
歯みがきしているのにむし歯になるのはどうして?原因と対策について歯科医師石毛先生にお伺いしました
子どもの頃とは違い、毎日ていねいに歯を磨いているつもりなのに、なぜかできてしまうむし歯。
磨き方に問題がある?それとも・・・。
今回は、大神宮デンタルクリニック院長の石毛俊作先生にお話を伺いました。
むし歯ができるのは3つの条件が重なったとき!
むし歯は、口の中にいる細菌が、飲食物に含まれる糖分を餌にして作りだした酸によって、歯が溶けた状態のことを言います。
むし歯のできる条件は3つあります。
1つめは、生まれ持った歯の性質や歯並びといった「歯の質」
2つめは、むし歯の原因となる「細菌」
3つめは、むし歯菌の栄養源となる「糖質」
その3つの条件が重なり、「時間」が経過すると虫歯が出来ます。(カイスの輪)
※画像
この条件の中の1つでも取り除くことができればむし歯にはなりませんが、どれも完全に取り除くことはできません。
よってこの条件をいかに減らしていくかでむし歯になりにくくなります。
条件1:「歯の質」への対策
1つめの「歯の質」に関してはフッ素入りの歯磨き粉が有効です。
フッ素は歯の質を強くし、むし歯菌の働きを弱めてくれます。
また、食事をすると脱灰といって歯の表面から大事な成分が溶け出しますが、それをまた元に戻してくれる再石灰化を促してくれます。
質の良い唾液を増やすためには食事をよく噛んで食べること、口呼吸ではなく鼻呼吸にすること、カフェイン・糖分・炭酸以外で水分補給をすること、喫煙やアルコール摂取を控えること、唾液腺マッサージを行うことなどが挙げられます。
条件2:「細菌」への対策
2つめの「細菌」に関しては、歯垢の量が多いほどむし歯が発生しやすくなるので、歯垢への対策が有効です。
毎日自宅での歯磨きに加え、フロスや歯間ブラシで歯垢を取り除くことが重要です。
しかしどんなに頑張って歯磨きしても歯垢を100%落としきれる方はいないので、落としきれない歯垢を定期的な歯科医院でのクリーニングで除去をおすすめします。
歯垢が歯石となる前に、きちんと取り除きましょう。
条件3:「糖質」への対策
3つめの「糖質」に関しては糖分を摂る回数や時間が影響します。
糖分を摂る回数を減らすために間食ではなく食後のデザートで摂るようにするなど、間食は1日1回など回数を決め、回数が増えないように工夫します。
摂取時間が長くてもむし歯のリスクは高くなってしまうのでダラダラ食べ・ダラダラ飲みにならないようにしましょう。
特にダラダラ飲みになりやすい清涼飲料水やお砂糖入りのコーヒー、炭酸飲料などは要注意です。
また、口の中に含んでいる時間が長い飴やキャラメルもむし歯のリスクが高いので同じく要注意です。
むし歯はフッ化物の利用や就寝前の糖質を含んだ飲食物の摂取の制限、歯みがきなどによりある程度防ぐことが可能です。むし歯は歯を失う大きな原因であることを認識し、予防に取り組むことが重要です。
歯みがきはフッ素入りを使うべき?
結論から言うと、フッ素入りの歯磨き粉を使うべきです。
正しい使い方をすればリスクよりも圧倒的にメリットが大きいです。
フッ素の効果としては、以下の点があげられます。
歯の表面にあるエナメル質を強化し、酸に強くなるのでむし歯菌が出す酸にも歯が溶けにくくなります。
初期むし歯では歯の表面のミネラルが失われる脱灰が起こりますが、フッ素は唾液中のカルシウムやリン酸と一緒に作用して、失われたミネラルを戻す再石灰化を助けます。
フッ素はむし歯菌の酵素の働きを邪魔することで、酸の産生を抑制し、むし歯菌の活動を弱めます。
フッ素は年齢問わず効果があり、市販のフッ素入り歯磨き粉は安価で長期間継続して使いやすいむし歯予防法です。
フッ素入り歯磨き粉の使い方
歯ブラシの水けをよく切った状態で歯ブラシの毛の部分に歯磨き粉をのせます。
濃度や量は年齢に応じて調整します。
・歯が生え始めるころ(だいたい生後6か月ころ)~2歳は900~1000ppmの濃度の歯みがき粉をお米粒程度
・3歳~5歳は900~1000ppmの濃度の歯みがき粉をグリンピース程度
・6歳以上は1400~1500ppmの濃度の歯みがき粉を歯ブラシ全体(2cm程度)
適量をとったら、まずは全部の歯に行き渡らせるように歯に塗りましょう。
そして、その後歯全体を2~3分磨きます。
うがいは、5~15mlの少量のお水で1回だけすすぎます。
ペットボトルのキャプが5mlなのでペットボトルのキャップ1~3杯程度の量です。
思ったより少なくて、驚かれる方もいるかもしれません。
また、2回以上すすいでしまうと成分が流れてしまうためうがいは1回までにしてください。
フッ素入りの歯磨き粉の使用は1日2回以上、うち1回は就寝前に使用します。
歯を磨いた後は1~2時間は飲食を控えましょう。
フッ素入り歯磨き粉の危険性
大量に摂取すれば中毒になるリスクはありますが、フッ素中毒を懸念する摂取量は、
・子どもの場合:フッ素入りの歯磨き粉チューブ1本
・大人の場合:フッ素入りの歯磨き粉チューブ2~3本
を、それぞれ一気飲みした場合で、腹痛や嘔吐が現れる可能性があります。
そのため、通常の歯磨きで使用する場合は問題ありません。
また、6歳以下の子どもはフッ素濃度の高い水道水を飲み続けることでフッ素症と言って歯の形成異常が現れることがありますが、歯磨き粉や歯科医院で行うフッ素塗布で発症することはありません。
ネットなどではさまざまな情報が流れることがありますが、情報源や信頼度をきちんと確認して判断してくださいね。
ホームケアと歯科医院で使用するフッ素に違いはある?
