
早期発見で健康維持!年代別の対策についてクリニック院長の安江先生に伺いました
消化器疾患にはさまざまな種類があり、その発症リスクは年齢とともに変化します。
特に大腸がんや胃がんは、日本人に多いがんとして知られており、年代ごとに適切な検診や予防策を講じることが重要です。
年代別に注意すべき主な消化器疾患と、予防・早期発見のポイントとは?
天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック院長の安江千尋先生による解説です。
消化器疾患と年齢の関係
消化器疾患は、生活習慣や感染症、遺伝的要因、加齢などが複雑に関与して発症します。
若年層では機能性疾患や炎症性疾患が多く、中高年になるにつれて腫瘍性疾患(がん)のリスクが高まる傾向があります。
そのため、年齢に応じた検診や生活習慣の見直しが健康維持の鍵となります。
20~30代:機能性疾患と炎症性腸疾患に注意
■主な疾患
・機能性ディスペプシア(FD)
・過敏性腸症候群(IBS)
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
・若年発症大腸がん(頻度は低いが近年増加傾向)
・感染性胃腸炎
■特徴
この年代では、ストレスや生活習慣の影響による機能性疾患が多くみられます。
また、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患は若年で発症することが多く、長期的な管理が必要です。
近年では、若年性大腸がんの増加も報告されており、血便や便通異常が続く場合には年齢にかかわらず精査が重要です。特に、家族歴や遺伝性腫瘍(リンチ症候群など)がある場合は注意が必要です。
■受診の目安
・血便や黒色便
・原因不明の腹痛や下痢
・体重減少
・貧血
■予防・対策
・規則正しい生活習慣
・バランスの取れた食事
・ストレス管理
・症状があれば早期受診
40代:がんのリスクが徐々に上昇
■主な疾患
・大腸ポリープ
・大腸がん
・胃がん
・脂肪肝(MASLD:Metabolic dysfunction–associated steatotic liver disease、旧称NAFLD)
・逆流性食道炎
■特徴
40代になると、消化器がんのリスクが徐々に高まります。
特に大腸がんはポリープから発生することが多く、早期発見・切除により予防が可能ながんです。
また、ピロリ菌感染は胃がんの最大の危険因子であり、感染の有無を確認し、必要に応じて除菌治療を行うことが重要です。
■推奨される検診
・便潜血検査(年1回)
・大腸カメラ(リスクに応じて)
・胃カメラ(ピロリ菌感染者や症状のある方)
■生活習慣との関連
・高脂肪食
・加工肉(ベーコンやハムなど)の過剰摂取
・運動不足
・喫煙・過度の飲酒
・肥満
これらは大腸がんやMASLDのリスクを高めるため、生活習慣の改善が重要です。
50~60代:消化器がんの好発年齢
■主な疾患
・大腸がん
・胃がん
・食道がん
・膵がん
・胆石症・胆のう疾患
■特徴
この年代は、消化器がんの発症率が大きく上昇する時期です。
特に大腸がんと胃がんは、日本人において罹患率・死亡率ともに高く、定期的な検診が不可欠です。
国立がん研究センターのがん統計(2023年、2024年)によると、胃がんは男性で罹患率第4位・死亡率第3位、女性で罹患率第5位・死亡率第5位です。
また、大腸がんは男性で罹患率第2位・死亡率第2位、女性で罹患率第2位・死亡率第1位と報告されています。
膵がんは早期発見が難しいがんですが、家族歴や遺伝性膵がん症候群、新規発症の糖尿病などがリスク因子となります。
ただし、一般集団に対する定期的なスクリーニング検査は現時点では推奨されていません。
■重要な検診
・大腸カメラ
・胃カメラ
・腹部超音波検査
・必要に応じた腫瘍マーカー(ただし、スクリーニング目的としては一般的に推奨されず、補助的な検査として位置づけられます。)
■注意すべき症状
・便通異常
・血便、黒色便
・食欲不振
・体重減少
・嚥下困難
・黄疸
