サーカディアンリズムと睡眠

私たちはなぜ眠るのだと思いますか?

私たち昼行性の動物は、太陽のリズム(地球の自転リズム)に合わせて、「朝になったら起きて活動し、夜になると休息を求める」という周期的な生活をしています。この朝起きて夜眠るというヒトの生活リズムが成り立つのは、ヒトに体内時計が備わっているからです。

朝起きても、目覚めが悪くて何だかあまり寝た気がしない。昼間、仕事をしても集中できずにぼーっとしてしまう。・・・そう感じている原因は、サーカディアンリズムの乱れが睡眠に影響しているかもしれません。

メラトニンの働きを知って、よりよい睡眠を!

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私たちヒトは、昼に活動して夜に眠る昼行性の動物です。

ヒトが眠るためのプロセスには、メラトニンという松果体(しょうかたい)ホルモンが関係しています。ヒトは脳内でこのメラトニンが分泌されることで、深部体温が低下していき、眠気を感じます。このメラトニンホルモンは、昼には全く分泌されず、夜になると分泌されるという、明確なサーカディアンリズムがあり、このメラトニンのサーカディアンリズムが、昼に活動して夜に寝るという、ヒトの睡眠覚醒リズムをつくり出しています。

したがって、メラトニン分泌のサーカディアンリズムを乱さないということが、私たちの睡眠にとって重要です。

しかし、このメラトニンホルモンは、夜に明るい光を浴びると分泌されなくなってしまいます(Lewy, Wehr, Goodwin, Newsome, & Markey, 1980)。そのため、夕方から夜中にかけて明るい電気がついているような場所で生活したり、パソコンやスマートフォンといった明るいディスプレイを長時間見続けてしまったりすると、メラトニンの分泌は少なくなってしまい、眠れなくなってしまいます。これがサーカディアンリズムの乱れによる睡眠障害の原因の1つです。

夜のメラトニンホルモンの分泌を増やすためには、主に2つの方法があります。

1つは、“夜に明るい光を浴びないこと”です。上にも書きましたが、メラトニン分泌は、明るい光を浴びるだけで減ってしまいます。特に白色光に多く含まれるブルーライトは、メラトニンの分泌を最も低下させてしまいます。

したがって、夜につけるライトには、なるべく黄色い光のものを選びましょう。また、光源が直接目に入らないように、間接照明を用いると効果的です。

もう1つの方法は“昼間に明るい光を浴びること”です。メラトニンは、昼間に明るい光を浴びることで、夜の分泌が増えることも明らかになっています(Hashimoto et al., 1997; Nagashima et al., 2017)。また、昼間に明るい光を浴びれば、夜に光を浴びてもメラトニン分泌が低下しにくくなることも報告されています(Kozaki, Kubokawa, Taketomi, & Hatae, 2015)。

したがって、昼間は積極的に外に出て太陽の光を浴びるということが睡眠にとって重要です。

これらの方法は、「昼は明るく、夜は暗くする」という、本来あるべき昼夜の環境に沿った生活をすることで、メラトニン分泌のサーカディアンリズムにおける昼夜のメリハリをつけています。

自律神経と睡眠の関係を知って、よりよい睡眠を!

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メラトニン以外に、自律神経のサーカディアンリズムも睡眠に関係しています。

私たちの体には、交感神経と副交感神経と呼ばれる2つの自律神経があります。交感神経は気持ちを興奮させて活発に、副交感神経は気持ちを落ち着けてリラックスさせる仕組みがあります。睡眠時はこの副交感神経が強く働けるように、自律神経の活動にもサーカディアンリズムがあります。

しかし、このサーカディアンリズムに逆らって夜に激しい運動などをすると、交感神経の活動が高まり、興奮状態のまま寝られないということが起こります。したがって、自律神経のリズムに合わせて、運動は昼間におこなう方が、睡眠に効果的です。

サーカディアンリズムとは」でも書きましたが、やはり、昼には明るい太陽の下で活発に活動し、夜には暗くして休息するという、ヒト本来の生活をおこなうことが、睡眠にとっても重要です。

また、規則正しいサーカディアンリズムは、規則正しい良質の睡眠を導きますが、規則正しい睡眠もまた、規則正しいサーカディアンリズムにとって重要です。週末のお休みだけは夜更かしして朝寝坊という方も多いですが、なるべくいつもと変わらない時刻に寝て起きましょう。
(長島 俊輔)

長島先生
長島 俊輔(ながしま しゅんすけ)京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻
看護科学コース 基礎看護学講座 生活環境看護学分野 博士後期課程
日本学術振興会 特別研究員
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻。生体リズムに関する研究をおこない、さまざまな大学や学会で講演や研究発表をおこなっている。

経歴

平成22年 京都大学 医学部 保健学科 卒業
平成22年 看護師免許、保健師免許 資格取得
平成22年 京都大学医学部附属病院 看護部 就職
平成25年 京都大学医学部附属病院 看護部 退職
平成25年 京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 修士課程 入学
平成25年 京都光華女子大学 健康科学部 看護学科 非常勤講師
平成27年 京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 修士課程 修了
平成27年 京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 博士課程 入学(現在に至る)
平成27年 日本学術振興会 特別研究員 採用(現在に至る)

受賞歴

平成22年度 京都大学総長賞 受賞
平成27年度 日本看護技術学会 第13回学術集会大会賞 受賞

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