
不満を上手に伝えられていますか?伝え方を変えれば相手の反応が変わります。
長く一緒にいると、しあわせと一緒に相手に対する不満もたまりがち・・・。
険悪にならずに、夫やパートナーにあなたの不満を伝えること、できますか?
実は重要なテクニックがあるのです。
今回は、結婚相談所SMART BRIDALの代表で心理カウンセラーの吉野麻衣子さまに、お話を伺いました。
8つのテクニックのうち、今回は5~8の4つについてお伝えします。
テクニック5:感謝と承認の「貯金」をする ー関係性の銀行口座を豊かに
想像してみてください。普段まったく連絡してこない友人から、お金を貸してほしいという連絡ばかり来たらどう思いますか?
良い気はしませんよね。
夫婦関係も同じです。普段、感謝や承認の言葉がまったくないのに、不満を言う時だけ話しかけていては、どんなテクニックを使ってもうまくいきません。
大切なのは、日頃からの「関係性の土台作り」です。
【日常的に伝えたい言葉の例】
・「毎日お仕事お疲れ様。本当にありがとう」
・「子どもと遊んでくれて助かったよ。すごく楽しそうだったね」
・「そのネクタイ、すごく似合ってるね」
これは単なる精神論ではありません。
夫婦関係研究の第一人者であるワシントン大学のジョン・ゴットマン博士は、長期的な追跡調査の結果、幸せで安定した関係を続けるカップルは、ネガティブなやり取り1回に対して、ポジティブなやり取りが5回以上ある(通称:ゴットマン比率 5:1)ことを発見しました[3]。
日々の感謝や賞賛、笑顔といったポジティブなやり取りは、関係性の銀行口座への「貯金」のようなもの。
この貯金がたっぷりあれば、たまに不満という「引き出し」をしても、関係性はびくともしません。
テクニック6:解決策を「一緒に」考える ー「私たち」というチームになる
不満を伝えた後、「だから、こうして!」と解決策を一方的に押し付けるのはNGです。
それでは、夫は「結局、あなたの言う通りにしろってことか」と感じ、やらされ感が募ってしまいます。
不満を伝えたら、必ず「二人で解決策を考える」というステップに進みましょう。
【提案の仕方】
・「私は料理の後の片付けが一番大変だと感じているんだけど、どうしたら二人でうまく分担できると思う?」
・「休日の朝くらいゆっくり寝たい気持ち、すごくよく分かるよ。一方で私は、午前中のうちに買い物を済ませたいんだ。何か良い方法はないかな?」
「あなたはどう思う?」と意見を求めることで、夫も当事者として問題に向き合うようになります。
これは「あなた VS 私」という対立構造から、「私たち VS 問題」という共同作業のチームになるための、極めて重要なプロセスです。
心理学の「自己決定理論」でも、人は外部から強制されるよりも、自分で選択・決定した行動に対して、より高い責任感を持つとされています[4]。
「自分が決めたことだからやろう」というコミットメントが生まれるのです。
テクニック7:非言語コミュニケーションを意識する ー言葉よりも雄弁な「態度」
どんなに言葉を選んでも、腕を組み、険しい表情で、溜息交じりに話していては、相手には「怒り」や「拒絶」のメッセージしか伝わりません。
【気をつけたい非言語のポイント】
・表情:眉間にしわを寄せず、穏やかな表情を心がける。
・視線:相手の目を見て話す(睨みつけるのではなく、優しく)。
・声のトーン:低く、穏やかなトーンを保つ。
・姿勢:腕や足を組まず、相手に対して少し体を向ける。
言葉の内容と態度が一致して初めて、あなたの真意が相手に伝わります。
心理学者のアルバート・メラビアンの研究によれば、人がコミュニケーションで受け取る情報は、話の内容が7%、声のトーンが38%、表情や態度といった見た目が55%とも言われます[5]。
つまり、私たちは自分が思っている以上に、「何を言うか」よりも「どう言うか」で相手に影響を与えているのです。
テクニック8:「いつも」「絶対」の言葉を封印する ー極端な表現は「嘘」になる
「いつも忘れるよね!」「あなたは絶対にやってくれない!」こうした極端な言葉は、相手の反発を招くキラーフレーズです。
なぜなら、多くの場合、それは事実ではないからです。
「いつも」と言われても、夫からすれば「いや、この前はやったし・・・」という反論が必ず生まれます。
そうなると、話の本筋から逸れて「やった」「やってない」の水掛け論になってしまいます。
NG例:「あなたはいつも約束を守らない!」
OK例:「先週の金曜日の約束が守られなかったことが、私は悲しかったな。」
過去のすべての出来事を持ち出すのではなく、「今、ここ」で起きている具体的な事実に限定して話しましょう。
こうした極端な決めつけは、認知行動療法では「全か無か思考」と呼ばれる、物事の捉え方を歪める思考パターンの一つです[6]。
事実を誇張し、相手に不当なレッテルを貼ることは、建設的な対話を著しく妨げてしまいます。
まとめ:あなたが変われば、世界が変わる
いかがでしたでしょうか。
最後に、これまでのポイントをチェックリストにまとめました。
夫に不満を伝える前に、少しだけ心の中で確認してみてください。
・「私」を主語にしているか?
・話し合いに最適なタイミングか?
・感謝や肯定の言葉で挟んでいるか?
・具体的な行動レベルで伝えているか?
・日頃から感謝の「貯金」はできているか?
・「一緒に解決しよう」という姿勢か?
・穏やかな表情や声のトーンか?
・「いつも」「絶対」を封印できているか?
もちろん、最初からすべてを完璧にこなす必要はありません。
まずは「できそうなものを一つだけ試してみる」ことから始めてみてください。
例えば、今度の週末、「私メッセージ」だけを意識して話してみる。それだけでも、夫の反応がいつもと違うことに驚くはずです。
覚えておいてください。他人を変えることはできません。
でも、自分の行動は今すぐ変えることができます。そして、あなたの伝え方という「入力」が変われば、夫の反応という「出力」も、おのずと変わっていくのです。
不満は、二人の関係を壊す爆弾ではありません。
正しく扱えば、お互いの理解を深め、より強い絆を育むための起爆剤になります。
あなたの勇気ある一歩が、二人の未来をより輝かせることを、心から応援しています。
【引用文献】
[3]Gottman, J. M., & Silver, N. (2015). The Seven Principles for Making Marriage Work. Harmony Books.
[4]Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78.
[5]Mehrabian, A., & Ferris, S. R. (1967). Inference of attitudes from nonverbal communication in two channels. Journal of Consulting Psychology, 31(3), 248–252.
[6]Beck, A. T. (1979). Cognitive Therapy of Depression. Guilford Press.
執筆者
吉野麻衣子
株式会社SMART BRIDAL代表取締役社長/MBA婚活心理カウンセラー/モデル
「MBA(経営学)・心理学・AI・オンライン」を融合させ、科学的根拠に基づく戦略的婚活をサポート。
43歳で14歳年下の3高ハイスぺ男子と再婚し、経営者としての視点と心理学の知見を融合させた独自メソッドで、多くの方の幸せな結婚を実現。
ミセスコンテスト世界大会優勝者としてモデル活動も行いながら、全国の独身男女の人生設計をトータルサポート中。
SMART BRIDAL
https://smart-bridal.com/