「しわを改善」が承認!そもそも「医薬部外品」って何?
薬用コスメや薬用化粧品、Medicated Cosmeticsなどと呼ばれる化粧品たち。
これらは、「医薬部外品」に該当する化粧品です。
普通の化粧品とどう違うのでしょうか?
薬用化粧品と普通の化粧品の違いとは?
例えば米国では、日本で販売されている日焼け止めがOTC医薬品(一般用医薬品)とされています。
日本では、私たちが肌や毛髪のケアに使用するアイテムは、厚生労働省管轄の薬機法にて「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」の3つのカテゴリーに分類されています。
医薬品は特定の症状の治療、化粧品は健康な身体を清潔に保つ・美しくするといった目的で使用されます。
『医薬部外品』は日本にしかないカテゴリーで、予防や衛生を目的に使用されます。この違いが実際のアイテムではどのような違いとなるのか、育毛剤を例に見てみたいと思います。
医薬品の場合: | 発毛・育毛・抜け毛予防 |
医薬部外品の場合 | 育毛・養毛、毛生促進・発毛促進、ふけ・かゆみ・脱毛の予防、病後・産後の脱毛 |
化粧品の場合: | 頭皮・毛髪を健やかに保つ、頭皮・毛髪にうるおいを与える・保つ |
見てわかるとおり、医薬品で認められている『発毛』は、医薬部外品では認められていませんし、化粧品では『育毛』に関して効果を謳うことはできません。
医薬品は症状に対する治療効果を期待することができますが、副作用を起こす可能性も考えられるため、使用することで得られるメリットとデメリットを理解することが大切で、その使用量や使用法、使用期間などは厳密に規定されています。
医薬部外品は、厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が、決められた濃度で配合されていますが、化粧品同様『人体への作用は緩和』という特徴があります。
医薬部外品として承認された化粧品は「薬用化粧品」「薬用コスメ」などと呼ばれており、一般的には、化粧品とほぼ同一視されていることが多いかもしれませんが、薬機法では両者は区別されています。
化粧品としての機能のほかに、有効成分による効能効果が期待できなければならないのです。
薬用化粧品に認められている効能効果は、化粧品で認められているものも多くあり、薬用化粧品独自の効能としては、
薬用石鹸(洗顔料を含む)※有効成分として殺菌剤が主剤のもの | ・皮膚の殺菌・消毒 ・体臭・汗臭及びにきびを防ぐ |
化粧水、クリーム・乳液など※有効成分として消炎剤や美白剤などが主剤のもの | ・肌あれ・あれ性 ・あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ ・日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ(H20.4.1以降の申請より) ・日やけによるメラニンの生成を押さえ、しみ・そばかすを防ぐ(作用機序による) |
などがあります。
皆さんがご使用になっている薬用化粧品に書かれているものはありましたか?
薬用化粧品といえども、ニキビを治すなど、治療効果があるような表現は一切使用できません。
美白化粧品をご使用になられている方も多いと思いますが、「日やけによるメラニンの生成を押さえ、しみ・そばかすを防ぐ」のみで、以前にもお話ししましたが、シミを消したり肌を白くしたりするものではないのです。
やはりシミ対策には、シミができる前の紫外線対策がとても重要なファクターとなりそうです!
新しい効果・効能が承認! 薬用コスメでシワが改善?
シミと並んで多くの女性を悩ます2大肌悩みといえば、シワ。
実は、シワに関しては化粧品の効能として「乾燥による小ジワを目立たなくする」が認められたのみです(「化粧品機能評価ガイドライン」に基づく試験などをおこない、その効果が実証できた場合にのみ)。
その他の手段としては、メーキャップ効果によって隠したり見えにくくしたりといったことは表現できても、加齢などによって刻まれる深いシワに対して、化粧品でケアをするというのはとても難しいものでした。
しかし、ついに2017年「ジワを改善する」という効能・効果を有する商品が、医薬部外品として初めて承認されました。
「え、じゃあ今までの化粧品はシワに効果なかったの?」
「シワに効いたコスメ、あったけど??」
こう思われる方もいらっしゃると思います。
世の中にはたくさんの「リンクルケアコスメ」がありますが、上述のとおり「シワ改善効果」を謳うことは認められていなかったのです。
「認められていない=全く効果がない」ではないところが、化粧品の難しいところでしょうか。
今回の件は、厚生労働省が「シワ改善効果」を持つ化粧品を、初めて承認したということです。
今後、メーカーは厚生労働省へ市販後調査として副作用情報などの安全性について報告義務があるので、その後の動向も気になるところですが、「シワ改善」は「美白」などと並んで多くの女性から注目を集めるアイテムとなりそうですね!
薬用化粧品といわれると、通常の化粧品より効果が高いと思われがちですが、違いは『訴求する内容に対して厚生労働省が定めた有効成分が一定量含まれ、有効性を持たせた化粧品であるか否か』で、化粧品の品質や使い心地を保証しているわけではありません。
『薬用化粧品かどうか』が化粧品を選ぶ一番の基準となるか、というと少し違うのではないでしょうか。
「アルコール・パラベン・ケミカルフリーだから」
「無香料だから」
「オーガニック・天然成分だから」
薬用以外にも、化粧品選びにはいろいろなキーワードが出てきて、悩んでしまいますよね。
(実は、オーガニックに関しては今年新しくガイドラインが制定されましたので、近いうちにご説明したいと思います)
セールス用の言葉に踊らされるのではなく、自分の肌と相談して、いちばん合ったものやいちばん好きなものを使い続けることが、キレイへの近道といえるのかもしれません。
[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]