
冷えがつらい。医師が教える体を冷やさないポイント4つ!クリニック院長の中澤先生に伺いました
寒さが増す時期。
指先や足先の冷えに悩まされている人も多いのではないでしょうか。
今回は、冷えによって起こる不調やその対策について、なかざわ腎泌尿器科クリニック院長の中澤佑介先生にお聞きしました。

冷えは放っておかないで!
「冷え」は単なる不快感にとどまらず、睡眠、メンタル、皮膚・口腔、排尿など全身に影響します。
特に女性は筋肉量や月経・妊娠・貧血の影響で自覚しやすく、早めの対策が重要です。
また体の冷えやすさに関しては個人差があり、体格や筋肉量、体脂肪分布、自律神経の反応や基礎疾患(甲状腺機能低下症、鉄欠乏性貧血、糖尿病性末梢神経障害、末梢動脈疾患など)で、差が生じます。
睡眠・排尿・自律神経まで・・・エビデンスでわかる「今日からできる冷え対策」。
本稿ではエビデンスを基に、今日からできる工夫と受診の目安をわかりやすく解説します。
冷えると起こる悪影響
●睡眠障害
入眠時は手足の皮膚温が上がり、体幹温が緩やかに下がると眠気が高まります。
逆に足先が冷たいと寝つきが悪くなりがち。
就寝1〜2時間前の40〜42℃の入浴(10分前後)や、就寝中の保温性のある靴下は入眠潜時の短縮や睡眠効率の改善に役立つと報告されています。
●排尿症状
寒さで交感神経が優位になると、頻尿・尿意切迫・夜間頻尿が悪化しやすく、室温の低さと過活動膀胱(OAB)の関連も示されています。
寒冷暴露では「冷え利尿」により尿量が増えることもあります。
●皮膚・口腔
血流低下で皮膚乾燥や口腔乾燥を自覚しやすくなります。
保湿・加湿を基本に。
今日からできる「体を冷やさない」工夫4つ!
1)環境
室温は「寒くない範囲」を維持しましょう。
重ね着、防風・保温、吸湿発熱素材の活用、濡れた衣類は早めに交換を。
アルコールは一時的に温かく感じても皮膚血管を拡張し体内の熱を逃がし、低体温リスクを上げます。
2)就寝前ルーティン
就寝90〜120分前に入浴(40〜42℃、10分程度)は済ませましょう。
就寝中は保温性のある靴下の着用が有効との報告があります。
寝具は軽めの掛け布団を層にして足元の冷えを避けます。
3)運動
筋肉は『発熱臓器』。
スクワット、カーフレイズ、リズム歩行など下肢の大筋群を日常に組み込みましょう。
4)食事・飲み物
生姜:摂取で末梢皮膚温やエネルギー消費の上昇が報告(効果は軽度〜中等度、即効性より継続を)。
唐辛子(カプシノイド):TRPV1を介して褐色脂肪や熱産生を促す可能性(辛味が苦手なら非辛味のカプシノイドに関する研究も)。
ただし「体温が大きく上がる」ほどの過度な期待は禁物。
カフェイン・アルコールの摂り過ぎは就寝前に避け、日中に適量を。
アルコールは前述の通り逆効果です。
入浴剤は効果があるの?
入浴は冷えの改善にはとても有効です。
しかし、エビデンスの核は「温かい湯に浸かる行為」自体です。
温浴や手足浴は痛み・疲労・睡眠の改善に寄与しうる報告があり、入浴剤の香りや保湿はリラクゼーションの補助にはなりますが、最も重要なのは温度・時間・タイミングです。
入浴剤は、好きな香りでリラックスなどの目的で使用しましょう。
「女性は冷やさないほうがいい」は本当?
一般的に、女性は体を冷やさない方がいいと言われていますよね。
結論として「冷やさない工夫は合理的」です。
女性は平均して筋肉量が少なく、寒冷下での体温調節の閾値や皮膚温低下が男性より生じやすいとする報告が複数あります。
また、多くの女性が悩む月経痛にも温めることは効果があるという報告があります。
月経痛には温罨法(おんあんぽう:体の一部を温めて血行を促進し、痛みを和らげたりリラックスを促したりする方法)が有効で、下腹部を温める習慣は実利的です。
冷えを侮らないで。受診の目安:何科に相談?
次のいずれかに当てはまれば受診を検討しましょう。
・指の色変化(白→紫→赤)や痛み
レイノー現象の可能性。
膠原病内科/皮膚科/血管外科で評価を。
・強いだるさ・易疲労感、動悸、むくみ、強い冷え
甲状腺機能低下症や鉄欠乏性貧血の可能性。
まず内科で血液検査(TSH・FT4、血算・フェリチン等)を。
・足先のしびれ・灼熱感・感覚低下
糖尿病の方は糖尿病性末梢神経障害の評価を(糖尿病内科/神経内科)。
フットケア指導も重要です。
・寒い季節に頻尿・夜間頻尿・尿意切迫が悪化
生活指導(室温調整・保温)に加え、泌尿器科で過活動膀胱の評価・治療を。
冷えは生活の質を大きく左右します。
「環境調整+就寝前入浴・足元保温+下肢中心の運動+食の工夫」が第一選択。
症状が強い、急にパターンが変わった、全身症状を伴う場合は、内科・婦人科・泌尿器科など適切な診療科に早めに相談しましょう。
執筆者

中澤佑介(なかざわ ゆうすけ)先生
金沢医科大学医学部医学科卒業。
「患者さんに近い立場で専門的医療を提供したい」という思いで2021年、なかざわ腎泌尿器科クリニックを開設。
2024年9月、JR金沢駅前に金沢駅前内科・糖尿病クリニック(https://kanazawa-naika.jp/)を開院。
なかざわ腎泌尿器科クリニック
https://www.nakazawa-cl.jp/



