睡眠リズムが乱れてる。快眠の対策についてクリニック院長の中澤先生に伺いました

夏の疲れが残る頃、夜は涼しくなってつい長く起きてしまいますよね。「秋の夜長」は心地よい反面、睡眠のリズムが乱れやすい時期でもあります。
今回は、季節の変化と睡眠の関係、快眠のための環境づくりや生活習慣、糖尿病や泌尿器の面から気をつけたいポイントについて、なかざわ腎泌尿器科クリニック院長の中澤佑介先生にお聞きしました。

秋冬は睡眠が長くなるって本当?

最近の研究によると、冬は夏に比べて睡眠時間がやや長くなる傾向があるそうです。人工照明がある現代でも、日照時間が短くなることでメラトニンの分泌時間が延び、その影響で冬には総睡眠時間が長くなり、春には短くなるという季節変動が見られています(クリニックの睡眠検査データでは、冬と春で最大約1時間の差が確認されています)。
秋から冬にかけて「眠気が増す」のは、自然な体の反応です。ただ、寝過ぎたり昼寝が増えたりすると、かえって夜の睡眠の質が落ちることも。平日と週末で就寝・起床時刻をあまり変えないことが大切です。

「秋バテ」と睡眠の質

猛暑を乗り越えた後は、自律神経が疲れていたり、脱水気味だったり、食欲が落ちていたりして、なかなか寝付けなかったり夜中に目が覚めたりすることがあります。まずは生活リズムを整えて、水分と栄養をしっかり摂り、日中に軽く体を動かして、朝は外の光を浴びることから始めてみましょう(詳しくは後ほどお話しします)。

海外に行かなくても時差ボケ?ソーシャル・ジェットラグとは?

ソーシャル・ジェットラグというのは、体内時計と実際の生活時間がズレてしまう現象のことです。例えば、平日は7時起き、週末は10時起きというように睡眠のタイミングが大きく変わると、月曜の朝に時差ボケのような不調が出やすくなります。肥満や血糖値の問題とも関連があるという報告もあります。

対策としては:
・平日と休日の起床時刻の差を1時間以内にする
・起きたらすぐにカーテンを開けて朝の光を浴びる(曇りでも効果あり)
・夜の強い光(特にブルーライト)を避ける
・寝る1~2時間前から照明を暗めにする、スマホやPCの画面の明るさを下げるなど
これらが重要になってきます。

快眠を支える「環境」:温度・寝具・光

人間の体は、皮膚から熱を逃がすことで眠くなる仕組みになっています。寝る前に手足が温まって深部体温が下がると、自然と眠りに入りやすくなるんです。
秋は気温差が大きいので、寝室は少し涼しめ(18〜20℃くらい)を目安に、寒すぎず暑すぎない環境を心がけましょう。掛け布団は肩口に隙間ができないようにして、敷布団やマットレスは通気性と体圧分散のバランスが良いものを選ぶといいですね。

お風呂や足湯は寝る1〜2時間前がおすすめです(手足の血流が良くなって、その後の深部体温の低下がスムーズになります)。
朝は外で15〜30分ほど自然光を浴びましょう(通勤・通学の歩行でOK)。
夜は寝る前の強い光や画面を控えめにして、必要なら間接照明や暖色系の照明を使うのがおすすめです。

「秋の運動」は最高の睡眠薬

運動は、寝付きが良くなったり、睡眠時間や睡眠効率が改善したりと、小〜中程度の効果が期待できます。おすすめの運動は:
・日中の有酸素運動(早歩き・軽いジョギング・サイクリング)を30分くらい
・寝る前は激しい運動を避ける。ヨガやストレッチ、太極拳など軽〜中程度の運動なら寝る前でも良いとされています
何より大事なのは続けることです。毎日少しずつがポイントです。

食事と栄養:何を、いつ、どう食べる?

寝る3時間以内に重い食事や脂っこいもの、お酒をたくさん飲むのは、夜中に目が覚める原因になります。
トリプトファン(タンパク質に含まれる)とビタミンB群は、睡眠ホルモンのメラトニンの材料になる栄養素です。夕食には魚・大豆製品・乳製品・卵などをバランス良く取り入れましょう。
果物ではキウイが睡眠の改善に良いという研究があって、寝る1時間前に2個食べるのが目安とされた報告もあります(ただしエビデンスは限定的)。
カフェインは人によって効き方が違いますが、寝る6時間前までに済ませるのが無難です。

アロマテラピーは効く?

ラベンダー精油などで、短期的に睡眠が改善したという研究結果があります。ただ、効果は小〜中程度で、研究の質や対象者(高齢者が多い)にばらつきもあるため、過度な期待は禁物です。使う場合は寝る前のリラックス方法として、ディフューザーで薄めに使い、パッチテストをしてから安全に楽しみましょう。

泌尿器の視点:夜間頻尿(ノクチュリア)への工夫

夜に何度もトイレに起きると睡眠が分断されて、日中の眠気や生活の質の低下につながります。まずは次のような生活の工夫を試してみましょう:
・寝る2~3時間前から水分を控える(日中はしっかり水分補給)
・カフェインやアルコールは夕方以降控える
・寝る直前にトイレに行く
・足がむくむ人は夕方に足を高くして休む、弾性ストッキングも検討
改善しない場合は、睡眠時無呼吸症候群、過活動膀胱、前立腺肥大、心臓や腎臓の問題、利尿薬を飲む時間など、専門医での診察が必要です。

「ショート/ロングスリーパー」は本当にいる?

生まれつき短時間睡眠でも元気な「ナチュラル・ショートスリーパー」はごく稀に存在します(遺伝的な変異が一部で報告されています)。

ただ、ほとんどの人は当てはまりません。意図的に睡眠時間を削ると健康リスクが高まります。成人の目安は7〜8時間です。秋冬で眠気が強い時期でも、平日の寝不足を週末に一気に返済しない方が、次の週のコンディションを保ちやすくなります。

今日からできる快眠チェックリスト

・平日と休日の気象時刻の差は±1時間以内
・起床後15~30分の朝日+日中の外歩き
・寝室は静か・暗め:涼しめ、肩口に隙間なし、通気性の良い寝具
・夕方以降のカフェイン・アルコールは控えめ、寝る3時間前までに夕食
・寝る前は画面と明るい照明を弱めて、ストレッチやヨガでリラックス
・夜間頻尿が続く/いびき・無呼吸が疑われる/日中の強い眠気が続く場合は専門医へ

参考文献(抜粋)
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※本原稿は最新の文献をもとに執筆していますが、個別の症状・治療は医療機関でご相談ください。
※記事作成時に、一部生成AIを使用しています。

執筆者

中澤佑介(なかざわ ゆうすけ)先生
金沢医科大学医学部医学科卒業。
「患者さんに近い立場で専門的医療を提供したい」という思いで2021年、なかざわ腎泌尿器科クリニックを開設。
2024年9月、JR金沢駅前に金沢駅前内科・糖尿病クリニック(https://kanazawa-naika.jp/)を開院。

なかざわ腎泌尿器科クリニック
https://www.nakazawa-cl.jp/

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