
外見至上主義「スペ120」痩せ信仰に振り回されてない?大切なのは「生きやすさ」
「あの子はスペ125らしい、めっちゃ細くてかわいい!」
「スペ120達成したー」
「現在スペ116・・・120まであと少し、ガンバロ」
最近、SNSでこんな言葉を見かけたことはありませんか?
「スペ〇〇」とは、スペック値が元になった言葉で、「身長から体重を引いた数値」を表し、最近SNSなどでよく見かけます。
たとえば、身長160cmで体重40kgなら、「160−40=120」で「スペ120」というわけです。
一見、ただの数字の遊びのように見えるこの言葉。
でもその裏には、若者を中心に広がる「痩せていること=美しい」という強迫観念や、ルッキズム(外見至上主義)への同調圧力が潜んでいるのではないでしょうか。
今回は、「スペ〇〇」ブームの背景と、その危険性について考えたいと思います。
「スペ〇〇」という痩せ信仰の記号
かつては「シンデレラ体重(身長(m)²×22×0.9や身長(m)²×20×0.9で計算)」「モデル体重(BMI18~17を目指す)」などが若者の間で理想とされることがありました。
しかし現在は、それがさらに簡略化され、「スペ120」「スペ125」といった簡単な計算式で「細さ」を表現・比較する文化がSNSを中心に広がっています。
問題は、それが単なる数値遊びではなく、
「細ければ細いほど可愛い」
「スペ120未満は神」
などといった、極端な痩せ信仰の評価軸になっていることです。
それ、本当にいいこと?
たとえばスペ120、身長160cmで体重40kgというのは、BMIで言うと15.6前後で、明らかに「低体重(やせすぎ)」の部類に入ります。
成長期の10代や、女性ホルモンのバランスが重要な20代でこのような体重を目指すことは、
・生理不順・無月経
・骨密度の低下(将来の骨粗しょう症リスク)
・摂食障害(過食・拒食など)
・免疫力の低下
・集中力や気力の低下
・髪や肌のトラブル
などのリスクやトラブルを招く危険性があります。
つまり、「スペ〇〇で可愛い」「細くてうらやましい」「憧れの体型」ともてはやされている裏で、深刻なダメージが蓄積されている可能性もあるのです。
なぜ「痩せ=美しい」が広まるのか?
このような文化の背景には、SNSの「映え」や「いいね」を求める心理、加工アプリで簡単に体型が細く見せられる環境、さらにはメディアやアイドルによるスリム体型の称賛など、ルッキズムの社会的構造があります。
例えば、最近はインフルエンサーやSNSで人気を集める方のの多くが「痩せていること」を前提にファッションやメイクを紹介し、コメント欄には「細すぎて憧れる」「脚が棒みたい!」などの賞賛があふれています。
また、アイドルや芸能人などへの憧れや、ちょっとでも太ると「ヤバくない?」「劣化した」「デブった」などの誹謗中傷を目にすることも。
その結果、「太ったら評価されない」「細くなければ自信が持てない」という思い込んでしまう方が多くなっているようです。
気づかぬうちに、「自分の価値=数字」で測ってしまう風潮が若者の自己肯定感を削っています。
他人と比べない!「ちょうどいい自分」は、自分が決める
「絶対にスペ120になりたい」
「この数字まで痩せたら自信が持てる」
そう思っていたとしても、それは本当にあなたに合った理想の姿でしょうか?
数字に囚われてしまうと、どこまでいっても満たされず、より小さな体、より少ない数字を目指し続けてしまう危険性があります。
実際、「スペ120は努力不足」「爆美女はみんなスペ125」など、数字がエスカレートしている傾向も見られます。
数字はどこまで行ってもただの数字。
骨格がしっかりしている人、筋肉質な人、運動をしない人など、さまざまな条件によって、同じ体重でもスタイルはさまざま。
本当に大切なのは数字ではなく、健康的で、日常生活に支障がなく、自分らしく過ごせる身体であること。
・きちんと食べられて
・ちゃんと眠れて
・好きな服を着て出かけられる
そうした「生きやすさ」の方が、よほど美しさにつながっていきます。
SNSの情報、全部信じなくていい
「痩せなきゃ」「この体型じゃ可愛くない」
そんな気持ちが芽生えたら、いったんスマホを置いて、自分の心と対話してみてください。
「スペ〇〇」で自分を比べるより、「わたしにちょうどいい心地よさ」を探すほうが、よほど価値があるのです。
スペ値以外にも、
「イエベじゃなくてブルベが良かった」
「骨ストはごつく見えてヤダ」
など、SNS上ではどうしても数値化やカテゴライズによるブームが起こりがち。
自分について考えるきっかけになったり、アイテム選択の際の参考になったりするぐらいならいいのですが、それらに振り回されないでほしいです。
SNSの世界は、あなたを取り巻く世界のたった一部でしかないのです。
スマートフォンを持つのが当たり前になり、情報があふれ、その伝達スピードはこれまでになかったものとなっています。
世界中の情報が入手できたり、分からないことをすぐ調べられたり、恩恵ももちろんたくさんありますが、それらに踊らされるのではなく、一度しっかり自分で考えてみましょう。
その情報はあなたに必要なものですか?
その情報はあなたのためになりますか?
[執筆者]
船木 彩夏
化粧品メーカー研究員
[出演情報]
2023.12.2 TBSラジオ:井上貴博 土曜日の「あ」
<資格>
・サプリメントアドバイザー
・健康管理士上級指導員
・健康管理能力検定1級
・日本化粧品検定 特級コスメコンシェルジュ
[監修]キレイ研究室編集部