外反母趾になったらどうすればいい?対策についてクリニック院長の三河聡志先生にお話を伺いました

足の親指辺りの痛み・・・外反母趾に悩んでいる方、多いのではないでしょうか。
市販のサポーターなどもたくさん売られていて、これって使った方がいいの?
それとも受診すべき??
今回は、みかわ整形外科クリニック院長の三河聡志先生にお話を伺いました。

どうして外反母趾になるの?

外反母趾(がいはんぼし)は、足の親指(母趾)が人差し指のほうへ曲がり、付け根の関節が外側に突き出してしまう状態です。
主な原因は、足の形(アーチの崩れ)と靴の影響です。
足の裏には「縦アーチ」と「横アーチ」という2つの弓形のカーブがありますが、特に横アーチがつぶれることで、親指の付け根の骨(中足骨)が外へ広がり、親指が内側に曲がります。
もともと足が柔らかく扁平気味の方、遺伝的にアーチが弱い方、関節が柔らかい女性などに起こりやすい傾向があります。
また、ヒールが高く先の細い靴を長時間履くと、つま先に負担がかかり、親指が押し込まれるような形で変形が進みます。
一方で、遺伝や加齢による筋力低下・靭帯のゆるみなど、靴以外の要因も多く関係しています。

ハイヒールを履かないのに痛い・・・どうして?

「ヒールを履かないのに外反母趾が痛い」という方も少なくありません。
これは、足の構造的な問題や、変形の進行による炎症が原因です。
親指の付け根には「滑液包(かつえきほう)」というクッションのような袋があり、関節が出っ張ると靴とこすれて炎症を起こします。
これが「バニオン」と呼ばれる赤く腫れた痛みの原因です。
また、親指の変形が進むと、足全体のバランスが崩れ、中足骨の下にタコ(胼胝)や魚の目ができたり、足の裏の筋肉が疲れやすくなったりします。
つまり、ヒールを履かなくても、足の構造の崩れが続けば痛みは出るのです。男性や高齢者でも起こり得ます。

受診すべき?治療方法は?

痛みが続いたり、見た目の変形が気になったり、歩行に支障が出る場合は整形外科を受診しましょう。
外反母趾は進行性の病気であり、早めの対処が大切です。
治療は大きく分けて2つあります:
1.保存療法(手術をしない治療)
・靴の見直し(幅広・柔らかい素材)
・インソール(足底板)でアーチをサポート
・テーピングや装具で親指の向きを補正
・ストレッチや筋力トレーニングで足のバランスを整える
2.手術療法
痛みが強く、日常生活に支障がある場合に検討します。
手術では、親指の付け根の骨(中足骨)を切って角度を整える「骨切り術」などが行われます。
手術法は変形の程度により様々で、入院期間も短くなってきています。

市販のサポーターは効果がある?身に付けるべき?

ドラッグストアなどで販売されている外反母趾用サポーターには、いくつかのタイプがあります。
・親指の角度を矯正するタイプ
・付け根の摩擦を和らげるクッションタイプ
・夜間に指を広げて固定する装具タイプ
これらは痛みの軽減や一時的な補助としては有効ですが、骨の変形自体を治すことはできません。
サポーターで楽になる場合は、炎症を和らげたり、靴との接触を防ぐ効果を目的に使うと良いでしょう。
ただし、締めすぎると血流を妨げたり、足の形に合わないものを使うと逆効果になることもあります。
正しい選び方や装着時間については、整形外科や義肢装具士に相談するのがおすすめです。

おすすめのセルフケアはある?

外反母趾は、日常の工夫で進行を遅らせることができます。
以下のセルフケアが有効です。
1.足指の体操
・タオルギャザー:床にタオルを置き、足の指でたぐり寄せる。
・足指じゃんけん:「グー・チョキ・パー」で動かす練習。
→足のアーチを支える筋肉(短母趾屈筋・母趾外転筋など)を鍛えられます。
2.ストレッチ
親指を手でやさしく外側へ開き、5秒程度キープ。これを数回繰り返すだけでも関節の柔軟性が保てます。
3.足裏マッサージ
ゴルフボールなどを足裏で転がすと、筋肉の緊張を和らげ、血流が良くなります。
4.体重管理
体重が増えると足への負担も増すため、適正体重の維持も大切です。

普段の生活で気を付けるべきことは?

1.靴選び
・つま先が広く、柔らかい素材の靴を選びましょう。
・ヒールは3cm以下が理想です。
・長時間立つときは、インソールでアーチを支える工夫を。
2.歩き方
親指の付け根でしっかり地面を押すように歩くと、アーチの維持につながります。
ペタペタ歩きや内股歩きは避けましょう。
3.足の観察
日々の入浴時などに、赤み・腫れ・タコ・魚の目などがないか確認し、早めに対応することが大切です。
4.冷え対策
足が冷えると血流が悪くなり、筋肉や靭帯が硬くなります。足首や指先を温めましょう。

まとめ

外反母趾は、靴だけが原因ではなく、足の構造や筋力、生活習慣が関係する「全身のバランスの病気」です。
放っておくと痛みや変形が進み、歩行に支障をきたすこともありますが、早めに正しいケアを行えば、多くの方が症状をコントロールできます。
気になる痛みや違和感があるときは、我慢せず整形外科で相談してください。
あなたの足に合った治療法を見つけることが、快適な生活への第一歩です。

[執筆者]

三河聡志先生
医療法人一誠会みかわ整形外科クリニック理事長

資格等:日本整形外科学会専門医
日本整形外科認定リウマチ医
日本整形外科認定スポーツ医
2023年5月 みかわ整形外科クリニックを開院。
「楽しく元気に」を合い言葉に職員一丸となり、治療に取り組んでいる。
診療の中心は整形外科であり、関節の痛み、打撲や骨折等の怪我、交通事故、労災などに対応しており、患者層は乳幼児から100歳を超える高齢者まで幅広い。

医療法人一誠会みかわ整形外科クリニック
https://mikawa-cl.com/

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