もしかしてワキガ?どうすればいい?原因とケアについてクリニック院長の中澤先生に伺いました

自分のにおいが気になり、「もしかして、ワキガ?」と思っても、なかなか他人には確認しづらいものですよね。
知らぬ間に人に迷惑をかけているのでは・・・と悩んでしまう方もいるかもしれません。
今回は、ワキガについて、なかざわ腎泌尿器科クリニック院長の中澤佑介先生にお聞きしました。

はじめに

「自分ってワキガ(腋臭症)かも」と思っても、他人には聞きづらいもの。
この記事では、においの仕組みからセルフチェック、病院でできる治療、日常のケアまで、医学的根拠がある情報を中立的にまとめます。
結論から言うと、ワキガは体質によるにおいの強まりであり、うつる病気ではありません。
治療やセルフケアの選択肢は複数あり、目的(においを減らす/汗を減らす/根治に近づく)によって適した方法が異なります。

ワキガって何?においの正体

ワキのにおいの元は、汗。
私たちは、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類の汗腺を持ち、そこから発汗しています。
どちらの汗腺から分泌されても、汗そのものは無臭ですが、含まれる成分が異なっています。
アポクリン汗腺から分泌される無臭の前駆体が、腋窩の常在細菌(特にStaphylococcus hominisやCorynebacterium属)によって分解され、におい成分(3M3SHなどの硫黄含有アルコールや脂肪酸)に変わることで生じます。
最近の研究で、この分解に関わる細菌酵素(C‑Sリアーゼやジペプチダーゼなど)の実体も明らかになってきました。

ワキガになる人・ならない人の違い(遺伝と体質)

東アジアでは、ABCC11遺伝子の一塩基多型(rs17822931)と耳垢タイプ(乾性/湿性)、そして腋窩のにおいの強さが関連することが示されています。
日本形成外科学会のガイドラインでも、湿性耳垢(ねっとり型)の人に腋臭が多いことが記載されています。
ただし、遺伝子だけで全てが決まるわけではなく、汗の量・皮膚常在菌叢・ホルモン・生活習慣なども影響します。

自分で確かめるセルフチェック(におい+体質の両面から総合判断)

ポイント:家庭でのセルフチェックはあくまで『目安』です。
嗅覚順応(自分のにおいに慣れる現象)により、自己評価は過小/過大になり得るため、困りごとが続く場合は医療機関で客観評価を受けましょう。
においのセルフチェック(簡易法)
清潔なガーゼやティッシュを使い、次の手順で確認します。
1.入浴・洗浄後に乾いたワキを用意する(香料や制汗剤はオフ)。
2.清潔なガーゼ/ティッシュを片側の脇の下に約5分挟む。
3.取り出してにおいを確認する(可能なら家族など信頼できる第三者にも確認を依頼)。

便宜的なにおいレベル目安(臨床診断の代替ではありません)

レベル1:ガーゼからほぼ臭わない。
レベル2:わずかに臭う。
レベル3:鼻に近づけると臭う(軽度の可能性)。
レベル4:近づけなくても感じる(中等度の可能性)。
レベル5:手に持った距離でも明らかに臭う(重度の可能性)。
注意:この簡易スケールは標準化された医学的検査ではなく、個人差や環境(温度・運動・緊張)で変動します。
評価に迷う場合は医療機関での診察や、においの客観評価(必要に応じて)を検討してください。

体質の特徴によるチェック項目

次の項目に複数当てはまると、ワキガ体質の可能性が上がります(総合判断)。
・耳垢が湿っている・ねっとりしている:耳道にもアポクリン腺があり、湿性耳垢と腋臭は関連が報告されています。
・家族に同様の体質がいる:家族内集積が知られ、遺伝の関与が示唆されています(ABCC11多型など)。
具体的な確率は個人差が大きく、一律の%で断定はできません。
・脇毛が多い/濃い:毛は前駆体や細菌が付着しやすい足場となり、においが増幅しやすくなります。
・剃毛や脱毛で軽減することがあります。
・汗の分泌量が多い:基材が増えるため、細菌分解によるにおいが強まりやすい。
・衣類のワキ部分が黄ばみやすい:アポクリン汗由来成分(脂質・タンパク質など)や皮脂が衣類と反応し、黄ばみとして残ることがあります(個人差あり)。
・脇毛に白っぽい粉が付く:汗や皮脂、制汗剤成分が乾燥・結晶化して付着することがあります。
これらのセルフチェックで当てはまる項目が多い、あるいは日常生活に支障がある場合は、皮膚科(必要に応じて形成外科)で相談を。
自己臭恐怖(Olfactory Reference Syndrome)が疑われるほど不安が強いときは、心療内科などの専門的支援も有用です。

うつる? 年をとるとどうなる?

