
【ピンクリボン月間】40歳からの乳がん検診と今日から始めるブレスト・アウェアネス
10月のピンクリボン月間を迎えるにあたり、「乳がん検診はいつから受けるべき?」「普段からできるチェック方法は?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
林外科・内科クリニック理事長の林裕章先生は、毎日がんを心配するのではなく、自分の乳房の普段の状態を知る生活習慣「ブレスト・アウェアネス」と、対象年齢(40歳以上)での適切な検診、受診の大切さを勧めています。
本記事では、乳がん検診の推奨年齢の理由や、従来のセルフチェックとの違い、ブレスト・アウェアネスの具体的な取り入れ方について分かりやすく解説します。
この記事のポイント
・乳がん検診は40歳から:日本人女性の罹患ピーク(45~49歳、60~64歳)の手前から、2年に1回マンモグラフィ検診を受けることが勧められている
・ブレスト・アウェアネスの重視:決まった手順の「自己触診」よりも、日頃から「いつもの自分の乳房の状態」を知り変化に気づく習慣が重要
・要精密検査の受け止め方:要精密検査=がん確定ではなく、実際にがんが見つかるのは約18人に1人。自己判断せず必ず精密検査を受ける

なぜ乳がん検診は「40歳から」推奨されるのか?
日本では、自覚症状のない40歳以上の女性に、2年に1回のマンモグラフィによる乳がん検診が推奨されています。
目的は、症状のない段階で乳がんを見つけ、乳がんで亡くなる方を減らすことです。
日本人女性の罹患ピークと検診開始年齢の理由
なぜ40歳という線引きがされているのか、それには理由があります。
日本人女性が乳がんになりやすい年齢は45~49歳と60~64歳の二つの山に分かれており、その手前から検診を始める設計になっています。
39歳以下では、検診によって乳がんで亡くなる方が減るという根拠がまだ得られていないため、症状のない方への検診は勧められていません(※1)。
「検診」と「診療」はそもそも実施の目的が違います。
検診は症状がない方のためのものです。
しこりや乳頭からの出血などがある場合は、40歳未満でも、次の検診を待たずに乳腺外科などで診察を受けるようにしてください。
「要精密検査」の通知が届いたら?確定診断との違いと実際の確率
検診で「要精密検査」となっても、がんの確定診断ではありません。
実際にがんが見つかるのは、要精密検査となった方の18人に1人ほどです(※2)。
残りの方は詳しく調べると良性と分かりますが、どちらに入るかは検査をしなければ分かりません。
自己判断で放置せず、必ず精密検査をお受けください。
新常識!自分を守る生活習慣「ブレスト・アウェアネス」とは
「自分の乳房の状態に日頃から関心を持つ」という生活習慣です。
難しい手技を覚えることよりも、いつもの見た目や触れた感じを知っておくことに意味があります。
手技にこだわらない!「いつもの乳房を知る」4つの柱
柱は、
・自分の乳房の状態を知る
・日々の変化に気をつける
・変化に気づいたら医師に相談する
・40歳から定期的に検診を受ける
の4つです。
「知る」だけで終わらず、変化を受診につなげるところまでが大切です(※3)。
お風呂や着替えのついでにできる気軽なセルフチェックのコツ
かつては「自己触診」として、しこりを探す触り方が指導されていました。
ただ、決まった手順を正しく続けるのは難しいことも分かってきました。
今は方法にこだわらず「いつもの乳房を知っておく」ことに重点を置く考え方に変わっています(※1)。
乳房の大きさや柔らかさには個人差があり、多少の左右差もあります。他人の乳房や写真を基準にするより、「以前の自分と比べてどうか」に目を向けましょう。
着替えや入浴のついでに、鏡で乳房の形、皮膚のくぼみ、乳頭の向きの変化を見てみましょう。
入浴中、石鹸がついた手で優しくなでるように触れると、滑りが良く、変化に気づきやすくなります。
決められた触り方を完璧にこなしたり、毎日くまなくしこりを探したりする必要はありません(※3)。
月経のある方は、月経前に乳房が張って痛み、月経が終わると軽くなることがあります。
こうしたご自身のパターンも知っておくと役立ちます。
ただし、新しいしこりや出血に気づいたときは、月経が終わるのを待つ必要はありません。
