経血量が多くて生理痛がひどい・・多くの女性にみられる子宮筋腫について森女性クリニック院長の森先生に伺いました!
生理痛がひどい、経血量が多いといったトラブルに悩む女性も多いと思います。
実はそれ、子宮筋腫のせいかも?
今回は、多くの女性に見られる子宮筋腫について森女性クリニック 院長の森久仁子先生にお話を伺いました。
30%近くの女性が悩む?!子宮筋腫について
子宮筋腫は子宮の筋層内に発生する良性腫瘍で、30歳以上の女性の20~30%にみられ、婦人疾患で最も好発する病気です。
子宮は子宮筋層という筋肉でできており、子宮筋層の両面を膜が覆う3層構造になっています。
内側は子宮内膜という薄い粘膜で、外側の膜を漿膜といいます。
子宮筋腫は、筋腫の発育方向により3種類に分けられます。
1)粘膜下筋腫
子宮内膜直下に発生し、子宮の内側に発育する
2)筋層内筋腫
子宮筋層内に発生し、子宮筋層内に発育する
3)漿膜下筋腫
子宮漿膜直下に発生し、子宮の外側に発育する
子宮内膜は月経周期で増殖や剥離を繰り返しています。
剥離すると月経血として膣から排出されます。
粘膜下筋腫では子宮内膜に子宮筋腫がせり出しており、子宮内膜の表面積が増えるため、子宮筋腫が1~2cmでも月経量がかなり多くなります。
筋層内筋腫では小さいと症状は出ませんが、3~5cm程度に大きくなると、月経量が多くなったり、月経痛がおきたり、さらに大きくなると下腹部にしこりを感じる場合もあります。
漿膜下筋腫は症状が出ないことが多いですが、かなり大きくなると下腹部にしこりを感じたり、下腹部痛・頻尿・便秘などの症状がおきます。
子宮筋腫のリスク因子としては、
・初経年齢が早いこと
・出産経験がないこと
・妊娠回数が少ないこと
・肥満
・アルコールの摂取
などが指摘されています。
子宮筋腫は治療が必要?放置しても大丈夫??
子宮筋腫ができていることに気づかずに放置すると、月経量が増えたり、月経期間が長くなると、鉄欠乏性貧血になる可能性があります。
貧血とは血液の中のヘモグロビンの量が減った状態を指します。
血液検査でヘモグロビンが成人女性で12g/dl未満なら貧血と診断されます。
ヘモグロビンは赤血球の中にあり、酸素を運ぶ役目をしているため、ヘモグロビンが減ると体中が酸素不足になります。
ヘモグロビンを作るのに欠かせない材料が鉄であり、鉄不足でヘモグロビンが作れなくなり生じる貧血を、鉄欠乏性貧血といいます。
鉄欠乏性貧血では体の組織が酸素不足になるため、疲れやすい・息切れがする・めまい・顔色が悪い・頭痛・朝起きるのがつらいといった症状があらわれます。
酸素を全身に運ぶために心臓が過剰に働くことにより、坂道や階段で息切れがしたり、慢性化すると心不全になることもあります。
また、子宮の外側にできた漿膜下筋腫がかなり大きくなると、周りの臓器を圧迫する症状が出現します。
膀胱を圧迫することで尿が出にくくなったり、尿管を圧迫して水腎症を引きおこす場合があります。静脈の血管が圧迫され血の流れが悪くなり、血栓ができることによる静脈血栓塞栓症を引き起こすこともあります。
内診に抵抗があっても大丈夫?子宮筋腫の診断方法は??
子宮筋腫は膣からアプローチする超音波検査(経膣超音波検査)で診断します。
経膣超音波検査は細い棒状のプローブを膣に挿入しておこなう、痛みがほとんどない侵襲の少ない検査です。
性交渉が未経験であれば痛みが強くなるため、肛門からアプローチする超音波検査をおこなう場合もあります。
膣からアプローチする超音波検査と同じくらい正確に診断でき、痛みはさほどなく受けることができます。
いずれの超音波検査も内診のスタイルであり、抵抗感がある場合には、お腹の上から機械をあてる超音波検査になります。
正確性に差があるため、超音波検査の方法は医師と相談しましょう。
詳細が必要であれば、MRI撮影や子宮鏡検査などをおこなう場合もあります。
子宮筋腫と診断されたら・・・治療方法は?
治療には手術と薬があります。
手術は子宮を摘出する手術と、子宮筋腫だけを摘出する手術があります。
またお腹を切る開腹手術と、お腹に小さな穴をあけておこなう腹腔鏡手術があり、大きさや発生部位により決定します。
子宮筋腫を根本的に治す薬はありませんが、薬で子宮筋腫を小さくしたり、月経にまつわる症状を軽くすることができます。
薬は月経を止める偽閉経療法がおこなわれています。
この治療方法では女性ホルモンが少なくなるので、6ヶ月が上限です。
治療中に子宮筋腫は縮小しますが、治療を中止すると元の大きさに戻ってしまいます。
このため、薬による治療は、手術前に子宮筋腫を小さくしたい場合や、閉経が近い年齢のかたの一時的な治療としておこなわれます。
また、女性ホルモンの少ないピルを内服することで、子宮筋腫が大きくならず、月経の症状が軽減することもあります。
子宮筋腫は、30歳以上の女性の約4人に1人できるといわれるように頻度が高い疾患であり、症状に慣れてしまっているなど、気づかず過ごす人も多いです。
筋腫を指摘されても、血液検査で貧血がなく、日常生活に支障を来していなければ、年に1回の定期検診で問題ありません。
子宮筋腫の発生や病態には、女性ホルモンが深く関わっていることが知られています。
子宮筋腫は初経前には発症せず、ホルモン分泌が活発な性成熟期に発症・増大しますが、閉経後は徐々に縮小します。
子宮筋腫の位置や大きさにより、不妊症や不育症の原因となる場合もあります。
治療するかどうかやどの治療を選択するかは、子宮筋腫の大きさや形状・部位・月経の量や期間・貧血の有無・年齢・将来妊娠を希望するかどうか・妊娠を希望する時期・他の疾患の有無などを考慮して選択するため、一人ひとりにあわせたオーダーメイド医療になります。
同一人物でもおかれている状況が異なれば、治療法が変更になる場合もあります。
セルフチェックも重要。気になる方は婦人科へ
子宮筋腫は、セルフチェックも重要になります。
・下腹部にしこりが触れる
・いつも月経量が多い
・血液検査で貧血を指摘された
場合など、気になる症状があるときはは、婦人科を早めに受診しましょう。
月経は毎月発来するため、貧血を治療しなければますます悪化してしまいます。
さらに慢性的に月経量が多いと、その環境に慣れてしまい、月経が異常であることに気付かない場合もあります。
月経量が多いかどうかの判断は、
・昼でも夜用ナプキンを使う日が3日以上ある
・普通量のナプキンが1時間もたない
などです。
また、レバーのような血の塊が混ざることもあります。
日頃から月経の状態をチェックするように心掛けましょう。
上記のような月経ではなくても、徐々に月経量が増えている場合は、婦人科の受診をお勧めします。
子宮がん検診の際に、超音波検査が可能な場合もありますので、相談してみてもいいでしょう。
[執筆者]
森久仁子先生
産婦人科専門医、医学博士
大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局。
同大学産婦人科学講座助教、和歌山労災病院をへて、平成25年和歌山市に森女性クリニックを開院。
プライバシーに配慮したクリニックで、産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。
森女性クリニック
https://www.mori-ladies.com/