熱中症って曇りや夜でもなるの?予防と対策について林外科・内科クリニック理事長の林裕章先生にお伺いしました

今年は、梅雨が明けていない地域も多い中、猛暑が続き、連日のように、「熱中症に注意」「熱中症予防」などと報道されています。
そもそも、「熱中症」とはどのような症状があり、なぜ起こるのでしょうか?
林外科・内科クリニック理事長の林裕章先生にお話を伺いました。

命にもかかわる!「熱中症」とはいったい何?

夏になると耳にする「熱中症」は、単なる脱水症状や夏バテと混同されがちですが、実際には命に関わる緊急疾患です。
体温調整がうまくいかなくなり、体内に熱がこもったままになることで、意識障害や臓器障害を引き起こすこともあります。
毎年、救急外来に搬送される方の中には重症化するケースも少なくありません。
特に高齢者や乳幼児、持病のある方にとっては極めて危険です。

曇りの日や夜でも熱中症になることがあるって本当?

実は梅雨時期や曇天の日でも熱中症は起こります。
湿度が高いと汗が蒸発しづらく、体温が下がらないためです。
気温がさほど高くなくても、湿度が70%を超えるような日は要注意です。
風通しの悪い室内や寝室では、寝ている間に体温が下がらずに脱水が進み、「夜間熱中症」と呼ばれます。
暑い日は夜間や室内でもエアコンを適切に使い、体温を過度に上げないようにしましょう。
熱中症は高齢者や子どもだけの病気ではありません。
スポーツや屋外作業、長時間の外出などで、学生や外回りのビジネスパーソンでも意識を失って倒れるケースが実際に見られます。
体力に自信のある人ほど無理をしがちなのも要因です。

熱中症かも?と思ったら。こんな初期症状に気を付けて

熱中症の初期症状は、めまい、頭痛、吐き気、筋肉のけいれん、倦怠感などです。
もし「少しおかしいな」と感じたら、その時点で涼しい場所に移動し、できるだけ静かに休むことが大切です。
また、冷たいタオルなどを使って体を冷やし、水分と塩分を補給してください。
発汗が激しく、皮膚が乾燥してきた場合、すでに体内の水分や塩分が不足している証拠ですので、すぐに対策を取る必要があります。
特に「まっすぐ歩けない」「ぼんやりして反応がおかしい」などの意識障害が見られたら、迷わず119番通報が必要です。
「翌日まで様子を見よう」は命取りになりかねません。

水さえ飲んでればOK・・・ではない!熱中症の予防方法

熱中症の予防には日々の備えが大切です。
運動時だけでなく、日常的にこまめな水分補給を意識しましょう。
特に暑さに慣れていない5月~6月は要注意。
暑熱順化と呼ばれる「体を暑さに慣らす」期間が必要です。
特に高齢者や小さな子供は体温調節がうまくいかないことがあるので、こまめな休息を取るように心がけましょう。
また、少しずつ飲むにはスポーツドリンクの活用は有効ですが、糖分が多いタイプは飲み過ぎに注意。
量が多くなる場合にはOS-1などの経口補水液や水、麦茶などの方がおすすめです。
水だけではナトリウムが失われ、かえって体調を崩すこともありますが、最近は塩入りの飴などもありますので併用するといいでしょう。

企業にも対策が義務付けられた熱中症対策

2024年度から、厚生労働省は「職場における熱中症予防対策」の強化を打ち出し、高温多湿な作業環境における企業の対応が義務化されました。
従業員の安全のため、
・WBGT(暑さ指数)の測定
・対象となる全作業者の把握
・休憩時間の確保や水分補給の推奨
・報告・連絡体制の整備
・対応マニュアルの策定

などが求められました。

まとめ

熱中症は、正しい知識と少しの注意で多くが防げます。
命を守るためには、「無理しない・我慢しない・早めに対応」が鉄則です。
今年の夏も、自分と周囲の大切な人を守る行動を心がけましょう。

執筆者

林裕章先生
林外科・内科クリニック理事長

国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。
現在、外科医の父と放射線科医の妻と、全身を診るクリニックとしての有床診療所および老人ホームを運営している。
また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、また医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。

林外科・内科クリニック
https://hayashigekanaika-cl.com/

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