手で触れない小さながんもあるため、セルフチェックで異常がなくても定期的な検診は必要です。
反対に、検診で「異常なし」でも、その後に変化を感じたら受診をご検討ください。
生活習慣で見直せる乳がんリスクの軽減対策
生活習慣でリスクを下げる余地もあります。
普段の生活習慣を見直し、リスクを高めるものはなるべく避けるようにしましょう。
飲酒・喫煙・運動不足・閉経後の肥満とリスクの関係
飲酒は量が増えるほどリスクを高めることが確実とされ、喫煙もほぼ確実です。
他人のたばこの煙を吸う受動喫煙にも、リスクを高める可能性が指摘されています。
閉経後の肥満は確実にリスクを高め、逆に閉経後の運動はリスクを下げます。
目安は、少し汗ばむ程度の歩行を週に2時間半以上です(※4)。
大豆食品やサプリメントに関する誤解と家族歴(遺伝)の重要性
食べ物や性格をめぐる思い込みも正されています。
豆腐や納豆などの大豆食品はむしろリスクを下げる可能性がある側で、避ける必要はありません。
ただし、イソフラボンをサプリメントで大量にとることは勧められません。
がん予防をうたう健康食品やサプリメントが乳がんのリスクを下げるという根拠もありません。
「乳がんになりやすい性格」というものもありません(※4)。
ご家族に若くして乳がんになった方、卵巣がんになった方、男性で乳がんになった方がいる場合や、血縁者に乳がんが多い場合は、家族歴を医師にお伝えください。
乳がんに関わる遺伝子の変化は男女どちらからも子へ伝わるため、母方だけでなく父方の家族歴も同じくらい重要です。
リスクが高いと判断されれば、40歳を待たずに一般の検診とは異なる検査計画を立てることがあります。
忙しい方が検診を後回しにしないためには?
「時間ができたら行く」より、対象の年にご自身の誕生月などを検診月と決め、先に予定表へ入れてしまう方法がおすすめです。
費用の面では、ほとんどの市区町村が多くを公費で負担しているので、一部の自己負担で受けられます(※2)。
受診日だけでなく、「結果を確認する日」も予定に入れておくと、見落としを防ぎやすくなります。
要精密検査なら、その場で受診先と予約方法をご確認ください。
検診は受けて終わりではなく、結果に応じた行動までが一続きです。
痛みや恥ずかしさが心配なら、予約時に伝えていただいて構いません。
10月はきっかけの一つであり、受診時期が来ていれば10月まで待つ必要はありません。
まとめ:検診の予約を先回りして入れ、「いつもの自分」に関心を持とう
乳がん対策で最も大切なのは、40歳になったら定期的に検診を受けることと、日頃から「自分の乳房の普段の状態」を知っておくことです。
運動・喫煙・飲酒・食事など、日々の生活習慣を整えることも重要です。
10月のピンクリボン月間をきっかけに、誕生月など受診しやすい時期を予定表に入れ、ご自身の体と向き合う習慣を始めてみましょう。
参考資料
(※1)日本乳癌学会「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版」Q1 乳がん検診について教えてください
(※2)厚生労働省「がん検診」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html
(※3)厚生労働科学研究費 乳がん検診の適切な情報提供に関する研究「ブレスト・アウェアネス(乳房の健康チェック)のすすめ」
https://brestcs.org/information/self/
(※4)日本乳癌学会「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版」Q62 食生活・生活習慣・持病と乳がん発症リスクについて
執筆者

林裕章先生
林外科・内科クリニック理事長
国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。
現在、外科医の父と放射線科医の妻と、全身を診るクリニックとしての有床診療所および老人ホームを運営している。
また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、また医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。
林外科・内科クリニック
https://hayashigekanaika-cl.com/



