秋に気分が沈みやすいのはなぜ?不調を和らげる5つの工夫を精神科医が解説

朝晩が涼しくなり過ごしやすくなる一方で、「理由のわからない気分の落ち込み」「体が重くだるい」といった不調を感じていませんか?
精神科医・心療内科医・臨床心理士の飯島慶郎先生によると、秋は「日照の減少」「生活リズムのずれ」「夏の疲れ」という3つの条件が重なり、心身に負担がかかりやすい季節です。
本記事では、秋に気分が沈む理由のメカニズムと、今日からできる5つのセルフケアの工夫を分かりやすく解説します。

この記事のポイント:
・秋の不調は「病気とは限らない」:冬ごもりの名残や季節による変化は多くの人が経験する自然な反応。まずは自分を責めないことが大切。
・不調を引き起こす3つの理由:朝の光が減る「日照の減少」、休日と平日の睡眠のズレ(社会的ジェットラグ)、暑さの中で知らずにたまっていた「夏の疲れ」。
・秋を乗り切る5つの工夫:朝の光を浴びる、休日の朝寝坊を平日に分ける、夜の光を減らすなど、無理なく続けられる生活習慣の整え方。

秋になると気分が沈むのはなぜ?心と体に負担がかかる3つの理由

季節によって気分や活動量が変わること自体は、病気ではありません。
フィンランドの住民調査では、8割以上の人が季節による気分や行動の変化を自覚していました。
冬は眠る時間が長くなる、甘いものが欲しくなる、人と会う回数が減るといった変化です。
こうした変化は、食べ物が乏しい冬に備えてエネルギーを蓄え、消費を抑えていた時代の名残ではないかという説もあります。
冬ごもりする動物の準備に似た反応が、人にも弱い形で残っているという考え方です。
こうした体の反応に加えて、秋には気分を沈ませやすい条件が三つ重なります。
日照の減少、生活リズムのずれ、夏の疲れです。順に見ていきます。

理由1:減っていく日照と朝の光が体内時計・気分に与える影響
秋分を過ぎると日の出は遅く、日没は早くなります。
9月初めから11月末までに、東京の昼の長さは約3時間短くなります。
起きる時刻にはまだ薄暗く、帰宅するころにはもう暗いという日が増えます。
こうした日照の変化がまず影響するのは、体内時計です。
体内時計は、朝に目から入る光で毎日合わせ直されます。
そこから十数時間たつと、眠りを促すホルモンのメラトニンが出始め、夜に眠くなります。
夜に明るい光を浴びると、このメラトニンは出にくくなります。
朝は明るく夜は暗いという切り替えがはっきりしているほど、睡眠は安定しやすくなります。
秋は朝の光が減るため、この明暗のメリハリが曖昧になり、寝つきや朝の目覚めが乱れやすくなります。
光は睡眠だけでなく、気分にも関わっています。
健康な人に光の量を測る腕時計型の機器をつけてもらった国内の研究では、光を多く浴びた人ほど気分の落ち込みが少ないという結果でした。
英国の40万人規模の調査でも、日中に屋外で過ごす時間が長い人ほど、気分の落ち込みや疲れが少ない傾向がありました。
ただし同じ英国の別の分析では、日光を浴びる時間が1日1.5時間前後の人で心の不調のリスクが最も低く、それより長い人ではかえってリスクが上がっていました。
浴びれば浴びるほどよいわけではなく、毎日ほどほどの量を浴びることが大切なようです。
ところが秋は、日が短くなるうえに肌寒さで休日の外出も減るため、光を浴びる時間が自然と減ります。
その分、気分や睡眠に影響が出やすくなります。
ただし、米国の成人を対象にした調査では、軽い抑うつの起こりやすさと季節や日照時間に関係は見られませんでした。
日照は秋の不調の要因の一つにすぎず、ここに生活のリズムや夏の疲れが重なります。

理由2:平日と休日の睡眠のズレ(社会的ジェットラグ)と戻りきらない生活リズム
連休などで、寝る時刻と起きる時刻が遅くなった経験のある方は多いと思います。
こうした時間帯のずれは、毎週の休日にも起きています。
平日と休日で睡眠の時間帯がずれる状態を「社会的ジェットラグ」と呼びます。
このずれが生まれやすい背景には、日頃の睡眠不足があります。
日本の睡眠時間は国際比較で最も短く、しかも多くの国と違って女性の方が男性より短くなっています。
家事や育児、介護の負担が一因と考えられています。
平日に削られた睡眠を休日にまとめて取り戻そうとすると、社会的ジェットラグが生まれます。
国内の約3,700人を対象にした調査では、ずれが1時間以上ある人は全体の4割で、30代と40代では女性の方がずれが大きいと報告されています。
このずれは、日中の眠気や気分にも関わります。
日本の働く人約1,400人を対象にした調査では、ずれが2時間以上ある人は1時間未満の人に比べて、抑うつ症状がある人の割合が高いという結果でした。
また、休みそのものが疲れを取るとは限りません。
オランダの働く人を対象にした研究では、休暇で心身の状態がよくなった人は6割で、残りの4割は変化がないかむしろ悪化していました。
日本の大人の夏休みは数日ですが、子どもの長期休みに伴って昼食作りや家族の用事が増えた方も多いでしょう。
「休んだはずなのに疲れている」のは過ごし方や負担の重さによる影響が大きく、決して本人の弱さのせいではありません。
ここで秋の問題が重なります。
夜更かし気味になった子どもの生活に付き合って崩れたリズムを秋に戻そうとしても、日の出が遅くなって朝の光が減っているため、体内時計を朝型に戻しにくくなっています。
これが秋に不調が長引く一因と考えられます。

