
足の親指の付け根が痛い。ヒールばかり履くと外反母趾になりやすい?なか整形外科理事長樋口先生にお伺いしました
足の親指の付け根の痛み・・・いわゆる外反母趾に悩む成人女性はとても多いといわれています。
慢性的な痛みではなくても、ヒールを履いてたくさん歩いた後など、短期的な痛みを感じたことのある方は多いのでは?
今回は女性に多い外反母趾について、なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック院長の樋口直彦先生にお話を伺いました。

歩くたびに親指の付け根が痛む・・・そんな経験はありませんか?
外来には、「ヒールなんて履いていないのに痛い」「靴を脱いでも親指の付け根がジンジンする」と訴えて来られる方が少なくありません。
実は、外反母趾はハイヒールを履く人だけに起こるものではないのです。
外反母趾になる理由
私の日々の診療で感じるのは、足のアーチ(土踏まず)の崩れと足指の使い方がとても大きなポイントだということです。
土踏まずが崩れると、体重のかかり方が変わり、親指の付け根に負担が集中します。
その結果、親指が外側へ押し出されるような力が働き、外反母趾が進行していきます。
実際、外来では「ヒールを履かないのに、どうして私が?」と驚かれる方も多いです。
特に立ち仕事で長時間立ち続ける方や、運動不足で足の筋力が弱っている方に多く見られます。
もちろん、遺伝的に「なりやすい足の形」もあります。特に扁平足が強い方は外反母趾になりやすいので注意が必要です。
患者さんを診ていると、「お母さんも外反母趾だった」というケースは少なくありません。
扁平足と外反母趾の関係
扁平足では、土踏まずが下がり、足の内側に体重がかかりやすくなります。
さらに横アーチ(足の横方向のアーチ)が崩れるため、前足部が横に広がり、親指が外側へ押し出されやすくなるのです。これが外反母趾の進行を助長します。
また、偏平足のサインとなる胼胝(タコ)にも注意が必要です。
扁平足の方によく見られるのが、
・小指の付け根(第5中足骨頭付近)
・人差し指〜薬指の付け根(第2~4中足骨頭の下)
にできる硬い胼胝(タコ)です。
ある40代女性の患者さんも、「この場所に繰り返しタコができて痛い」と相談に来られました。
詳しく診ると扁平足が強く、外反母趾も少しずつ進んでいる状態でした。
「タコができる」というのは、足からの注意サイン。放置してしまうと、痛みや変形が進んでしまうことがあります。
靴と外反母趾の関係
「ハイヒールは良くない」というのはよく知られています。
実際、かかとが高い靴は足が前に滑り込み、親指の付け根(母趾球)に大きな負担をかけるため、外反母趾を進めるリスク要因です。
ただし、リスクはヒールだけではありません。
・パンプス(つま先が細く幅が狭い/足が前に滑って母趾球に負担)
・ミュールやクロックスタイプのサンダル(足を固定できず、歩くたびに前へ滑り込み母趾球に負担)
・ポインテッドトゥ(先の尖った靴)
・サイズの合っていない靴(大きすぎても小さすぎてもNG)
・幅の狭い革靴や硬いブーツ(足指が自由に動かせずアーチが崩れる)
「ヒールを履かないから安心」ではなく、日常で履いている靴の形やサイズ選びそのものがリスクになるのです。
受診の目安と治療法
「見た目だけだから」と我慢してしまう方も多いですが、
・痛みが長引く
・靴が合わなくなる
・変形が進んで歩きにくい
こうしたときは、早めに受診することをおすすめします。
治療の基本は保存療法です。
・足に合った靴を選ぶ
・インソールでアーチを支える
・リハビリで足の筋肉を鍛える
これらで痛みが軽くなる方はたくさんおられます。手術が必要になるのは、変形や痛みが強く、日常生活に支障が出る場合です。
サポーターや市販グッズについて
患者さんからよく聞かれるのが「市販のサポーターは効きますか?」という質問。
私の答えは、「痛みを和らげる補助にはなるけれど、変形そのものを治すことはできない」です。
誤解を与えないように、この点ははっきりお伝えするようにしています。
セルフケアでできること
外来でよく紹介しているのが、足指を動かす体操です。
・足指でグー・チョキ・パー
・タオルを足指でたぐり寄せる「タオルギャザー」
こうした簡単な運動でも、足の筋肉を鍛え、アーチを支える力につながります。
また、可能であれば裸足で過ごす時間を増やすのも効果的です。
最後に
外反母趾は「ヒールを履いたから」だけで起こるものではありません。
生活習慣や体質、特に扁平足の有無が大きく関わっています。
繰り返しできるタコや、足の形の変化に気づいたら、それは未来の足からのサインかもしれません。
「ちょっとおかしいな」と思ったときに早めにケアや受診をすれば、痛みや進行を防げるケースは多くあります。
足は毎日を支える大切な土台。
今日からできる小さな工夫で、未来の自分の足を守っていきましょう。
[執筆者]

樋口 直彦
医療法人藍整会なか整形外科 理事長
医療法人藍整会 なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック 院長
帝京大学医学部卒業、日本整形外科学会認定専門医
Vリーグ「サントリーサンバース」チームドクター
[プロフィール]
帝京大学医学部卒業後、いくつかの病院で勤務し、院長を経験後、2021年1月に医療法人藍整会 なか整形外科の理事長に就任。
バレーボールVリーグのサントリーサンバーズのチームドクターも務める。
骨折治療をはじめ関節外科、スポーツ整形外科を専門に治療。
Vリーグ サントリーサンバーズの選手の治療の経験を含めて、スポーツ整形外科医として、患者さんの個々のケース、タイミングを共に考え最善の治療を行なっている。
クリニック運営にICTを推進し、お待たせすることない診療が信条。
医療法人藍整会 なか整形外科
京都西院リハビリテーションクリニック
https://nakaseikei.com
京都北野本院
https://www.naka-seikei.com



