「ウインターブルー」って知ってる!?気温が下がると気分が沈む「冷え」について幾嶋先生にお伺いしました
気温が下がってくるにつれ、なんだか気分も沈みがちになっていませんか?
実はそれ、体の冷えが原因かもしれません。
さまざまな心身の不調の原因ともなる冷えについて、医療法人幾嶋医院の院長である幾嶋泰郎先生にお話を伺いました。
女性に多い!なんとなく落ち込みがちなのは・・・ウインターブルーが原因かも?
欧米では冬場に多いことからウインターブルーとも呼ばれる季節性うつ病。
症状は一般的なうつ病と同じで、秋頃から抑うつ感が出現し、春になると自然に回復するという周期性が特徴的です。
このような冬季のうつ病は20歳代前半に多く、女性は男性より4倍かかりやすいといわれています。
私たちの体温は36.5~37.2℃という狭い範囲に保たれています。
体温は深部の体温と表層の体温に分かれており、深部には脳と内臓があり、表層の体温を犠牲にしてでもこの部分の体温を低下させないように、調整されています。
人間の生命活動は酵素によって、化学反応が制御されていて、その酵素が最もよく働くのが37℃といわれています。
それでも深部体温内でも格差が生じることがあり、脳の体温を上げるには至らないほどの寒さでは、脳内の新陳代謝が低下し、うつ病に関係しているセロトニンなどの脳内活性物質がつくられなくなってうつ病が発症すると思われます。
体温の40~80%は筋肉からつくられます。
女性は男性より筋肉量が少なく、しかも若い女性は潜在的に冷え症があり、ファッション性を重視する傾向があったり、ちょっとでも汗をかくとお化粧のことや体臭のことが気になったりするので冷やしすぎる傾向の人がいて、他の年代よりも冷え症になりやすいのではないでしょうか?
大切なのは体を温めること。内部から温めるには漢方も
身体を温めるだけで抑うつ感が軽快しますので、冷え症を改善する漢方薬がおすすめです。
しもやけやあかぎれなどができるような人や不妊症で通院している人では、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)や温経湯(うんけいとう)、月経痛、月経の異常があるなら、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)などを使います。
むくみやかゆみがあれば真武湯(しんぶとう)、腰痛があって不安感も強いなら、それに八味地黄丸(はちみじおうがん)を追加してもいいでしょう。
状態が悪化する秋冬だけ治療するのではなく、冷え症そのものを治療した方がいいので、年間を通して服用したほうがいいでしょう。
かかりつけ医などにご相談ください。
防寒グッズやエアコンの調整(25℃以上)、暖房器具や季節の変わり目の寒暖差にも目を向ける必要があります。
今の季節のように、日中は暑くても、夕方や朝方の気温が低下する時間帯に暖房を入れなかったりすると悪化する可能性があります。
食べ物も身体を温めるものと冷やすものがあることは知っていて損はありません。
夏によく食べるものや南の方で取れるものは身体を冷やします。
例えば夏野菜のキュウリやトマト、熱帯でとれるバナナやパイナップルなどが該当します。
逆に冬によく食べるものや北の方で取れるものは身体を温めます。
ネギやニンジンレンコン、かぼちゃなどが該当します。
また、体を温める作用のあるしょうがを食べ物や飲み物に追加するのもおすすめです。
これから寒さはどんどん本格的になります。
体を冷やさないよう心がけましょう。
執筆者
幾嶋泰郎先生
医療法人いくしま医院理事長
[経歴]
1955年生まれ。
1980年に川崎医科大学を卒業し、母校の外科で2年間の研修。
その後福岡大学産婦人科で研修し、第一生命保険会社で診査医をしながら久留米大学産婦人科で学位を取得。
1999年、父の診療所を継承し福岡県柳川市で無床診療所医療法人いくしま医院を開業し、現在は理事長を務める。
デイサービス、グループホーム、小規模多機能施設、住宅型有料老人ホームをスタッフに支えられながら運営している。
開業後に漢方に目覚め、柳川漢方研究会(現在、漢方やながわ宿)を立ち上げ、初心者の育成と自身の研鑚に努めているかたわら、新見正則先生が主催するYouTube「漢方jp」に出演し講演や対談を通して、新しい漢方の在り方を模索している。
2022年4月よりオンライン診療を開始。自ら球脊髄性筋萎縮という難病(10万人に1人)を背負い、車椅子で診療を続けている。
[所属学会など]
日本東洋医学会 日本産婦人科学会 日本老年医学会 福岡医師漢方研究会
いくしま医院ホームページ
https://www.ikushima.or.jp/