
足の付け根が痛い。外反母趾の原因と予防について整形外科院長前田先生にお伺いしました
たくさん歩いた後や立ち仕事が続いた後に、足の親指の付け根の痛みに悩まされたことはありませんか?
「久しぶりに歩いたから」「疲れたし仕方ない」などと見過ごしがちですが、その痛み、外反母趾かもしれません。
今回は、まえだ整形外科リウマチクリニック院長の前田俊恒先生にお話を伺いました。

あなたのその悩み、外反母趾かも?
「歩くたびに親指の付け根がズキッと痛む」
「ヒールを履かないのに足が変形してきた気がする」
そんな悩みを抱えている女性は少なくありません。
その代表的な原因のひとつが『外反母趾』です。
外反母趾とは、足の親指(母趾)が小指側に曲がり、付け根の関節が突出して炎症や痛みを起こす状態。
中年以降の女性に多く見られますが、近年は男性や若年層にも増えています。
単なる足の変形と思われがちですが、放置すると痛みや歩行障害につながり、日常生活の質を大きく低下させることがあります。
どうして外反母趾になるのか?
ハイヒールが原因と思われがちですが、実際はそれだけではありません。
足のアーチを支える筋力の低下や、もともとの骨格の形、靴の形状、体重のかけ方など、複数の要因が関係しています。
また関節リウマチや痛風などの疾患でも外反母趾になるリスクが高いといわれています。
特に女性は靭帯が柔らかく、遺伝的に扁平足傾向の方も多いため、ヒールを履かなくても発症することがあります。
足の形や関節の柔らかさ、家族歴などが関与するため、日常生活の靴選びだけでは説明できない背景があります。
「ヒールを履かないのに外反母趾?」
と驚かれる方は多いですが、実は足の構造そのものが影響しているケースが少なくありません。
特に家族に外反母趾の方がいる場合は、遺伝的要素が関係していることもあります。
早めに足の形や歩き方を確認し、無理のない靴を選ぶことが大切です。
残念ながら、外反母趾になりやすい方もいます。
遺伝的素因(家族歴)、扁平足、関節の柔らかさ、性別(女性に多い)、関節リウマチや痛風などの疾病、などが関係しています。
受診と治療の目安
外反母趾は進行性の疾患です。
初期のうちは「少し出っ張ってきたかな」という程度でも、放置すると親指が重なり合うほどに変形し、足の裏にタコ(魚の目)ができたり、靴が履けないほどの痛みになることもあります。
「歩くたびに痛む」「親指が重なってきた」などの症状があれば、整形外科での受診がおすすめです。
治療には保存療法(靴の工夫、足底板、足の筋トレ、リハビリ)から手術療法まで幅広い選択肢があります。

写真1)外反母趾:足の親指が示指(人差し指)に乗り上げている

写真2)装具使用後:親指が強制され、足指の間に隙間ができている
『手術しないと治らない』と思われがちですが、初期の段階であれば保存療法で痛みを和らげたり、進行を抑えることが可能です。
痛みが続いたり、歩行に支障が出てきたら、早めに整形外科を受診してください。
サポーターやテーピングの効果
市販の外反母趾サポーターは、痛みの軽減や足の指の位置を補助する点で一時的な効果はあります。
ただし、変形そのものを根本的に治すものではありません。
また、使い方を誤ると、逆に血流やバランスを崩すこともあるため、正しい使い方と限界を知ることが大切です。
自宅でできるセルフケアと生活習慣
毎日できる予防法としては、「タオルギャザー運動」がおすすめです。
床に置いたタオルを足の指でたぐり寄せるだけで、足底の筋肉が鍛えられ、アーチの維持に役立ちます。
足の筋力で足ゆびを開く体操、ゴムひもを使った体操(ホーマン体操)なども有効です。
また、裸足で過ごす時間を増やす、柔らかすぎない靴を選ぶ、就寝前に足のストレッチを行うなど、小さな積み重ねが大切です。
外反母趾は、靴や歩き方など日常生活の積み重ねで進行することが多い疾患。
そのため、足の筋肉を保つこと、無理のない姿勢で歩くこと、そして『気になった時点で相談する』ことが健康な足を守る第一歩となります。
【まとめ】
外反母趾は「よくある足の悩み」と片づけられがちですが、早期に気づき、正しい靴選びや運動を取り入れれば、進行を防ぐことができます。
痛みが続く、変形が進んでいると感じたときは、早めに専門医に相談を。
自分の足を知り、向き合うことが『快適に歩ける未来』につながります。
執筆者

前田俊恒(まえだ としひさ)先生
医師・医学博士(整形外科医)
日本整形外科学会 整形外科専門医・日本リウマチ学会 リウマチ専門医・日本リハビリテーション医学会 リハビリテーション科専門医
神戸大学医学部卒業。神戸大学病院(整形外科)入局後、神戸大学大学院医学研究科(整形外科学)修了。
米国スタンフォード大学医学部免疫リウマチ科に客員講師として留学、帰国後は神戸大学医学部附属病院整形外科助教を経て、まえだ整形外科リウマチクリニックの院長に就任。
患者さんの健康を守り、より動ける体を取り戻し、毎日健やかに過ごせるようサポートしていく。
まえだ整形外科リウマチクリニック
https://maedaseikei.jp/



