頭髪以外も白くなるって本当?白髪のケアについてLIKKAスキンクリニック林先生にお伺いしました。

ある程度の年齢を超えると、ヘア関連の悩みの上位にくる白髪。
どうして生えてきてしまうのか、どうやってケアすればいいのか?
今回は、LIKKAスキンクリニック院長の林瑠加先生にお話を伺いました。

みんなの悩み…白髪。何歳ぐらいから生えてくる?

加齢現象のひとつとわかっていても、いざ見つけると気になってしまう白髪。
生え際や分け目からぴょこんと飛び出す白髪に対し、染めるべきかどうか悩むこともよくあるかと思います。
白髪のでき方は人によってだいぶ違います。
若いうちから白髪が多い方、比較的歳を重ねても白髪が目立ちにくい方など、皆様の周りでも個人差が大きいことを良くご経験されているでしょう。
白髪の原因としては大きく分けて、加齢、遺伝、生活環境、頭皮環境、ストレスなどが挙げられます。
日本人では平均して35歳くらいから白髪が出現しやすいと言われていますが、上記のように個人差が大きいことから、白髪になりやすいかどうかはある程度遺伝的な要素が関わっているといえます。
当記事では皆様の白髪に対する身近な疑問に対し、専門的な観点からも含めご説明したいと思います。

そもそもどうして白髪になるの?

我々の髪の毛は一定の周期で新しい髪に生え変わります。
この新たな髪を生み出すために働いているのが、毛乳頭や毛母細胞と呼ばれる部分です。
髪の毛が黒い色をしているのは、黒い色素であるメラニンを作っている細胞(メラノサイト)が、毛を成長させる細胞である毛母細胞にメラニン色素を供給しているためです。
またメラノサイトでメラニン色素を作るためには、メラニンの原料である「チロシン」というアミノ酸や、チロシンをメラニンに合成する際の「チロシナーゼ」という酵素が必要です。
メラノサイトの活性は加齢とともに働きが悪くなり、チロシナーゼも加齢に伴い減少していきます。結果、メラニン色素がうまく送られずに白い毛が生まれてしまうと考えられています。
これら細胞の働きは、睡眠不足、栄養不足、ストレスなどにより影響を受け、そのため白髪ができる原因は、さまざまな要因が絡み合っているといえます。

頭髪以外も白くなる?

メラノサイトの働きが悪くなることが白髪の原因の一つであり、体の他の部分の毛においても同様の機序が起きていますので、頭皮以外でも白くなることがあります。
白くなる部分で良く知られているのは、ヒゲ、もみあげ、鼻毛などです。
鼻毛はもともとメラニン色素が少ないといわれており、その分白髪になるのも早いといえます。
もみあげなどの顔周りの白髪については、ストレス、血行不良、紫外線、ヘアスタイリング剤の影響などが関与していると考えられています。
よく、分け目の部分に白髪ができやすいことを実感されると思いますが、常に同じ部位に分け目を作っていると、その部分が特に紫外線やスタイリング剤の影響を受けやすくなりますので、白髪になりやすいかもしれません。

白髪を黒く戻すことはできる?

メラノサイトが活動を停止している場合や、チロシンの不足が原因の場合は、白髪が黒髪に戻る可能性がありますが、メラノサイト自体が消失してしまうと不可逆的となります。
メラノサイトは加齢とともに活性が低下し数も少なくなるため、メラノサイトの働きが完全になくなってしまう前にケアをしてあげることが大切です。
メラノサイトが本来の働きを取り戻すためには、適度な運動や十分な睡眠、必要な栄養素の摂取、ならびにストレスを溜めないことが大切となってきます。
メラノサイトの活性を上げる栄養素としては、チロシンのほかに、ヨード(昆布、わかめ、ひじきなどの海藻類)、亜鉛(肉、魚、卵、ナッツなど)、銅(魚介類、ナッツ、豆類など)ビタミン類などが挙げられます。

個人差があるのはどうして?

様々な生活スタイルの違いや、紫外線への暴露の度合いの違いによって、白髪の発生に関しては個人差が大きく出てきます。
特に10代から20代で見られる「若白髪」では、遺伝的な要素が大きいといえます。
白髪と遺伝のはっきりとした因果関係はまだ解明されていませんが、2016年にイギリスの研究チームが「IRF4」という体内のメラニン調整に関わる遺伝子を発見し、この遺伝子が白髪の原因になっている可能性について指摘しました。
白髪の予防のために必要な、規則正しい生活、十分な睡眠、適度な運動、必要な栄養分の摂取、ストレスを溜めない生活、などは、いずれも健康的な髪を維持するために必要な要素です。
これらは抜け毛の原因にもなってきますので、是非少しずつ改善を心がけていきましょう。

頭皮の環境も白髪に影響するって本当?

