
冬バテって誰でもなるの?対策とセルフケアについてメンタルクリニック院長松澤先生にお伺いしました
「夏バテ」はよく知ってるけど、「冬バテ」もあるの?!
その原因や対策、どうすればいい??
今回は「冬バテ」について、神谷町カリスメンタルクリニック院長の松澤美愛先生にお話を伺いました。

そもそも「冬バテ」って何?なぜ起こるの?
「冬バテ」という言葉、皆さまは聞いたことがありますか?
「夏バテ」「秋バテ」に続き、最近は「冬バテ」という言葉をよく聞くようになりました。
「冬バテ」とはどのような状態のことを言うのでしょうか。
ご存じの方が多い「夏バテ」は暑さによる体力消耗や脱水などが原因とされ、主に身体症状を中心として不調が表れるものとされます。
「秋バテ」は夏から秋への季節の変わり目、寒暖差などを主な原因とし、身体症状に加えてメンタル不安定も表れるものとされます。
そして、「冬バテ」とは寒さや日照時間の減少が原因で自律神経に乱れが起きることが主な原因であり、冬になると起こる漠然とした心身の不調のことを言いますが、特に心の不調を中心として不調が表れるものとされます。
正式な病名ではないものの、季節性の自律神経機能の低下として説明が出来る病態です。
夏、秋、冬、と一年を通して頑張ってきた心身が疲れをため込んでしまった場合に、どうにか無事にこの冬を乗り切れるようにと心身の機能を出来るだけ減らし、使用するエネルギー量を減らすように調整した結果ともいえるでしょう。
「冬バテ」はどうして起きるの?
「冬バテ」の主な症状は、不眠(眠れない、睡眠の質の低下、眠りすぎてしまう)、倦怠感(全身のだるさ)、冷え(手足、腹部)、頭痛や肩こり、気分の落ち込み、無力感、食欲低下・過食などが挙げられます。
「冬バテ」がなぜ起きるのかというと、冬になると日照時間が減少するためです。
日照時間が減ることで幸せホルモンともいわれる「セロトニン」の分泌が減少することが最大の原因とされます。
セロトニンはその別名の通り、気持ちを明るく前向きにし、集中力を増すなど、精神面に好影響を与えるホルモンです。
また食欲のコントロールや、睡眠を促すホルモンである「メラトニン」の分泌にも関わっています。
そのため、セロトニンの減少は気分の落ち込みや疲労感、意欲低下などうつ症状を出やすくさせる他、食欲低下や過食など食行動への影響を与え、体内時計のリズムが乱れることによる眠気やめまい、頭痛、ふらつきなど、さまざまな不調を起こします。
「冬バテ」にならないためにできることとは?
「冬バテ」を防ぐ日常生活の過ごし方としては、まず、規則正しい生活を心がけましょう。
就寝・起床時間を一定とすることは自律神経へかかる負荷を軽減し、余計なストレスを感じにくくなります。
起床後は日光を浴びることでセロトニンの分泌を促し、体内時計を正しい形にセットすることができます。
また日光浴は皮膚でのビタミンD産生を促します。
ビタミンDは骨や歯を強くしたり、神経伝達や筋肉の働きを正常にサポートする作用があり、日照時間が減少する冬場は特に積極的に日光を浴びることでビタミンDが不足しないように意識する必要があります。
冬場は寒さ対策のためにどうしても多く着込みがちですが、着込むことでからだが締め付けられ、血流が滞る原因となります。
薄手のものを重ねて空気の層を作るような、締め付けの少ないゆったりとした服装や、外気温と室内温度の差を感じにくいようにこまめに脱ぎ着出来るような服装が望ましいでしょう。
また、特に首・手首・足首は冷やさないように温めましょう。
「冬バテ」を防ぐおすすめセルフケア
「冬バテ」を防ぐセルフケアについては特に以下の2点をお勧めします。
日常生活にストレッチや運動を取り入れること、一日の終わりに入浴をすることです。
ストレッチや運動
体を動かすことで、全身の血流を改善させましょう。
冷えは血管を収縮させ、血流が滞りやすくなります。
血液は全身の細胞に酸素や栄養を届けたり、老廃物を回収したりする役割を担っています。
そのため、血流が滞ると全身に酸素や栄養が充分に届かなくなったり、老廃物が回収されなくなり細胞の働きが鈍ってしまい、倦怠感や疲労感、頭痛、肩こりなど全身に現れるさまざまな不調の原因となります。
ストレッチや運動は行うこと自体にも抗うつ効果があり、気分を明るくしたりストレスを軽減する効果もありますので特にお勧めです。
一日の終わりの入浴
副交感神経を優位にしてリラックスしましょう。
入浴はストレッチや運動と同じく、血流改善や冷え対策、疲労回復にも効果がありますが、何よりもぬるめのお湯にゆっくりと浸かることで副交感神経が優位となりリラックス効果が期待できます。
私たちは日常生活においてはやらなければならないことが多く、常に何かに追われ、多くのストレスを感じており、交感神経が優位に働いています。
一日の終わりに交感神経から副交感神経に切り替えることで自律神経の乱れを整えていくことができます。
ゆるめのお湯にゆっくりと浸かることがポイント!
