SNSで話題のマンジャロで痩せる?海外の研究結果をもとにサプリメントアドバイザーが解説

「GLP-1」という言葉を、SNSや美容医療の広告などで目にする機会が増えました。
痩せる薬として話題になることもありますが、本来GLP-1受容体作動薬は、糖尿病や肥満症などに対して、医師の管理のもとで使われる医薬品で、美容目的で気軽に使うものではありません。
吐き気、下痢、便秘といった副作用なども報告されています。
そんなGLP-1について、海外で新しい研究が報告されました。
海外の報告を中心に、健康管理上級指導員でサプリメントアドバイザーの船木彩夏さんが解説します。

GLP-1系の薬を使って体重が減った人は、疾患のリスクも下がるの?

研究では、アメリカの医療記録と保険データをもとに、2021年1月から2024年6月までにGLP-1系、またはGLP-1/GIP系の薬を使い始めた約9万人を分析しました[1]。
対象者の平均年齢は57.5歳、平均BMIは34.7で、約6割に2型糖尿病がありました。
その結果、薬を始めてから1年以内にBMIが15%以上低下した人では、BMIの低下が5%未満だった人と比べて、いくつかの病気のリスクが低い傾向がみられました。
たとえば、変形性関節症は37%、慢性腎臓病は30%、閉塞性睡眠時無呼吸は69%、それぞれ有意に低かったと報告されています。
今回の研究は、実際の医療データを振り返って調べた観察研究で、「GLP-1を使用したから病気のリスクが下がった」というわけではありません。
体重が減ったことと健康リスクの低下に関連はみられても、「薬そのものが直接リスクを下げた」とまでは言い切れないのです。
ただ、体重が増えると膝などの関節に負担がかかりやすくなったり、睡眠時無呼吸や腎臓・心臓の病気と関係したりすることはよく知られています。
今回の研究は、肥満症で健康トラブルを抱えた人が、GLP-1系の薬を使うことにより、「どれくらい体重が減り、それを維持できたか」ということが健康面に影響することが示唆された報告といえます。

リバウンドもある?GLP-1の使いかた

一方で、現実の使われ方には課題もあります。
GLP-1は「始めれば終わり」の薬ではなく、副作用、費用、通院、生活習慣、減量後の維持など、長く向き合う必要がある治療です。
GLP-1などの薬を使った新しい体重管理法は、これまで行われてきたカロリー制限や運動といった従来の体重管理方法より短期で顕著な体重減少効果が期待されると言われています。
しかし、約半数の人が1年以内にGLP-1を用いた治療を中断していたとの報告があります[1]。
しかもGLP-1の使用を中止すると、食事制限や運動といった行動的な体重管理プログラムを終了した場合と比べて、約4倍の速さでリバウンドしてしまう傾向があったとのこと[2]。
つまり、薬で体重が減ったとしても、その後の食事・運動・生活リズムをどう整えるかが大切です。

マンジャロは日本で『痩せ薬』として使える?知っておきたい適応の違い

日本でも、肥満症治療薬として使えるGLP-1受容体作動薬はあります[3]。
ですが、治療の対象となるのは「医学的に減量が必要な肥満症」の人です。
なお、SNSでよく名前が挙がる「マンジャロ」は、チルゼパチドを有効成分とする薬を指します。
日本では、同じチルゼパチドでも、2型糖尿病治療薬としてのマンジャロと、肥満症治療薬としてのゼップバウンドは区別されています。
そのため、「マンジャロ=誰でも美容目的で使える痩せ薬」と考えるのは適切ではありません。
低体重や普通体重の人が、美容や痩身目的で使う薬ではないのです。
吐き気、下痢、便秘などの消化器症状のほか、低血糖や急性膵炎など注意すべき副作用があることもわかっています。
また、GLP-1関連薬をめぐる安全性の話題としては、セマグルチドの使用と、NAION(非動脈炎性前部虚血性視神経症)というまれな視神経疾患との関連を指摘する報告もあります[4]。
将来的な影響は分かっていないところも多く、肥満症の方が体重を減らすメリットと副作用のデメリットを比較した結果、使用して体重を減らしたほうが良いと判断される場合に使用されるものなのです。

マンジャロは誰でもダイエットできる魔法の薬ではありません

GLP-1は、単なる『ラクして痩せる薬』ではなく、肥満症に伴う健康リスクと向き合うための治療選択肢のひとつ。
健康上の必要がない人が、痩身目的で使う薬ではありません。
また、GLP-1関連薬をめぐっては、供給面の問題も指摘されています。
厚生労働省は、2型糖尿病治療薬として承認されているGLP-1関連薬が、美容・痩身目的など本来の治療目的以外で使用されている実態があるとし、供給を上回る需要によって一部製剤で限定出荷が生じ、本来必要とする2型糖尿病患者への供給に支障が出る懸念があると注意を促しています[5]。
話題性だけで判断せず、「自分に必要な医療なのか」を医師と確認することが何より大切です。

美容や健康のために体重を整えたいと考える人は多いもの。
けれど、薬を使う前に、睡眠、食事、運動、ストレス、血液検査の結果など、自分の体を広く見直すことも忘れないようにしたいですね。

※本記事は、海外研究や公的資料をもとに一般向けに解説したもので、医薬品の使用を推奨するものではありません。
治療の必要性や薬の使用については、必ず医師にご相談ください。

参考文献
1.Wilding J, Anderson LJ, Malik R, Bellows B, Sagendorf T, Dluzniewski P, et al. First-year BMI change after GLP-1-based treatment initiation and risk of subsequent adverse clinical outcomes. Presented at: European Congress on Obesity 2026; 2026 May 12-15; Istanbul, Turkey.
2.West S, Scragg J, Aveyard P, Oke JL, Willis L, Haffner SJP, et al. Weight regain after cessation of medication for weight management: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2026;392:e085304. doi:10.1136/bmj-2025-085304.
3.日本肥満学会. 肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント. [Internet]. 2025 Apr 10[cited 2026 May 29]. Available from: https://www.jasso.or.jp/data/Introduction/pdf/academic- information_statement_20250410.pdf
4.Hathaway JT, Shah MP, Hathaway DB, et al. Risk of nonarteritic anterior ischemic optic neuropathy in patients prescribed semaglutide. JAMA Ophthalmol. 2024;142(8):732-739. doi:10.1001/jamaophthalmol.2024.2296.
厚生労働省. GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用について. 医薬品・医療機器等安全性情報. 2023;406:6-9.[Internet].[cited 2026 May 29]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001177708.pdf

[執筆者]

船木 彩夏
化粧品メーカー研究員

[出演情報]
2023.12.2 TBSラジオ:井上貴博 土曜日の「あ」

<資格>
・サプリメントアドバイザー
・健康管理士上級指導員
・健康管理能力検定1級
・日本化粧品検定 特級コスメコンシェルジュ

[監修]キレイ研究室編集部

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