
膀胱炎になったらどうすればいい?予防策とセルフケアについて林外科・内科クリニック理事長の林裕章先生にお伺いしました
女性がかかりやすいといわれる膀胱炎。
特に夏場に増えるともいわれていますが、どうして?
膀胱炎にかかるとどんな症状があって、どう対応するべき?
林外科・内科クリニック理事長の林裕章先生にお話を伺いました。
どうして夏に増えて、女性はなりやすいの?膀胱炎について
膀胱炎は特に夏になると多く見られる症状です。
夏は汗をたくさんかくことで体内の水分が失われやすく、尿の量が減少します。
尿が少ないと膀胱内の細菌が洗い流されずにとどまりやすくなり、膀胱炎を引き起こしやすくなってしまうのです。
夏はレジャーや旅行などでトイレを我慢しがちな場面が増えることも、原因のひとつです。
また、女性は膀胱炎になりやすいといわれています。
これは女性は尿道が短く、肛門や膣に近いため、細菌が膀胱に到達しやすい構造になっています。
さらに、月経や性交渉、閉経後のホルモン変化も発症リスクを高めます。
どうやって予防するべき?
膀胱炎の予防方法としては、十分な水分摂取で尿をしっかり出すことが大切です。
トイレを我慢しないよう、尿意を感じたら、こまめにお手洗いにいきましょう。
デリケートゾーンを清潔に保つことも重要となります。
排尿後は前から後ろ(尿道口から肛門へ)へ拭くことも推奨されます。
後ろから前に拭くと、肛門の細菌(大腸菌など)が尿道に入り込む可能性があり、膀胱炎の原因となることが考えられます。
これって膀胱炎なの?膀胱炎を発症したらどうすればいい??
膀胱炎の自覚症状としては、排尿が頻回になったり、排尿時にしみる感じ(排尿痛)、残尿感、尿の濁りなどが挙げられます。
初期には自覚がないこともあります。
初期では症状が軽く、「トイレが近いだけ」と思って放置することもありますが、放置は禁物です。
膀胱炎を発症したら、まずは水分を多めにとり、頻回に排尿することで症状が軽快することもあります。
ただし、1~2日で改善しない場合や、血尿・発熱・強い痛みがある場合は、早めにかかりつけ、もしくは泌尿器科を受診してください。
セルフケアでの対処法としては、まずトイレを我慢しないこと、発症したら十分な水分摂取により細菌を洗い流すのが一番です。
市販薬は一時的に症状を和らげることは可能ですが、細菌を殺す力はないため、抗生物質が必要な場合は病院での治療が必須です。
自己判断での使用は避け、医師の指示に従うことが重要です。
1~2日で改善しない・血尿が出る・発熱がある・排尿がつらくて生活に支障がある場合などは泌尿器科を受診することが推奨されます。
トイレが近くなるだけ・・・ではない。膀胱炎を甘く見てはいけないワケ
重症化する可能性もあり、膀胱炎が進行すると腎臓にまで感染が及び、急性腎盂腎炎などを発症する可能性があります。
高熱・背中の痛み・寒気・吐き気などを引き起こすことがあり、早期の治療が重要です。入院治療が必要になることもあります。
膀胱炎は再発しやすい病気でもあります。
特に女性は解剖学的な特性に加え、体調不良、性交渉、トイレの我慢など、日常生活のちょっとしたことが引き金になるためです。
予防策を実践し、自己ケアに努めることで再発リスクを減らすことができます。
膀胱炎かなと思ったら、食事にも気を付けて
食事面でのアプローチでは、膀胱を刺激する食品や飲み物カフェインを多く含む飲料(コーヒー、緑茶など)、アルコール(脱水と膀胱への刺激)、香辛料や刺激物、糖分の多い飲料(細菌の栄養源になりうる)などは、症状を悪化させる可能性があります。
逆に、水分を多く含む食事(野菜スープ、みそ汁など)、利尿作用のある食材(きゅうり、スイカなど)、抗炎症作用を持つビタミンCを多く含む食品(柑橘類、ピーマン、ブロッコリー)などが予防や軽症時には役立つ可能性があります。
セルフケアの一環として、取り入れてみてもいいでしょう。
しかし、症状が続いたり、悪化したりする場合は、受診しましょう。
夏に増えてしまう膀胱炎ですが、適切なケアで予防することもできます。
膀胱炎の症状やケアについては、個々の症状や健康状態に応じて医師と相談し、適切な対応をすることが大切です。
執筆者
林裕章先生
林外科・内科クリニック理事長
国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。
現在、外科医の父と放射線科医の妻と、全身を診るクリニックとしての有床診療所および老人ホームを運営している。
また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、また医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。
林外科・内科クリニック
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