美味しくておしゃれなエナジードリンク。毎日飲んだり、子どもに飲ませても大丈夫?
各メーカーからさまざまなエナジードリンクが販売され、流行しています。
20~40代の男性に特に人気が高いそうですが、フレーバーや効果を女性向けにアレンジした製品が販売されるなど、ますます人気は高まっている模様。
最近では、塾やスポーツ・部活に勤しむ小中学生の間でも好まれているという話も聞きます。
カフェインが含まれるコーヒーやお茶は苦味が強く、子どもが好む味ではありません。
しかし、エナジードリンクはジュースのような味で、パッケージもおしゃれ。
がんばる大人が飲むドリンクのイメージですが、所謂栄養ドリンクのような「オヤジ臭さ」もなく、スポーツドリンクのパワーアップ版のようなイメージで、サッカーや野球などを習う子どもたちの間でも人気を集めているといわれています。
しかし、エナジードリンクに含まれる一般的な成分はカフェイン。
実は、過剰なカフェイン摂取による健康被害が、国内外でも多数報告されているって知っていますか?
エナジードリンクが心臓に悪影響! 命の危険もあるって本当?
2019年5月29日、アメリカの心臓学会誌:Journal of the American Heart Associationに、エナジードリンクには心機能異常や血圧変化のリスクを高める可能性があるとの記事が掲載されました(出典:J. Am. Heart Assoc.8(11):e011318(2019))。
18~40歳までの34人の健康なボランティアに、カフェイン含有量が300mgのエナジードリンク(他にタウリン、植物エキス、ビタミンB群などが含まれる)またはプラセボ飲料(ライムまたはチェリー味の炭酸飲料)32オンス(約1ℓ)をブラインドでランダムに割り当て、1時間以内に飲んでもらい、心電図でボランティアの心臓の動きを30分おきに計測。
すると、エナジードリンクを摂取したグループに、摂取後から4時間ほどQT間隔(心臓の心室が再び拍動するのに要する時間)が若干長くなることが発見されました。
QT間隔が乱れると、不整脈を起こす危険性があり、場合によっては生命を脅かす可能性も。
また、血圧も4~5mmHgほど上昇するとのこと。
この結果を受け、パシフィック大学の薬学実務教授であるSachin A. Shah医師は「エナジードリンクの摂取とQT間隔と血圧の変化の関連を発見した。さまざまなエナジードリンク中の成分またはその組み合わせの調査が必要である」と、述べています。
薬学部教授であるKate O’Dell博士も「エナジードリンクは大学生を始めとする若者のうち30%が定期的に引用しているとのデータがあり、これは緊急治療室へ運ばれる若者の死亡数の増加につながっている。今回は健康なボランティアが対象であったが、そうでない人にとってはさらに危険性が高い可能性があり、QT延長症候群や高血圧の人に対し医師は『リスクがあることと自分で制限する必要があること』を知らせるべきである」と述べています。
実際に、2011年には710mLのエナジードリンクを2本(カフェイン量は約480mg)飲んだ米国の14歳の少女が、カフェインの過剰摂取が原因の心臓の不整脈により亡くなるという事故が起きています。さらに、2017年にも米国の16歳の少年(心疾患の既往歴もなく極度の肥満体でもない)がカフェラテとエナジードリンクなどを立て続けに飲んだ結果、同様に不整脈を起こし亡くなっています。
ジュースのように飲めてしまうエナジードリンクですが、生命にかかわるような体への強い影響があるということを、親も子どももしっかり知っておくことが重要です。
また、エナジードリンクを使用する青年期(13~17歳)や若年成人(18~25歳)は、飲まないグループと比較すると、過去30日の間に家庭や学校、職場などでトラブルが発生する可能性が3.12倍高いとの報告もあります(出典:Clin Toxicol (Phila). 2013 Aug;51(7):557-65.)。
これらはコーヒーや紅茶など、カフェインを含む一般的な飲み物では見られず、エナジードリンクの飲用は、行動への悪影響を与える可能性が考えられます。
WHOは、2014年に青少年や小児へのエナジードリンクの販売規制を提唱しています。
実際に規制を始めた国もあり、リトアニアでは、18歳未満へエナジードリンクを販売されることが禁止され、販売者には罰金刑が課せられるとのこと。
英国のイングランド地域でも法案化が検討され、販売を自粛している店もあるそうです。
日本では現在このような検討はなされていませんが、酒類のように売り場を分けるなど、未成年が手に取りにくい環境を整えるなどの対策は必要なのかもしれませんね。
カフェイン摂取量の目安は? どのくらいエナジードリンクを飲んでも平気?
一日当たりのカフェインの摂取量に関しては、FESA(欧州食品安全機関)が2015年に公表した意見書によると
・成人:体重1kgあたり5.7mg
・妊婦と授乳婦:200mg以下だと安全性の懸念が生じないとされる
・未成年:体重1kgあたり3mg
とされおり、成人で体重が60kgだとすると342mg、体重が30kgの子どもだとすると90mgまでとなります。
カフェインはコーヒーやお茶などにも含まれることを留意する必要があるでしょう。
一般的なエナジードリンクに含まれるカフェイン量は1缶(350mL)当たり100~150mg前後となっており、子どもが飲むには適切ではないことがわかります。
最近はスポーツクラブや塾通いで大変な子も多いと思いますが、エナジードリンクを飲ませることは止め、3度の食事と十分な睡眠で体調を管理するようにしましょう。
大人が飲む場合であっても、一日に何本も飲むようなことは避け、適度に楽しみましょう。
エナジードリンク摂取による死亡例は国内でも起こっており、2015年に20代の男性が亡くなっています。
男性は、深夜帯の勤務で眠気覚ましに毎日のように多用していたそうです。
日本では「清涼飲料水」に該当し、特に規制などもないエナジードリンク。
自己管理が重要といえますね。
カフェインは、覚醒作用と利尿作用、解熱鎮痛作用を有すことから、市販の風邪薬(総合感冒薬)や頭痛薬に配合されることもあり、私たちの体にとって悪い面だけを持った成分ではありません。
記憶力や集中力がアップするといった効果も報告されているため、上手に味方につけたいですよね。
また、カフェインに対する感受性は遺伝因子により決定され、個人差が大きいということも忘れてはなりません。
少しコーヒーを飲んだだけで眠れなくなるような人は、カフェインに対する感受性が高いと考えられるので、エナジードリンクを飲用するなど、多量のカフェインを摂取する際には、より慎重になりましょう。
そして、エナジードリンクを飲む際には、
・一日のカフェインの摂取量を把握しておく
・常用はしない(依存性があります)
・アルコールとの併用を避ける
の3つのポイントを心に留めて必ず忘れないようにしましょう。
[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]