「ワキガがうつった」など、聞いたことがある方もいるかもしれませんが、うつりません。
細菌は誰の皮膚にもいますが、腋臭のなりやすさは体質と分泌物の性質が中心です。
においの強弱や種類がが年齢で変化することはあります。
思春期以降に強まり、年齢とともにアポクリンの活動やホルモンの変化で和らぐこともあります(個人差あり)。

日常でできるセルフケア

どのようなケアが有効か、その目的別に押さえましょう。
1) 汗を減らす(においの「材料」を減らす)
アルミニウム塩(塩化アルミニウムなど)の外用は、汗腺の出口に栓を作り発汗を抑えます。
原発性腋窩多汗症で推奨度B(まず行ってよい治療)とされます。
刺激性が出る場合があるため、夜間に塗布した後、朝洗い流す、低濃度からの開始など皮膚科医の指導が安心です。
2)細菌の増殖・分解を抑える
清潔と速乾:石けんでの洗浄、運動後のシャワー、汗を吸う衣類、衣類のこまめな洗濯。
毛の処理:腋毛はにおい前駆体と細菌が付着しやすい足場になるため、剃毛・脱毛で表面積を減らすとにおいが軽減しやすいと考えられます(機序的合理性とレビュー)。
抗菌成分入り製品の過度使用は避ける(皮膚刺激や耐性の懸念)。
3)マスキング・中和
香料で覆うだけでは根本対策にならないため、1)2)と併用が基本です。
4)食事の工夫(過度な制限は不要)
赤身肉の摂取は体臭を強める可能性が示されました(小規模研究)。
ニンニクは体臭を悪化させるイメージがありますが、摂取量によって好ましく感じられるとの結果もあり、影響は一概ではありません。
いずれも個人差が大きく、まずはバランスのよい食事・十分な水分を基本に。

医療機関でできる治療

目的と優先順位(傷跡を最小限に/効果を長持ち/コスト/ダウンタイム)で選びます。
下記は日本国内の制度・承認状況を基に記載しています。
A.外用療法・注射など(切らない)
塩化アルミニウム外用:上記の通り。
抗コリン外用薬(腋窩多汗症に保険適用の製剤が登場):汗を減らすことでにおいが二次的に軽減することがあります(適応は多汗症)。
ボツリヌス毒素:発汗を抑える目的で有効ですが、腋臭そのものへの効果は限定的という系統的レビューもあります(汗が減ることで軽快する例あり)。
B.デバイス治療(マイクロ波=ミラドライ®など)
マイクロ波で汗腺を熱変性させ、発汗の長期減少が報告されています。
においも改善する例はありますが、日本の薬事審査では「腋臭症に対する有効性の評価は困難」とされ、腋臭への効能は承認外です(多汗症としての承認)。保険適用外。
C.手術(根治に最も近いが、傷跡・ダウンタイムあり)
剪除(皮弁)法:皮膚を切開・反転し、アポクリン汗腺を直視下で除去。
再発が少なく、根治性が高い標準術式とされます。一方で瘢痕・色素沈着・皮下出血などの合併症があり、術後の固定期間が必要です。
保険適用:日本の診療報酬では「K008 腋臭症手術」として皮弁法 6,870点等が定められています(令和6年)。
保険の可否・自己負担額は重症度や施設で異なるため、受診先で確認してください。

治療方法のまとめ
・においの軽減が主目的 → まずは汗を減らす・細菌の働きを抑える(アルミニウム塩、生活ケア、必要に応じて保険適用の多汗症治療)。
・長期的な改善・再発の少なさを重視 → 剪除法を検討(傷・ダウンタイムとトレードオフ)。
・切らない方法を希望 → デバイス治療は発汗には有効。腋臭への効果は個人差が大きく、承認上は多汗症である点を理解して選択を。

よくある質問

Q1.スソワキガって? ワキガの人はなりやすい?
外陰部・乳輪・耳の後ろなどアポクリン汗腺が多い部位でも、前駆体の分解でにおいが生じます。
腋臭と併発することがあります(同じ機序)。
Q22.においは他人にうつる?
うつりません。細菌は誰の皮膚にもいますし、においの強さは分泌物の性質と体質が中心です。
Q3.年をとってから急に強くなることは?
思春期以降に強まり、加齢で和らぐ傾向もありますが、ストレス・体重変化・ホルモン・薬などで一時的に変動することがあります。⁶
Q4.サプリは効く?
腋臭そのものを一貫して改善する強固なエビデンスは乏しいのが現状です。
まずは医療として確立したアプローチ(上記)を優先し、サプリは補助的に考えましょう。
Q5.自分のにおいが気になり過ぎてつらい・・・
においの実態より不安や回避行動が中心になっている場合は「自己臭恐怖」の可能性があります。
認知行動療法(CBT)やSSRIが有効なことが報告されています。

受診の目安(チェックリスト)

においは自分では分かりにくく、「もしかして、自分がにおっているのでは」と思い悩む人も多いものです。
以下が当てはまるときは、悩むより受診をお勧めいたします。
・市販の対策や生活ケアを1〜2か月続けても不満
・においで仕事・学業・対人関係に支障
・皮膚のかぶれ・色素沈着が気になる
・治療法のメリット・デメリットを医師と相談したい

ひとりで悩まず、是非医師にご相談くださいね。

参考文献(主要)
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日本皮膚科学会『原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版』(塩化アルミニウム外用の推奨等).
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(系統的レビュー)Tolerability and efficacy of botulinum toxin injection in bromhidrosis: a systematic review and meta‑analysis. 2024.
PMDA(ミラドライ)審査資料:腋臭症への有効性評価は困難と判断(2018年 薬事承認文書).
診療報酬点数表 K008 腋臭症手術(令和6年):皮弁法 6,870点 ほか.
JPOC/しろぼんネット等の公開資料(令和6年改定).

執筆者

中澤佑介(なかざわ ゆうすけ)先生
金沢医科大学医学部医学科卒業。
「患者さんに近い立場で専門的医療を提供したい」という思いで2021年、なかざわ腎泌尿器科クリニックを開設。
2024年9月、JR金沢駅前に金沢駅前内科・糖尿病クリニック(https://kanazawa-naika.jp/)を開院。

なかざわ腎泌尿器科クリニック
https://www.nakazawa-cl.jp/

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