熱めのお湯ではからだが驚いてしまい交感神経が優位となりリラックスできません。
就寝前に入浴することは良い睡眠に繋がる効果も期待出来ます。
食事からも「冬バテ」予防を
「冬バテ」を防ぐために積極的に摂った方が良い栄養素はたんぱく質、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンDです。
冬場はエネルギー消費が増加し、栄養不足になりやすい時期です。
たんぱく質を積極的に摂ることで、免疫力を維持し筋力を保ち、バテないからだを手にいれましょう。卵・魚・豆腐・肉を毎食取り入れて代謝をサポートしましょう。
ビタミンB群
ビタミンB群は食べ物からエネルギーを生成するために必要な栄養素で、不足すると疲れやすさやだるさなどの症状が現れます。
そのため元気でいるには欠かせない栄養素といえます。
ビタミンB1は豚肉や玄米、ビタミンB2はレバー、アーモンド、ビタミンB6はまぐろ、かつお、レバーに多く含まれます。
食事からの摂取が難しい方はビタミンB群が複数配合されたサプリメントなどもありますので症状に合わせて選んでみるのも良いでしょう。
ビタミンC
ビタミンCは白血球の機能をサポートし、感染症に対する抵抗力を高めるなど免疫力の向上が期待出来ます。
果物や野菜に多く含まれます。
ビタミンD
ビタミンDは先ほど説明したように日光を浴びることにより皮膚で生成されます。
しかし、日光を浴びる機会が少ない方や日焼け対策で日焼け止めを塗ってしまうと不足することがあります。
その場合には食事からの摂取で補給することができます。
魚、しいたけ、卵に多く含まれます。
たかが「冬バテ」と侮らないで・・・こんな時は受診を
対策やセルフケアなどに気を付けて日常生活を送っていても、症状が改善しない、長引いているような場合には早めに医療機関を受診することをお勧めします。
「冬バテ」の治療への線引きは個人差もあり判断に難しく、ご自身だけでの判断は困難と思われるためです。
専門家に状況を説明した上で客観的視点からアドバイスをもらうことが良いでしょう。
今回学んだように「冬バテ」は自律神経の乱れが主な原因とされ、全身の症状に加え、心の不調を中心に症状が出現しやすいとされることから、心療内科、精神科、メンタルヘルス科などを受診されることをお勧めします。
執筆者

松澤美愛先生
神谷町カリスメンタルクリニック院長
慶應義塾大学病院精神・神経科入局後、精神科専門病院、救急や総合病院でのリエゾン、国立病院、クリニック、企業など、幅広い臨床現場で経験を積む。
個人と社会の変化に応じた「こころのケア」を実践。
2024年東京都港区虎ノ門に「神谷町カリスメンタルクリニック」を開院。
Instagram(charismentalclinic)でも情報発信を行っている。
精神疾患を抱える方が『自分らしさ』を取り戻すきっかけとなるよう、患者一人ひとりの背景に寄り添った診療を心掛けている。
精神保健指定医/日本精神神経学会/日本ポジティブサイコロジー医学会
神谷町カリスメンタルクリニック
https://charis-mental.com/