理由3:涼しくなってから現れる「夏の疲れ」と体調の変化
暑い時期は寝苦しい夜が続き、眠りが浅くなりがちです。
冷房と屋外の温度差や、冷たいものに偏りやすい食事も体に負担をかけます。
それでも夏の間は仕事や家庭の予定が止まらず、疲れが少しずつたまっていきます。
海外の研究をまとめた報告では、気温の高い時期に精神的な不調での入院や救急受診、自殺が増えることが繰り返し示されています。
暑さそのものも、気づかないうちに心への負担になっていると考えられます。
こうしてたまった疲れが表に出てくるのは、涼しくなって体が休息できる状態になってからです。
私の診察室でも、9月から10月にかけて「理由はわからないがだるくて気持ちが上がらない」「夏は乗り切れたのに今になって動けない」と訴える方が増えます。
秋の不調は、頭痛や肩こり・胃の不快感・めまいなど体の症状として出ることもあります。
内科で検査をしても異常が見つからず、あとから季節の影響に気づく方も少なくありません。

今日から実践できる!秋の不調を和らげる「5つの工夫」

ここまでの三つの理由は、日々の過ごし方で和らげることができます。
診察室でお伝えしている工夫と、睡眠の研究者が勧めている方法を合わせて五つ挙げます。

1)朝の光を浴びる(10~15分の散歩や日光浴)
一つ目は、毎朝、日光を浴びることです。
起きたらカーテンを開け、できれば10〜15分ほど外に出てください。
曇りの日でも、屋外は室内よりずっと明るいものです。
朝が難しければ、通勤で一駅分歩く、昼休みや洗濯物を干す時間に外に出るといった形でも構いません。
少しずつ、日中に外で過ごす時間を増やしていきましょう。

2)休日の朝寝坊を平日に分ける(睡眠のズレを防ぐ)
二つ目は、休日にしてしまいがちな朝寝坊を平日に分けることです。
週末に2〜3時間長く寝ているなら、平日の夜に20〜30分ずつ早く寝て補うようにします。
休日に眠りを補いたいときは、朝はいつもの時間に起きて光を浴び、昼寝で補ってください。

3)夜の光を減らす(就寝前の照明やスマホの明るさ調整)
三つ目は、夜の光を減らすことです。
寝る前の1時間は部屋の明かりを落とし、スマートフォンを見る時間を短くしてください。
難しいときは、照明を一段暗くして画面の明るさを下げるだけでも構いません。
朝は明るく夜は暗いという切り替えがはっきりするほど、体内時計が整います。

4)軽い運動を取り入れる(激しい運動は不要)
四つ目は、体を動かすことです。
日本の働く世代約8,200人の調査では、運動習慣のない人は週3日以上運動する人に比べて、社会的ジェットラグも抑うつ症状も約3割多いという結果でした。
激しい運動は要りません。
通勤や散歩で朝のうちに外を歩けば、朝の光も一緒に浴びられます。

5)無理な予定を少し減らす(心から楽しめるものを選ぶ)
五つ目は、予定を減らすことです。
夏の疲れが残る9月から10月は、新しいことを始めるより、続けていることを減らすのに向いた時期です。
義務で入れている休日の予定を一つ減らすだけでも、回復の速さが変わります。
ただし、外の光を浴びる散歩や、心から楽しめる用事までは削らないようにしてください。

まとめ:理由を知って自分を責めず、無理のないペースで過ごそう

秋の気分の落ち込みやだるさは、日光量の変化や積み重なった夏の疲れなどが重なって起こる自然な反応です。
「自分がダメだから」と責める必要はありません。
朝の光を取り入れたり、睡眠リズムを少し整えたりする日常の小さな工夫から、無理なく自分のペースを取り戻していきましょう。

参考文献:
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[執筆者]

飯島慶郎先生
不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック 院長

心療内科医、臨床心理士、総合診療医、内科医、漢方医、産業医など、マルチドクターとして活動。
得意とする分野は「心身症・不定愁訴」に対する漢方薬・向精神薬・心理療法・ケースワークを統合した総合的対人援助。
心身の軽微な不調を入口にクライアントの「人生そのもの」を癒やすことを実践。
近年は特に不登校診療に特化し、多くのこどもたちを改善に導いている。

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック
https://sites.google.com/view/izumo-iijima-clinic

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