食べ物でパックは安全?流行りに惑わされないで!食べ物を顔に塗ってはいけない理由

「家にある食材でできる、効果ばっちりパック」
「野菜や果物から簡単にコスメがつくれる」
と聞いて、どのようなイメージを持たれますか??
「食品だし、肌にやさしそう」
「コスパもよく肌にもいいなんて最高!」
と思ってしまった方、ちょっと待ってください。
食品を肌に塗ることは、実はかなりの危険が含まれているのです。
安易に試すと、一生後悔してしまうかも。
今回は、食品と化粧品についてお話ししたいと思います。

韓国経由で流行中! 女優もやっているとウワサの、きゅうりパックってどうなの??


巷で大人気の韓国コスメ。
最近では、コスメだけでなく、韓国美人の美肌習慣として注目され、美白や保湿効果があるとされる「オイ(韓国語できゅうりのこと)パック」ってご存知でしょうか。
韓国ドラマなどで見かける方法としては、
1)スライスしたきゅうりを顔にのせる
2)すりおろしたきゅうりを顔にのせ、シートマスクで覆う(ハチミツや小麦粉を混ぜて、粘度をあげるものもある)
などが見られます。
水分やビタミン、ミネラルが含まれているきゅうり。
ひんやりして、火照った肌にはとても心地良さそうに見えますよね。
他にもレモンやオレンジなど、柑橘類のスライスを顔にのせる方法や、果汁を使ったスキンケアなどもネット上には確認でき、インフルエンサーなどが勧めている場合もあります。
ですが。
食べ物を使ったパックには危険がたくさんあるのです!

美白どころかシミの原因に??

実はきゅうりや柑橘類に含まれるソラレンという物質には、光毒性(紫外線に照射されることで皮膚に起こる有害な作用)があります。
ソラレンは、尋常性白斑(何らかの原因により、メラニンがうまく生成されず、肌が白い斑状になってしまう)などの治療(PUVA療法:Psoralen(ソラレン)とUVA(紫外線A波)を併用した治療のこと)の際に、内服もしくは外用により使用されるほど強力な物質です。
美白ケアをしているつもりが、かえって紫外線ダメージを受けてしまう・・・なんてことになりかねません。
「じゃあ、きゅうりやレモンパックは夜にやればいいのでは?」
と思われるかもしれませんが、そうではありません。
続いて、食べ物を肌に塗ることの一番の危険性について、お話ししたいと思います。

アレルゲンが肌や粘膜から侵入・・・結果、食物アレルギーに?

 

小麦、卵、ナッツ類など、食物アレルギーのある方は、年々上昇しています。
食べたいものが食べられなかったり、食べると不調になったりして、心身共につらいですよね。

食物アレルギーは、主に食物に含まれるたんぱく質がアレルゲンとなって発症します。アレルゲンを食べたり飲んだりすることで起こるイメージがあると思いますが、実はアレルゲンが皮膚や粘膜に付着することでも食物アレルギーを起こすことが分かっています。

前述したきゅうりパックにより、韓国内できゅうり・メロン・スイカなどのウリ科の植物による食物アレルギーに至ったとの報告があります(出典:Journal of Environmental Dermatology and Cutaneous Allergology 2(4): 344-344, 2008.)。
実際に食べ物を塗布するのではなく、食物由来の成分でアレルギーに至った例も報告されています。

イギリスで1997~1998年にかけておこなわれた調査によると、ピーナッツオイル入りのスキンケア製品を使用している子どもは、そうでない子どもに比べて6.8倍もアレルギーの発症が増加したとのこと。
化粧品用に精製されたピーナッツオイルにも若干のたんぱく質が含まれており、このたんぱく質がピーナッツアレルギーの患者にアレルギー反応を起こすものだったとの確認もされています(出典:N Engl J Med. 2003 Mar 13;348(11):977-85.)。
皮膚に定期的にアレルゲンを塗布し続けることにより、アレルギーが発症しやすくなったと考えられます。

本来、食物由来の成分を化粧品の原料として使用する際は、化粧品グレードに精製され、アレルゲンとなりうるものは基本的には除去されています。
化粧品の原料は、日本化粧品工業連合会(粧工連)の策定した「化粧品安全性評価に関する指針(2015)」において定められた9つの必須項目によって、安全性が担保されています。

上記9項目をクリアした原料のみ、化粧品に配合が可能となります。
そのため、化粧品でアレルギーを起こすリスクに関しては、通常、そこまで心配する必要はありません(ただし、もともとアレルギーを発症している成分に関しては、その成分の入った商品は使わない方がよいでしょう)。
しかし、ごくまれに前述のピーナッツアレルギーや、日本国内で起こった石けんに含まれた小麦由来成分による小麦アレルギーの発症(全国で約2,000件にのぼる)などの例もあり、皮膚感作による食物アレルギー発症のリスクも、ゼロというわけではないのです。
アレルゲンを含有するものでスキンケアをおこなうと、アレルゲンが皮膚および眼や鼻の粘膜などに、少量付着します。
通常、皮膚にはバリア機能があり、分子量の大きいたんぱく質は侵入しにくいと考えられますが、肌があれているとき、炎症や傷があるときなどはバリア機能が低下し、健常なときより体内への侵入リスクが増してしまいます。
スキンケアはほぼ毎日おこなわれますよね。
1度のケアではごく少量しかアレルゲンが付着しなかったとしても、繰り返し使われることで体内に免疫反応を起こし、「異物」として体に記憶されてしまいます。

精製された化粧品グレードの原料を使っても多少のリスクがあるのに、食べ物そのものを肌に塗布する行為が、いかに危険かお分かりいただけますでしょうか。

また、皮膚・粘膜由来の食物アレルギーは、スキンケア関係だけでなく、寿司職人が約2年間毎日エビやアワビに触れることでアレルギーが発生した例も存在します(出典:J Environ Dermatol Cutan Allergol. 11(2) p. 158-164(2017))。
皮膚や粘膜からアレルゲンが侵入することは、想像よりもずっとリスクがあるといえるのです。
食べ物を使ったスキンケアをおこなわないことはもちろん、果汁や食べかすなどがついた指や口周りなどは、すぐ洗い流したりふき取ったりして、肌上に長く残さないことも大切です。

食品と化粧品では、求められる安全性は異なり、それぞれ安全性の基準も全く別のものとなります。
「食べるものから自分で作る化粧品=自然派、肌にやさしい」
というのは、実は危険な思い込み。
きゅうり・小麦粉・ハチミツ・柑橘類・植物由来のオイルなど、全ての食べ物は顔に塗るのがNGだと思っていてください!
ネットやTVでの流行やインフルエンサーの発言に惑わされるのではなく、正しい情報を得て、信頼できる製品を用い、安全なスキンケアをおこないましょう。

[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]

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