
高濃度乳房(デンスブレスト)とは?乳がんリスクと受診のサインを医師が解説
「胸に違和感や痛みがある」
「検診で高濃度乳房(デンスブレスト)と言われたけれどどうすればいい?」
など、乳房に関する不安や検査の疑問を抱えていませんか?
林外科・内科クリニック理事長の林裕章先生によると、乳がんのサインは痛みのない「しこり」だけではなく、皮膚や乳頭の変化、分泌物の出方など多岐にわたります。
本記事では、早めの受診が必要な症状の目安をはじめ、マンモグラフィと超音波検査の特徴・違い、日本人に多いといわれる高濃度乳房(デンスブレスト)の注意点や20~30代・男性の乳がんリスクまで詳しく解説します。
この記事のポイント
・受診すべき危険サイン:痛みの有無に関わらず、新しいしこり、ひきつれ、片方の穴からの血性分泌物、治りにくい乳房のただれ等は早めに乳腺外科へ
・画像検査の特徴と違い:石灰化を捉える「マンモグラフィ」と、水たまりやしこりの内部を見る「超音波(エコー)」それぞれの得意分野
・高濃度乳房(デンスブレスト)の真実:病気ではなく、乳腺と脂肪の割合によって分類される乳房の構成。検診の結果をもらう際などに家族歴などを踏まえた追加検査の相談を

見逃さないで!早めに乳腺外科へ相談すべき「乳房のサイン」
日頃乳房をチェックしている時、どのような症状が出た時にどう考えればよいか知っておくことは重要です。
受診の目安についてお話ししたいと思います。
「痛む=がん」「痛くない=安心」ではない?痛みと病気の関係
乳房の痛みには、月経に伴う良性の変化も関係します。
「痛いからがん」「痛くないから大丈夫」とは判断できません。
片側の同じ場所の痛みが続く、月経と関係なく痛む、しこりや皮膚の変化を伴う場合は受診しましょう。
赤く腫れて熱を持ち、発熱や強い痛みもあるときは、乳腺炎などで早急な治療が必要なことがあります。
当日中を目安に医療機関へご連絡ください。
逆に、痛みが乏しいのに乳房が赤く腫れてくる場合は注意が必要です。
まれに「炎症性乳がん」という進行の早いがんが隠れていることがあります(※1)。
しこりはもちろん、それ以外の注意症状(ひきつれ・乳頭分泌物・治らないただれ)
新しいしこり、乳房や乳頭の新たなくぼみ・ひきつれ、赤色や茶色の乳頭からの分泌物、治りにくい乳頭のただれは、早めに乳腺外科へご相談いただきたいサインです。
しこりが大きくなる、わきの下に腫れがある場合も放置しないでください。
こうした変化があっても、必ずしも乳がんとは限りません(※1)。
乳頭からの分泌物は、出方で意味合いが変わります。
さらっとした液や乳汁のようなものが両側の複数の穴から出る場合は、良性のことがほとんどです。
一方、片方の乳房の一つの穴からだけ血の混じった分泌が出る場合は、がんが隠れていることもあるため、詳しい検査が必要になります。
受診時は、「いつから」「どちらの乳房のどこか」「月経との関係」「妊娠・授乳の有無」をお伝えいただくと診察に役立ちます。
マンモグラフィと超音波(エコー)検査の違いと「高濃度乳房」の疑問
乳がんの検査には、マンモグラフィとエコーが使用されます。
それぞれの検査でわかること、違いについてご説明します。
マンモグラフィの役割と痛みを和らげる受診タイミング
マンモグラフィは乳房専用のX線検査です。
しこりのほか、カルシウムが沈着してできる小さな白い点「石灰化」を捉えるのが得意です。
石灰化には良性のものも多く、見つかっただけでがんとはいえません。
乳房を板で挟むのには三つの狙いがあります。
・乳腺の重なりを減らして小さな病変を見つけやすくすること
・ぶれの少ない鮮明な画像を得ること
・放射線の量を減らすこと
月経前は乳房が張って痛みを感じやすいため、月経が終わった直後の柔らかい時期に受けると、痛みが軽く、画像もきれいになります。
台の角度や高さが合っていないだけで痛むこともありますので、痛いときは我慢せず撮影担当者にお伝えください(※2)。
放射線については、1回の撮影で乳腺が受ける線量が国の基準を下回るよう、装置ごとに管理されています。
白血病や発がんが起こるような量ではありません(※2)。
なお、妊娠中や妊娠の可能性がある方、授乳中の方、豊胸術を受けた方は、検診のマンモグラフィを受けられないことがあります。
予約や問診の段階で必ずお伝えください(※2)。
超音波検査は、音の反射を使って乳房の中を見る検査で、放射線被ばくはありません。
しこりの形や内部の様子、液体がたまった袋かどうかを調べるのに役立ちます。
日本人に多い「高濃度乳房(デンスブレスト)」とは?超音波検査を追加すべき?