ホームケアでは歯磨き粉にフッ素が入っていたり、うがいでお口全体に行き渡らせるタイプがあり、毎日使用できるよう使いやすくできています。
濃度も~1,450ppmと安全です。
歯科医院で行うフッ素塗布はホームケアで行うフッ素よりもはるかに濃度が高く9000ppmです。
フッ素の塗布は半年に1度程度でよいです。
塗布方法もブラシや綿球、トレーにフッ素を入れて噛んでもらうなどいろいろな方法があります。
また、歯科医院で行う場合は、フッ素を塗布する前によりフッ素の効果が得られるよう歯の表面をクリーニングできれいにしてから塗布します。
ホームケアで毎日フッ素を取り入れ、定期的に歯科医院でむし歯の原因菌を取り除くクリーニングをして濃度の高いフッ素を塗布することでよりむし歯予防効果が高まります。
高級な歯みがき粉を使用した方がいい?
数百円のものから、数千円以上するものまで、市場にはさまざまな歯みがき粉が存在しています。
しかし、「高級な歯みがき粉=必ずしも効果が高い」わけではありません。
大切なのは成分・使用方法・お口の状態に合っているかどうかです。
ご自身のお口の中のお悩みに合わせて選べるよう、歯みがき粉にはさまざまな効果のものが販売されています。
しかし有効成分が多く含まれている歯みがき粉ほど値段は高い傾向にあります。
悩み別、歯みがき粉の選び方
・むし歯が気になる
→むし歯予防効果の歯磨き粉(高濃度フッ素1450ppm配合)
・歯がしみる
→知覚過敏を抑える効果のある歯磨き粉(硝酸カリウムや乳酸アルミニウム、高濃度フッ素配合)
・歯周病が気になる
→歯周病予防効果のある歯磨き粉(抗菌成分のIPMP、CPC、トラネキサム酸、β‐グリチルレチン酸などが配合)
・着色を落としたい
→着色除去効果のある歯磨き粉(ポリリン酸ナトリウム、シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどが配合)
日本製の歯磨き粉で現在ホワイトニング効果のある歯みがき粉はありません。
ホワイトニングと書かれている歯みがき粉は着色を落とす効果のある歯みがき粉が多く、歯の本来の白さより明るくするホワイトニング効果はありません。
海外製だとホワイトニング効果のある過酸化水素が配合された歯みがき粉が販売されています。
またフッ素濃度も、日本では1500ppm以下に制限されていますが、海外製の歯磨き粉には5000ppmのフッ素が配合されたものも販売されています。
執筆者
石毛俊作先生
医療法人社団絆会 大神宮デンタルクリニック理事長
東北大学卒。
千葉大学医学部附属病院歯科・顎・口腔外科で臨床研修終了後、大学院へ進学し医学博士号取得。
基幹病院の口腔外科勤務後、大神宮デンタルクリニックを開院。
「安心できる歯医者さん」を理念に、丁寧でわかりやすい説明を心がけ、患者様に沿った治療を提供しています。
専門である口腔外科のみならず一般診療も幅広く対応しております。
保有資格・所属学会
日本口腔外科学会 専門医
日本口腔科学会 認定医
日本障害者歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会
日本臨床歯科CADCAM学会
京セラインプラント臨床マイスター
厚生労働省臨床研修指導医
臨床歯科麻酔管理指導医
大神宮デンタルクリニック
https://www.daijingu-dental.com/