これらの症状がある場合には、速やかな医療機関の受診が必要です。
70代以上:複合的な疾患と合併症に注意
■主な疾患
・大腸がん・胃がん・膵がん・胆管がん
・憩室出血
・虚血性腸炎
・胆石症
・便秘症
・嚥下障害
■特徴
高齢になると、複数の疾患を併存することが多くなります。
また、症状が典型的でない場合もあり、早期発見が難しいことがあります。
検査や治療の選択においては、年齢だけでなく、全身状態や余命、患者本人の希望を考慮した個別化医療が重要です。
■重要な検査
・大腸カメラ:全身状態や既往歴・症状を考慮して適応を判断
・胃カメラ:貧血や食欲不振などの症状がある場合に有用
・腹部超音波検査:肝胆膵疾患や胆石の評価に有効
・血液検査:貧血、栄養状態、肝機能の評価
・便潜血検査:一般的な大腸癌健診として年齢関係なく有効
・腹部CT検査:悪性腫瘍や虚血性腸炎などの評価に有用
■検査・治療のポイント
・全身状態を考慮した検査選択
・症状が非典型的:痛みや発熱が軽度で、診断が遅れることがあります。
・鎮静剤使用時の安全性への配慮
・ポリファーマシーへの注意:多剤併用により、便秘や下痢、消化管出血などの副作用が起こりやすくなります。
・QOLを重視した医療:検査や治療は、全身状態(フレイル)、余命、患者本人の希望を考慮して決定する必要があります。
年代別まとめ
■20~30代
主な疾患:IBS、FD、炎症性腸疾患
推奨される検査:症状・家族歴に応じて内視鏡
■40代
主な疾患:大腸ポリープ、MASLD
推奨される検査:便潜血、胃カメラ、腹部超音波
■50~60代
主な疾患:大腸がん、胃がん、膵がん、胆石
推奨される検査:大腸・胃カメラ、腹部超音波
■70代以上
主な疾患:がん、憩室出血、虚血性腸炎
推奨される検査:個別化された検査

消化器がんを予防するための生活習慣
■食生活
・食物繊維を多く摂取
・赤身肉・加工肉の過剰摂取を控える
・塩分を控える
・野菜や果物を積極的に摂取
■生活習慣
・禁煙
・節度ある飲酒
・適度な運動
・適正体重の維持
■感染対策
・ピロリ菌の検査と除菌
・B型・C型肝炎ウイルスの検査
消化器専門医からのメッセージ
消化器疾患は、早期に発見し適切に対応することで、治療成績や生活の質を大きく向上させることができます。
特に大腸がんや胃がんは、定期的な検診によって予防や早期治療が可能です。
「まだ若いから大丈夫」と考えず、年齢やリスクに応じた検査を受けることが重要です。
まとめ
・消化器疾患のリスクは年齢とともに変化する。
・20~30代では機能性疾患や炎症性腸疾患に注意。
・40代以降は大腸がんや胃がんのリスクが上昇
・50~60代は定期的な内視鏡検査が特に重要
・生活習慣の改善と適切な検診が予防につながる
ポイント
・年代に応じた検診を受けることが重要
・血便や体重減少などの症状は早期受診のサイン
・ピロリ菌除菌は胃がん予防に有効
・生活習慣の改善が消化器がんのリスクを低減
[執筆者]

安江千尋(やすえちひろ)先生
天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック院長
2009年、防衛医科大学校卒業。初期臨床研修後、同大学病院にて消化器内科の研鑽を積む。その後、自衛隊横須賀病院、自衛隊舞鶴病院などで内科診療に従事し、消化器疾患の診療経験を重ねる。
2017年よりがん研有明病院下部消化管内科に勤務し、2020年には副医長に就任。
早期胃がん・大腸がんに対する内視鏡診断・治療において豊富な経験を有する。
2024年12月、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニックを開院し、院長として地域医療に貢献している。
資格・所属学会
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器病学会 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック
https://www.tennoji-naishikyo.com/