マンモグラフィによる検診結果で「高濃度乳房(デンスブレスト)」という言葉を目にすることがあります。
乳房の中で乳腺の割合が多く、画像全体が白く見える状態です。
病名ではありませんが、日本人を含むアジア人女性に多く見られる特徴です。
がんも白く写るため、重なって見つけにくくなることがあります。
40歳以上の受診者のおよそ4割が該当するとみられています(※3)。
高濃度乳房は乳房の大きさとは関係ありません。
乳腺と脂肪の割合で決まるため、ダイエットで脂肪が減って該当することもあります。
マンモグラフィでは乳腺も乳がんも白く写るため、しこりなどの病変が白い背景に隠れて見つかりにくくなることがあります。
そのため、追加で超音波による検査を行うほうが良いかなどの研究も進んでいますが、死亡率を下げるかどうかはまだ結論が出ていません。
今のところ、高濃度乳房だからと全員に勧められる追加検査はありません。
高濃度乳房は病気ではないので、追加で超音波検査を受ける場合は自費になります(※3)。
超音波を足すと見つかるがんは増える一方、がんではないのに精密検査となる人も増えます。
「検査は多いほど安心」とは限らないので、ご自身の乳房の状態や家族歴を踏まえてご相談ください。
20~30代の若年層や男性も注意すべき乳がんリスク
乳がんは若い年代でも起こりますし、まれに男性にも起こります。
ですが、乳がんの検診の推奨は40歳以上とされています。
なぜ若い世代には検診が推奨されていないのでしょうか。
20~30代女性に定期検診が推奨されない理由と受診の目安
ただし、症状がなく特別にリスクが高いわけでもない20~30代の女性全員に、定期的な検診は推奨されていません。
この年代では死亡率を下げる効果が確認されておらず、不要な精密検査などの不利益も大きいためです(※4)。
では若い年代は何に気をつければよいのか。
検診の対象ではないため、この年代の乳がんは本人がしこりや血の混じった分泌に気づいて見つかることがほとんどです。
そのぶん、進んでしまった状態で診断されることも多くなります。
変化に気づいてすぐ受診できるかどうかが分かれ目になります。
見落とされやすい「男性の乳がん」や妊娠・授乳期の変化
男性も、割合としては女性よりまれですが、乳がんにかかることはあります。
男性の乳がんは乳輪の下に硬いしこりができることが多く、症状は女性と大きく変わりません。
ふだん胸を気にする習慣が少ないぶん、進行してから見つかることが多い傾向にあります。
男性であっても、胸のしこりや分泌物がないかを自身で確認することはとても重要です。
また、乳がんは妊娠中や授乳中にも起こります。
乳房が張ったり痛みがあったりする時期なので変化が分かりにくいのです。
新生児のお世話で忙しいため、お母さん自身の受診は後回しにしがち。
ですが、しこりが続くなど気になる症状を「授乳のせい」と決めつけずご相談ください。
専門家から見た、知っておいていただきたい体のサインは?
大切なのは、「がんは必ず痛むわけではない」ことと、「しこりだけがサインではない」ことです。痛みのないしこりでも相談が必要ですし、しこりを触れなくても皮膚や乳頭の変化が手がかりになることがあります。
例えば、乳頭や乳輪の湿疹のようなただれが治らない場合、まれに「乳房パジェット病」というタイプの乳がんが原因のことがあります。
湿疹のすべてががんというわけではありませんが、特に片側だけで続く変化を、市販の塗り薬で長く様子見しないことが大切です(※1)。
判断の基準は、「いつものご自身との違い」です。
乳房の変化を自分だけで良性・悪性に分ける必要はありません。
「気のせいかもしれないけれど、前と違う気がする」とお伝えいただくだけでも、ご相談の十分な理由になります。
まとめ:「気のせいかも」で放置せず、前と違うと感じたら専門医へ
乳房の変化や症状は「気のせいかもしれない」と自己判断で放置せず、普段の自分との違いに気づいた時点で早めに乳腺外科などの専門医へ相談することが重要です。
検査の特徴やご自身の乳房のタイプ(高濃度乳房など)を正しく理解し、適切な受診行動につなげていきましょう。
参考資料
(※1)日本乳癌学会「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版」Q4 乳房の症状,病気にはどのようなものがありますか
(※2)日本放射線技術学会「マンモグラフィ」
https://www.jsrt.or.jp/data/citizen/housya/x-02/
(※3)厚生労働科学研究費 乳がん検診の適切な情報提供に関する研究「高濃度乳房についてのQ&A」
https://brestcs.org/information/faq/
(※4)日本乳癌学会「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版」Q1 乳がん検診について教えてください
執筆者

林裕章先生
林外科・内科クリニック理事長
国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。
現在、外科医の父と放射線科医の妻と、全身を診るクリニックとしての有床診療所および老人ホームを運営している。
また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、また医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。
林外科・内科クリニック
https://hayashigekanaika-cl.com/



