日照時間が睡眠に影響する?快眠のポイントについて林外科・内科クリニック理事長の林裕章先生にお伺いしました

日照時間の減少、気温や湿度の低下・・・急な環境変化に体も戸惑い気味?
この時季の快眠のポイントについて、林外科・内科クリニック理事長の林裕章先生にお話を伺いました。

日照時間が減少する秋の夜長が睡眠に影響する?

日照時間の減少は心と体の両方に影響を与えます。
秋になると日光を浴びる時間が短くなることは、私たちの気分や睡眠に想像以上の影響を及ぼします。
・セロトニンの減少
太陽光を浴びると、脳内では「セロトニン」という神経伝達物質が作られます。
セロトニンは精神を安定させる働きがあるため、「幸せホルモン」とも呼ばれます。
日照時間が減るとセロトニンの分泌が減少し、なんとなく気分が落ち込んだり、意欲が低下したりすることがあります。これが「季節性感情障害(冬季うつ)」の原因の一つともいわれています。
・体内時計のズレ
セロトニンは、夜になると睡眠ホルモンである「メラトニン」に作り替えられます。
日中のセロトニン分泌が少ないと、夜のメラトニン分泌も不十分になり、体内時計が乱れやすくなります。
対策としては、意識して朝日を浴びることが非常に重要です。
朝起きたらまずカーテンを開け、15~30分ほど太陽の光を浴びる習慣をつけましょう。
曇りの日でも効果はあります。

気温が急に変化する時期だから・・・快眠のための寝具や環境のポイント

快適な「寝室環境」と「寝具選び」が質の高い睡眠の鍵です。
気温が下がり始める秋は、寝具やパジャマをうまく調整して、快適な睡眠環境を整えましょう。
理想の寝室環境
・温度:20~25℃前後(季節・年齢によって違いあり)
・湿度:40~60%
・光:就床1~2時間前から照度を落とし(間接照明・暖色系)、起床時は即カーテン全開。
・寝る前に少し換気をして、新鮮な空気を取り込むのもおすすめ。
乾燥が気になる場合は加湿器を使いましょう。
寝具のポイント
・掛け布団:軽くて保温性・吸湿放湿性に優れた羽毛布団や羊毛布団がおすすめです。薄手の布団やタオルケットを重ねて、寒さに合わせて調整できるようにすると便利です。
・電気毛布:就床前の予熱のみが無難。つけっぱなしは深部体温低下を妨げ、睡眠を浅くしやすい。
・敷きパッド:夏用のひんやり素材から、保温性のある起毛素材などに切り替えましょう。マットレスや敷布団に湿気がこもるのを防ぐ役割もあります。
・パジャマ:睡眠中の汗をしっかり吸収し、体温調節を妨げない綿やシルクなどの天然素材が最適です。体を締め付けない、ゆったりとしたデザインを選びましょう。

快眠に役立つ睡眠前や朝すっきり目覚めるためのストレッチ・ヨガ・エクササイズ

就寝前は「リラックス」、朝は「覚醒」を目的とした運動が効果的です。
【夜】快眠のためのリラックスストレッチ・ヨガ
就寝1~2時間前に、心身の緊張をほぐす軽い運動を取り入れましょう。
呼吸を止めず、ゆっくりと気持ちよく伸ばすのがポイントです。
・腹式呼吸:仰向けになり、お腹に手を当てて、鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、口からゆっくり吐きながらお腹をへこませます。副交感神経が優位になり、リラックスできます。
・首・肩のストレッチ:ゆっくり首を回したり、肩を上げ下げしたりして、日中の緊張をほぐします。
・簡単なヨガのポーズ:「猫の伸びのポーズ」や「ガス抜きのポーズ」など、体を優しく伸ばすポーズがおすすめです。
注意点:就寝直前の激しい運動は、交感神経を興奮させてしまい、かえって寝つきを悪くするので避けましょう。
【朝】すっきり目覚めるための覚醒エクササイズ
朝の運動は、交感神経を刺激して体を活動モードに切り替えるのに役立ちます。
・朝日を浴びながらのストレッチ:カーテンを開けて太陽の光を浴びながら、手足をぐーっと伸ばしましょう。
体内時計がリセットされます。
・軽いウォーキングやラジオ体操:血行が促進され、脳と体がシャキッと目覚めます。

香りでケア?快眠や朝の目覚めに導くアロマテラピー

香りは脳に直接働きかけるため、手軽で効果的なセルフケアです。
心地よい香りは、自律神経のバランスを整え、心身の状態をコントロールするのに役立ちます。
【夜】リラックスしたい時におすすめのアロマ
副交感神経を優位にし、心と体を落ち着かせてくれる香りを選びましょう。
・ラベンダー:鎮静作用の代表格。不安や緊張を和らげます。
・カモミール・ローマン:リンゴのような甘い香りで、心を穏やかにします。
・サンダルウッド(白檀):深く落ち着いた香りで、瞑想にも使われます。
【朝】シャキッと目覚めたい時におすすめのアロマ
交感神経を刺激し、気分をリフレッシュさせてくれる爽やかな香りがおすすめです。
・レモン、グレープフルーツ:柑橘系の香りは、心身をリフレッシュさせ、前向きな気持ちにさせてくれます。
・ローズマリー:集中力や記憶力を高めると言われ、クリアな思考を助けます。
・ペパーミント:清涼感のある香りで、眠気をすっきりと吹き飛ばします。
アロマディフューザーを使ったり、ティッシュやコットンに1~2滴垂らして枕元に置いたりするだけで、手軽に楽しめます。
皮膚には直接塗らないようにしてください。

しっかり眠るのに重要な栄養素?摂っておくべき食材は?

トリプトファン(メラトニンの原料)理論上、良好な睡眠に有利な成分です。
トリプトファンは、大豆製品(豆腐、納豆)、乳製品(牛乳、チーズ)、卵、魚、肉、バナナ、ナッツ類などに豊富に含まれています
他にGABA・グリシン・マグネシウム・ポリフェノールなどの報告がありますがこちらの効果は限定的と考えられます。
逆に、就床6時間以内のカフェイン、就床直前のアルコールは睡眠を浅くし中途覚醒を増やします。
食事もできるだけ就寝3時間前までに済ませましょう。

秋は心身のバランスが揺らぎやすい季節ですが、生活習慣を見直す良い機会でもあります。
今回ご紹介したポイントを参考に、ご自身に合った方法を試してみてください。
質の高い睡眠は、最高の自己投資です。
心地よい眠りで心と体をしっかりと休ませ、健やかな毎日をお過ごしください。
もし、睡眠に関する悩みが続くようでしたら、一人で抱え込まず、お近くの専門医にご相談ください。

執筆者

林裕章先生
林外科・内科クリニック理事長

国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。
現在、外科医の父と放射線科医の妻と、全身を診るクリニックとしての有床診療所および老人ホームを運営している。
また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、また医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。

林外科・内科クリニック
https://hayashigekanaika-cl.com/

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