
【医師が体験】マンジャロダイエットのメリット・デメリットについてなか整形外科理事長がお話しします
ダイエットに関する情報が入り乱れる現代、「成功率が高い」「楽に痩せられる」などとして、医薬品を使ったダイエットを目にすることも多いのではないでしょうか。
今回は、メディカルダイエットについて、なか整形外科京都西院リハビリテーションクリニック院長の樋口直彦先生に自らの体験も含めたお話を伺いました。

マンジャロは「魔法の薬」ではない。医師として、自ら体験して感じたこと
SNSやメディアで話題の「マンジャロ(チルゼパチド)」。急激に体重を落とした芸能人やインフルエンサーの影響で、「本当に痩せるの?」「危険はないの?」という声が多く聞かれます。私は整形外科医として患者さんに向き合う立場であると同時に、自らもマンジャロを用いたダイエットを経験しました。
その体験と医師としての視点からお話ししたいと思います。
医学的に見るマンジャロ
マンジャロは日本では2型糖尿病治療薬として承認されており、肥満治療薬としては承認されていません。
アメリカでは肥満症の薬としても使われていますが、日本でダイエット目的に用いる場合は自由診療(自費)になります。
作用の仕組みは、GLP-1受容体作動薬とGIP受容体作動薬の二重作用で、食欲を抑え、胃の排出を遅らせることで自然に食べる量が減り、体重減少につながるというものです。
臨床試験でも10%を超える減量効果が報告されています。
自らの体験談「ガリマインド」を得たこと
私自身、マンジャロを使い始めて最も感じたのは「痩せることで生活習慣そのものが楽になった」という点です。
一般的には吐き気や便秘などの副作用が報告されていますが、私の場合はほとんど副作用を感じませんでした。
そのためスムーズに減量をスタートできました。
体重が落ち始めると、不思議なことに運動するのが楽しくなったのです。
走っても体が軽く、疲れにくい。
結果として、トライアスロンに挑戦するモチベーションも高まりました。
さらに食生活にも大きな変化がありました。
これまでならコンビニに入ればつい甘いものを手に取っていましたが、自然と買わなくなりました。
ラーメンも食べなくなり、「食べたい」という欲求そのものが薄れていったのです。
いわば「ガリマインド(痩せ思考)」を手に入れた感覚でした。
無理に我慢するのではなく、自然に選択が変わっていく──これは大きな驚きでした。
メリットとデメリット
マンジャロのメリットは、従来のダイエットが続かなかった人でも「結果が出やすい」点にあります。
その効果が生活習慣の改善につながり、運動や食事のコントロールが苦ではなくなることもあります。
一方で、副作用やリバウンドのリスクも存在します。
中止すれば食欲は戻り、体重が増え、元に戻ってしまう可能性もあります。
また、日本では肥満治療薬としては承認されていないため、医師の管理下で慎重に使う必要があります。
そして、ここで強調したいのは、もともと痩せている人が使用するのは危険でしかないということです。
体脂肪率が低い状態でさらに減量すると、筋肉や骨量の低下、ホルモンバランスの乱れなど、健康を損なうリスクが非常に高くなります。
実際にSNSでは「スペ100」「スペ120」といった極端な痩せを競うような風潮も見られますが、これは命に関わりかねません。
マンジャロは本来、肥満症や糖尿病など医学的に必要なケースで使用されるべき薬なのです。
まとめ
マンジャロは確かに強力な効果を持つ薬ですが、「魔法の薬」ではありません。
私にとっては、マンジャロが「痩せ始めるきっかけ」をくれ、その後の運動や食事改善につながりました。
体が変わっていく喜びが、さらに前向きな習慣を後押ししてくれたのです。
しかし一方で、痩せている人が安易に使えば健康を損なう危険があることも忘れてはいけません。
痩せること自体が目的ではなく、その先に「健康で動ける体」をつくることが本当のゴールです。
利用を検討する際は、必ず医師と相談し、自分の生活習慣の改善とあわせて取り入れることが大切です。
[執筆者]

樋口 直彦
医療法人藍整会なか整形外科 理事長
医療法人藍整会 なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック 院長
帝京大学医学部卒業、日本整形外科学会認定専門医
Vリーグ「サントリーサンバース」チームドクター
[プロフィール]
帝京大学医学部卒業後、いくつかの病院で勤務し、院長を経験後、2021年1月に医療法人藍整会 なか整形外科の理事長に就任。
バレーボールVリーグのサントリーサンバーズのチームドクターも務める。
骨折治療をはじめ関節外科、スポーツ整形外科を専門に治療。
Vリーグ サントリーサンバーズの選手の治療の経験を含めて、スポーツ整形外科医として、患者さんの個々のケース、タイミングを共に考え最善の治療を行なっている。
クリニック運営にICTを推進し、お待たせすることない診療が信条。
医療法人藍整会 なか整形外科
京都西院リハビリテーションクリニック
https://nakaseikei.com
京都北野本院
https://www.naka-seikei.com