白髪の原因のうち、加齢、遺伝、生活環境、ストレス以外にも、「頭皮環境」の影響も報告されています。
頭皮の血流が悪くなると白髪が生えやすくなる、ということは分かっており、頭皮マッサージや生活習慣の見直しにより、改善を得ることが可能です。
ストレスによって自律神経が乱れ交感神経優位になると、血管が収縮し頭皮の血行不良を引き起こしますが、他にも喫煙による血管収縮、不規則な生活習慣や睡眠不足、加齢によっても血行不良が起こりえます。
頭皮環境を改善させるには、前述の頭皮マッサージ、適切な洗髪方法、適度な皮脂の状態を保つなどの手段が有効で、それには適切なインナーケアも大切です。
また白髪や薄毛に対して、アミノ酸、ペプチド、ヒアルロン酸などの毛髪の成長に必要な有効成分が入った製剤を直接注入し、ケアしていく方法もあります。
興味のある方は、ヘアケアを行っているクリニックなどで相談してみてください。

気になる・・・抜いてもいい?抜いたら増えるって本当?

白髪を見つけても抜かないことをお勧めします。
白髪のみならず、まだ自然に抜けるの状態ではない成長期の毛を抜くと、毛根が傷つき、毛根の変形・萎縮を来たす可能性があります。
白髪が生じる原因は、毛根うちの毛球内に存在するメラノサイトの活性低下であるため、抜いたとしても結局再び白髪が生えてきますし、毛根の変形によってクセのついた毛が生えてきてしまうこともあります。
成長期の毛を無理に抜くことで、ヘアサイクルの乱れを生じやすく、結果的に抜け毛の原因になることもあります。
白髪を抜くと増えるという話には根拠はありませんが、白髪を抜いても減りませんし、クセのついた白髪がまた生えてくることで、直毛の状態よりも目立って見える可能性はあります。

染める以外のケア方法ある?

白髪をケアしようとすると、ヘアカラー(白髪染め)を使われる方が多いと思います。
白髪染めはメラニン色素のない毛を染めるために、一般的なカラー剤と比べて染毛力が高くつくられています。
また髪の毛の根元からしっかり染めていくために、頭皮へのダメージが大きいといわれております。
頭皮へのダメージを少なくケアできる方法としては、白髪用シャンプーやトリートメントがあります。
白髪染めに比べ染まり具合が穏やかな染料が含まれており、1回で効果を感じるのは難しいですが、数回繰り返すことにより徐々に色素をのせていくことが可能です。
また一時的なものにはなりますが、ヘアマスカラ、ヘアスプレー、ヘアコンシーラーなども上手く使っていくと良いでしょう。
髪や頭皮にダメージを与えない点もメリットですが、お洋服などに着色する点には気を付けて使用して頂ければと思います。

白髪に良い食べ物ってある?

メラニン色素の原料であるチロシンをしっかりと摂ることと、メラノサイト活性を上げていくことが大切となります。
そのため、これらに必要な栄養素を含む食べ物を積極的に摂取することをお勧めします。
チロシンはアミノ酸なので、分解されアミノ酸となるタンパク質が必要で、肉(鶏肉、豚肉)や魚、大豆が代表です。
他にはヨード、亜鉛、カルシウム、銅、ビタミン類が挙げられます。
チロシン:鶏肉、豚肉、大豆、豆腐、バナナ、アボカド、チーズ
ヨード:わかめ、昆布、ひじき、めかぶ、もずく
亜鉛:肉(レバー、赤身肉)、魚介類、卵、ナッツ、大豆、乳製品
カルシウム:乳製品、魚介類、海藻類
銅:魚介類、ナッツ、豆類、ココア
ビタミン類:緑黄色野菜、果物、肉、魚、穀類、豆類

白髪になる原因はさまざま。
ご自身の髪の健康に、是非一度目を向けてみてください。

[執筆者]

林瑠加先生

慶應義塾大学形成外科学教室に約10年間在籍し、一般形成外科、小児、再建分野を幅広く担当。
慶應義塾大学大学院医学研究科では毛髪再生の研究に取り組み、医学博士を取得。
2015年からは4年半、カンボジアに居住し現地での臨床にも従事した。
帰国後は形成外科に加え皮膚科、美容皮膚科の経験を積み、2024年11月に品川区西五反田に「LIKKAスキンクリニック」を開業。
患者様の身近なお悩みに対応すべく、保険・自由診療双方からのアプローチで診療を行っている。
形成外科専門医、抗加齢医学会専門医、臨床毛髪学会評議員。

LIKKAスキンクリニック
https://likka-sc.com/

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