太る原因は塩分の摂り過ぎ!?ダイエットと塩分の関係について正しい情報を教えます。

食欲の秋も、間近。
どうしても食べ過ぎてしまう時季なので、
「お菓子の食べ過ぎに気を付けよう」
「ご飯をお替わりしないようにしよう」
というように、糖質制限のブームもあり、糖分や糖質の摂取に意識を向けている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実は肥満にはあまり関係ないと思われる『塩分』を摂取しすぎると、BMIが上昇してしまうとの報告が。
塩分の過剰摂取は高血圧などの生活習慣病のイメージがあるかと思いますが、肥満にも?
今回は塩分とダイエットについてお話いたします。

塩分を摂り過ぎると太る? 驚きの研究結果とは


2019年5月、米国臨床栄養学雑誌(AJCN:The American Journal of Clinical Nutrition)に、日本、中国、英国、米国が参加するINTERMAP(国際共同研究班)より、「塩分摂取と過体重/肥満の有病率」という塩分の摂取に関するコホート研究についての報告がされました。
※コホート研究・・・分析疫学における手法のひとつ。現時点で研究対象とする病気にかかっていない集団(cohort:コホート)を対象に、将来にわたって長期間の観察・追跡調査を続けることで、ある要因の有無が病気の発生または予防に関係しているかを調査すること。結果を得るのに時間を要するが、危険率を正確に計算することができるとされる。
40~59歳の男女4,680人 (日本人:1,145人、中国人:839人、英国人:501人、米国人:2,195人)を対象に1995年から15年間にわたっておこなわれた微小栄養素および主要栄養素と血圧の国際共同研究のデータを使用して、対象者の尿中のナトリウムから食事由来の塩分摂取量を推定し、BMI、過体重/肥満との関係が調査されたのです。
その結果、塩分の摂取量が1日当たり1g増えることで、BMI値が日本:0.28、中国:0.10、英国:0.42、米国:0.52高くなることが明らかになりました。
例えば、身長が160cmで体重が55kgの人がいたとすると、その人のBMI値は約21.5となります。
※BMI値は『体重(kg)/身長(cm)²』で求められる
また、BMIの計算式は世界共通であるが、肥満の判定基準は国により異なる
・WHO(世界保健機構)、英国、米国・・・25以上:過体重、30以上:肥満
・日本・・・25以上:肥満
・中国・・・24以上:過体重、28以上:肥満
最も上昇値の高い米国人のBMI値で考えると、塩分摂取量が1日1g増えることで0.52上昇するとのことなので、BMIが21.5+0.52=約22に。
身長が160cmでBMIが22の人の体重は56.3kgですので、塩分を1g多くとる人は、そうでない人より約1.3kg重くなる計算となります。
また、塩分摂取量が1日当たり1g増えることで、過体重/肥満になってしまうリスクは、日本で21%、中国で4%、英国で29%、米国で24%高くなることもわかりました。
塩分を1日1g多くとるだけで、太ってしまうなんて、驚きですよね。
なぜ塩分摂取で体重が増加してしまうのかはこの報告では明らかにされていませんが、オーストラリアDeakin大学のRussell Keast博士の報告にひとつのヒントがありそうです。
Keast博士の報告によると、食品に塩分を添加すると満腹感や食べ物の嗜好性に影響を与え、食欲亢進が進み、通常より11%も多くカロリーを摂取させてしまうとのこと(出典:J Nutr. 2016 Apr;146(4):838-45)。
塩分過多な食事が、1割以上もカロリーを多くとらせてしまうなんて驚きですよね。
ちなみに、日本人30代女性の栄養摂取量でみると、ナトリウムの摂取量は推奨量のなんと5倍以上で食塩換算では2gほど多く摂取しています。
(参照:現代版の栄養失調、「新型栄養失調」って何?新型栄養失調の原因と予防法)
血圧や生活習慣病なんてまだまだ気にしなくて大丈夫・・・と思いがちな若い方も、一度自分の塩分摂取量を振り返ってみた方がよさそうです。

減塩を心がける上で大切なこと


減塩を心がけようと思ったとき、味付けや調味料を気にかける方は多いと思います。
レモンやお酢などの酸味、スパイスやハーブなどの薬味や香辛料を上手に使う、出汁などに含まれるうま味を利用することで、塩分が少なくても満足感のある味付けになるので上手に利用しましょう。
もちろん、ポテトチップスなどの塩気の多いスナック菓子やインスタントラーメンを食べる機会を減らすことも有効です。
しかし、実は私たちは意外なところから、最も多くの塩分を摂取しているようです。
米国疾病管理予防センター(CDC:Centers for Disease Control and Prenention)の報告によると、米国で最もナトリウムが摂取されている食品ランキングは、以下の通り。
1位:パン(ロールパン、バンズ、ベーグルやイングリッシュマフィン)
2位:ピザ
3位:サンドイッチ
4位:缶詰や塩漬けの肉
5位:スープ
なんと、1位~3位までが外食や中食(外で購入した食品を持ち帰って食べる)では定番の食品ばかり。
これらを食べることで、塩分を多量に摂取しているとはあまり思わないのではないでしょうか。
ちなみに、しょっぱいイメージの食品であるチーズ(ナチュラルチーズ・プロセスチーズ)は9位、ベーコンやハム・ソーセージなどの加工肉は13位、フライドポテトは22位というイメージよりかなり低い結果に。
塩分を最も摂取している食品がパンなんて、意外ですよね!
さらに、私たち日本人はアメリカ人とは食生活が異なるため、少し気を付けるべきポイントが変わります。
このデータをアジア人に限定して見てみると、1位がスープ、2位がご飯、3位がパンとなっています。
私たちはパン以外にもお味噌汁などの汁物、そしてふりかけやお漬物・たらこなどのご飯と一緒に食べるものに含まれる塩分に気を付けた方がよさそうですね。
また、この調査によると、多くが食料品店やファストフード店で購入されたものでした。
(出典CDC Weekly / March 31, 2017 / 66(12);324–238)
これはどの食事にも当てはまると思いますが、加工肉を用いず、家庭で食事をつくることが減塩には最も大切なようです。

塩分を多くとると、肥満になるリスクが上昇すること。
そして、私たちは意外な食品からも多くの塩分を摂取していること。
日本人はもともと塩分の摂取量が多いことで知られています。
20歳以上の食塩の1日の平均摂取量は10.1g(男性:10.9g、女性:9.3g)と、WHOの推奨する1日5gを2倍も上回っているのです(出典:厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査)。
健康のためにも、キレイのためにも、減塩に努めましょう!

[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]

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