サーカディアンリズムとは

サーカディアンリズム」という言葉を聞いたことがありますか?
私たち地球上の生物は、地球の自転によってつくり出される昼と夜の光環境に適応するために、体内時計という仕組みをもっています。地球の自転は、24時間を1周期としているため、私たちの体内時計も約24時間を1サイクルとなるような仕組みになっています。
サーカディアンリズムとは、この体内時計の仕組みによって生み出される、およそ1日の行動や生理機能のリズムを総称する言葉です。

サーカディアンリズムが乱れるとどうなる!?

171005asa_01「サーカディアン」とは、ラテン語のサーカ(約)とディアン(1日)を合成した言葉です。地球上の植物や動物を含め、ほぼあらゆる生物がこのリズムを持っています。
私たちヒトでも、さまざまな行動や生理機能に、このサーカディアンリズムが見られますが、最もわかりやすい例が睡眠と覚醒です。
多くの人が、夜になったら眠り、朝になったら起きるという、生活を送っていると思います。この繰り返される睡眠と覚醒のリズムも、地球の自転による約24時間を1周期とする、サーカディアンリズムの1種です。

私たちヒトのサーカディアンリズムは、目の奥深く、脳の視床下部の上部にあたる視交叉上核(しこうさじょうかく)という部分でコントロールされています。視交叉上核は、規則正しい周期的なシグナルを体中の各組織に伝達しており、体内時計における主時計と呼ばれています。
しかし、近年では、これ以外にも末梢時計と呼ばれる体内時計が、体のあちこちの組織にあることがわかってきました。
末梢時計は、主時計である視交叉上核に依存したサーカディアンリズムを持っています。しかし、通常の生活とは異なる刺激(食事や運動など)が末梢時計に加わると、末梢時計は独自のリズムを刻み、視交叉上核のサーカディアンリズムとシンクロ(同調)できなくなります。体内で時計どうしがシンクロできないことを、専門用語で「内的脱同調」といいます。この内的脱同調の状態では、サーカディアンリズムが乱れており、体のさまざまな不調を引き起こします。海外旅行の時差症候群や、徹夜や夜勤時の不調がよい例です。

また、疫学研究では、サーカディアンリズムが乱れがちな交代制勤務労働者は、乳がんや前立腺がん、心疾患のリスクが高まることが報告されています(Stevens, 2005; Zhu, Zheng, Stevens, Zhang, & Boyle, 2006)。したがって、それぞれの体内時計をしっかりと調整し、それに合った生活を送っていくことが私たちの健康にとって重要です。

サーカディアンリズムを調整するために知っておきたいこと

171005asa_02体内時計の時間を合わせるために、私たちは何をすればよいのでしょうか。
視交叉上核における体内時計およびサーカディアンリズムは、同調因子(Zeitgeber)と呼ばれる要因によって調整されることが知られています。同調因子は、体内時計の時刻調節をする役割を担っており、私たちの体内時計の周期が約24時間になるように働きかけています。
その同調因子の中でも最も重要な役割を果たすのが光です。これは、体内時計が昼と夜の光環境に適応するための仕組みであることを考えると、容易に想像できるかと思います。
その他に、食事や運動といった要因も、同調因子であることが知られています。また、学校や会社といった社会的要因もそれにあたります。学生や会社員にとって、授業開始時刻や始業時刻が、朝起きる時刻を左右する重大な要因であることは、多くの人が実感できるのではないでしょうか。
したがって、生活の中でこれらの同調因子をうまく活用してあげれば、サーカディアンリズムの昼夜を実際の昼夜に合わせたり、昼と夜のメリハリをつけたりすることが可能です。

このようにサーカディアンリズムは、私たちの体の根底にある機能としてさまざまな行動や生理機能をコントロールしています。そのため、サーカディアンリズムの異常は、私たちの健康や生命力を脅かす重大な問題です。サーカディアンリズムを整えて、健康的な生活を送るためにも、適切なタイミングで光を浴び、食事を摂り、運動をすることが重要であることを知っておきましょう。

(長島 俊輔)

長島先生
長島 俊輔(ながしま しゅんすけ)京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻
看護科学コース 基礎看護学講座 生活環境看護学分野 博士後期課程
日本学術振興会 特別研究員
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻。生体リズムに関する研究をおこない、さまざまな大学や学会で講演や研究発表をおこなっている。

経歴

平成22年 京都大学 医学部 保健学科 卒業
平成22年 看護師免許、保健師免許 資格取得
平成22年 京都大学医学部附属病院 看護部 就職
平成25年 京都大学医学部附属病院 看護部 退職
平成25年 京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 修士課程 入学
平成25年 京都光華女子大学 健康科学部 看護学科 非常勤講師
平成27年 京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 修士課程 修了
平成27年 京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 博士課程 入学(現在に至る)
平成27年 日本学術振興会 特別研究員 採用(現在に至る)

受賞歴

平成22年度 京都大学総長賞 受賞
平成27年度 日本看護技術学会 第13回学術集会大会賞 受賞

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