肩の痛みは四十肩のせい?原因と正しい対処法についてなか整形外科理事長 樋口先生にお伺いしました

何となく肩を動かすと違和感があったり、痛みがあったり。
まさか四十肩・・・?と思っても、自身が30代だとちょっと受け入れがたかったりして・・・。
どうして肩に不調が起こるんでしょうか?
今回は、なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック院長の樋口直彦先生にお話を伺いました。

四十肩と五十肩、違いはあるの?そもそもどういうもの??

年齢で呼び名が変わるだけで、基本的には同じ疾患です。
40代で発症すれば四十肩、50代なら五十肩と呼ばれることが多いのですが、いずれも「肩関節の炎症」によって動きが悪くなり、痛みを伴う点が共通しています。
医学的には「肩関節周囲炎」とされ、肩の関節を取り巻く組織(関節包、腱板、靱帯など)に炎症や癒着が起きることが原因と考えられています。
だるさや違和感など初期症状が肩こりと似ているため、混同されることも多いですが、肩こりは主に筋肉の血流不足や疲労によって起きる不快感です。
一方、四十肩・五十肩は「関節内部の炎症」が原因で、腕を動かすと痛い、可動域が狭くなる、夜間にズキズキと痛むといった特徴があります。
とくに、「腕を上げられない」「後ろに回せない」などの運動制限が強い場合は、単なる肩こりではなく、関節周囲炎を疑った方がよいでしょう。

痛みを感じるのはどこ?放っておけば治るって本当??

「自然に治る」と言われることもありますが、適切な対処をしなければ長引いたり、可動域が元に戻らないまま固まってしまうことも。
無理に動かすと悪化するケースもあるため、安易に放置するのは避けましょう。
炎症のピークを過ぎたあとにリハビリを開始することで、多くの方は半年〜1年ほどで回復します。
痛みがあるのは肩関節で、肩関節は、筋肉・腱・関節包など多くの組織が複雑に関与する部位です。
四十肩・五十肩では、特に「関節包」が炎症・癒着を起こすことが多く、動かすたびに突っ張るような痛みが出ます。
また、腱板と呼ばれる筋肉の腱が痛んでいるケースもあり、その場合は特定の動き(例:腕を横に上げる)で鋭い痛みが出るのが特徴です。

整形外科?鍼灸院?どこに行くのが正解?

まずは整形外科で診断を受けることをおすすめします。
レントゲンや超音波検査で、腱板断裂など他の疾患との区別が必要な場合があるためです。
診断がつけば、保存療法(運動・薬・注射)を中心に進めていきます。
そのうえで、補助的に鍼灸や理学療法を取り入れる方もおられますが、初期は自己判断で無理な施術を受けると悪化することも。
専門家の指導のもとで進めるのが大切です。

予防やセルフケアにできること

以下のようなやさしいストレッチや体操を、無理のない範囲で続けることが予防・改善につながります。
1)壁を使った腕上げストレッチ
壁に手をつき、少しずつ腕を上にスライドさせていきます。
痛みが強い場合は無理せず中止を。
2)タオル体操
タオルの両端を持ち、背中の後ろで上下に動かす体操です。
肩の可動域改善に役立ちます。

痛みがある時期には、無理な運動は避け、保温や安静を意識しましょう。
冷やしすぎるのも避けたほうが無難です。

まだ35歳なんですが・・・30代でも四十肩になる?

はい、30代でも四十肩と同様の症状が出ることは珍しくありません。
特にデスクワークや育児で腕を使いすぎている方、肩の柔軟性が低下している方は要注意です。

市販薬やサプリメントは効くの?
市販の貼付薬(湿布や塗り薬)では、「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」を含むものが痛みの軽減に役立つ場合があります。
ただし、症状が長引く場合や夜間痛が強いときは医師の診察を優先してください。
サプリメントに関しては、明確な医学的エビデンスが十分でないものも多く、あくまで補助的に利用するのがよいでしょう。

まとめ

四十肩・五十肩は、年齢だけでなく生活習慣や筋肉の使い方にも関係しています。
症状に気づいたら、無理に動かさず早めに整形外科を受診することが大切です。
正しい知識と予防で、つらい肩の痛みを軽減し、毎日を快適に過ごしましょう。
この記事は整形外科医の監修のもと作成していますが、症状や対処法には個人差があります。
違和感や痛みがある場合は、医療機関での診断を受けてください。

[執筆者]

樋口 直彦
医療法人藍整会なか整形外科 理事長
医療法人藍整会 なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック 院長
帝京大学医学部卒業、日本整形外科学会認定専門医
Vリーグ「サントリーサンバース」チームドクター

[プロフィール]
帝京大学医学部卒業後、いくつかの病院で勤務し、院長を経験後、2021年1月に医療法人藍整会 なか整形外科の理事長に就任。
バレーボールVリーグのサントリーサンバーズのチームドクターも務める。
骨折治療をはじめ関節外科、スポーツ整形外科を専門に治療。
Vリーグ サントリーサンバーズの選手の治療の経験を含めて、スポーツ整形外科医として、患者さんの個々のケース、タイミングを共に考え最善の治療を行なっている。
クリニック運営にICTを推進し、お待たせすることない診療が信条。

医療法人藍整会 なか整形外科
京都西院リハビリテーションクリニック
https://nakaseikei.com
京都北野本院
https://www.naka-seikei.com

関連記事一覧