということを知りつつも鉛由来の白粉が大人気だったとか。
自分の体への危険性を認識しつつも、キレイになるため使ってしまうという乙女心。
「わかる・・・！」という方も多いのでは？
安心して使うことのできる化粧品に囲まれているわたしたちは、幸せなのかもしれません。
多様性社会と美白。世の中から美白コスメがなくなる！？
数多の美白成分や剤型から、安心して好みの美白コスメを選べる現代。
しかし、これまでとは全く異なる理由で美白コスメは市場から姿を消してしまうかもしれません。
実は、2020年に海外の化粧品メーカーが「美白を意味するホワイトニング（Whitening）などの表現が『白い肌＝美しい』といったステレオタイプを助長し、人種差別につながる」として、美白を謳う商品の販売停止や表記の変更を発表したのです。
国内の化粧品メーカーでも、すでにこの動きに追従を発表しているところもあります。
日本はもちろん、中国、韓国、インドなど、アジアでは美白への関心が高いことが知られています。
今後の各メーカーの動きが気になりますね。
今は昔「キレイになりたい」と願えるものありけり。
かくて今もうつろわず「キレイになりたい」と願い続けていたり。
・・・今も昔も。
「キレイになりたい」という気持ちって、変わらないのです。
［文：キレイ研究室研究員 船木（化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級）］
