[前編]あなたは香りのある物が好きですか?香りをまとう文化はどうやって発展したかしっていますか?|キレイ今昔物語

キレイ研究室は中立の立場から「キレイ」を発信しています。
今回は化粧品開発者の目線で、香りの歴史についてにフューチャーします。

あなたは香りのある物が好きですか?

今回は、香りはどのように楽しまれてきて発達したのか、香りの持つ文化や背景についてお話ししたいと思います。

髪のニオイをごまかすため・・・そんな中で発達した「香」の平安貴族の楽しみ方とは?

日本に『香』が入ってきたのは、仏教と同じく6世紀ごろで、仏前を清めるために伝わったといわれています。
そして、香りを楽しむようになったのは平安時代の貴族を中心とした文化から。
平安時代と聞くと、十二単をまとい、大垂髪(おすべらかし)と呼ばれる美しい黒髪を長く後ろに垂らした姫を思い浮かべる方も多いかもしれません。
実は、この時代は姫のような貴族であっても洗髪は年に1度だったといわれています。
あとは「ゆする」と呼ばれるお米のとぎ汁や丁子油・椿油といった油を髪につけるだけ!
長い髪を持つ当時の女性たちは、シャンプーもない時代にどのように臭いのケアをしていたのでしょうか。
目には目を、歯には歯を、ニオイには匂いを・・・という意味なのでしょうか、当時の貴族たちは「香」を使っていました。
着物や髪に焚きしめたり、香枕(枕の中で香を焚くもの)を使って寝ている間にも髪に匂いを移したり…。
香の文化はどんどん発展し、四季の風情や個人の好みの香りを調合し、その技能を競ったり、薫物合わせを楽しんだり、貴族の文化として発展していきました。
もちろん、香りは恋とも深い関わりが。
香りと恋について歌われた、古今和歌集・伊勢物語の第60段「花橘」に収められている和歌を紹介したいと思います。
『五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする』
5月を待って咲く花橘の香りを嗅ぐと、昔の思い人(この歌では妻だそう)の袖の香りを思い出す…ということの歌。
ちょっと前に流行った「香水」の歌詞ではないですが、昔の恋人が使っていた香りが漂ってきたときに、昔の恋人を思い出す…という経験をされる方は多いのかもしれません。
今も昔も、そして男性にも女性にとっても、変わらずに香りと恋は深い関係でつながれているようです。

憧れのフランスも?香水は体臭のニオイを隠すために発達した?!

香水といえば、有名なフランスのブランドをイメージされる方も多いと思います。
おしゃれな香水は、花の都と呼ばれるパリや歴史ある王室を有し、現在もファッションの最先端であるフランスにはピッタリな感じもしますよね。
ですが、実は、15世紀ごろにフランスで香水が発達したのも、当時の人々が年に数えるほどしか入浴しなかったため(入浴すると病気になりやすいと信じられていた)、その体臭を隠すためだったといわれています。
さらに、きらびやかなドレスも月に1度洗濯すればよい方だったそうで、カビが生えていることも珍しくなく、相当なニオイがしたため、やはり香水を振りかけるのが必須だったとか…
エレガントに思える香水が、そもそも体臭やドレスのかび臭さをごまかすためのものだったかもしれないなんて、あまりにもイメージとかけ離れていてびっくり。
体臭とそれをごまかすための香水でむせ返るようなニオイをさせていたかもしれないベルサイユ宮殿を想像すると、なんともいえない気分になってしまいますね。

現代でも、香水を使いこなし、香りまでを自分の魅力として纏っている女性を見ると、おしゃれの上級者という感じがしますよね。
しかし、お香も香水も、もとはニオイのマスキングから発達したものだったとは・・・。
海外では自分をイメージする相応しい香りとして、(Signature Scent:シグネチャーセント)をお持ちの方も多く、常に香りを身に着け楽しむ方が多い中、日本では、香水を日常的に使われるという方は、あまり多くないですよね。
香りを楽しむにしても、香水ではなくシャンプーやせっけんのほのかな香りが好きという方が多いのではないでしょうか?
なぜ、日本人はあまり強い香りを好まないのか?
後編では、その辺りにスポットを当ててみたいと思います!

[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]

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