夏におススメの一冊。小説から現代につながる要素をたくさん読み解いてみませねんか?未来への思いを馳せて。

ドラマチックな小説を読むと、主人公になりきってワクワクしますよね。
今回は、ドキドキとワクワクが詰まった1冊を、筆者でありAoi.Dream株式会社の代表取締役でもある菊地エイ子さまにお話しいただきました。
菊地さまは御年80歳。なんと小説家としてデビューされたのも、還暦を迎えてからとのこと。
「シニアの星」とも呼ばれる、菊地さまの思いの詰まった一冊です。

海外志向のある方へおすすめ!英語版もあります

今回おすすめする本は「碧千塚子『聖女の罪と罰』(青雲社、2015年)」です。
2020年に英語版が「Untold Truths of Saints」がアメリカで出版されています。
これは、海外旅行や留学経験のある方、またこれから計画している方などにぜひ読んでいただきたい一冊です。
英語の本を読みたい方、海外の友人とともにオンラインで読まれたらどうでしょうか。オペラに興味のある方にもおすすめです。
「聖女の罪と罰」は 36章からなる単行本です。
物語は大正時代から1964年の第一回東京オリンピックまでの長い期間、日本とイタリアにまたがる広い地域が舞台になるのです。
読み進めていくと一小節ごとにまるで映画で壮大な海外旅行をしているように思われるでしょう。
この物語の特徴の一つに、4つの有名なオペラがこの物語を進行させていることがあります。
また、全くオペラに関心のない人も、知らない方も、オペラの造詣を深めつつ、無理なく話に入っていくことができますのでご安心ください。
さらに、登場人物たちが風光明媚な地を巡っていることで、これも小説を読んだ方はその地を訪れてみたいと思うことでしょう。
まるで繭玉から繰り出すように大正から昭和にかけての忘れかけた記憶の底に眠る言葉を繰り出させ、モノクロ映像から色のついた映像としてよみがえらせてくれます。
人の一生は誕生から始まりますが、そのすべてが祝福されたものばかりではありません。
闇に葬られる者、葬られた者も葬った者にもその悲しい記憶が消えることはないのです。さまざまな登場人物のさまざまな人生が書かれています。
ぜひ、複雑に絡み合う登場人物の愛憎や運命を体験してみてください。

この本を執筆しようとした背景と未来へのつながり

著者がこの本を書くイメージを掴んだ日、雨が降っていたあの日の思い出。
イタリア人の先生に引率されて見たローマ広場にあるヴェネチア宮殿。
古びたレンガの建物にムッソリーニの亡霊が浮かんでいるように感じました。
ムッソリーニは、皆さんご存知のとおり第二次世界大戦時に台頭してきた独裁者です。
この小説の主人公の美和が初めてイタリアに渡ったのは 第二次世界大戦前の不安定な時代です。
いつの時代も、戦争は時と共に現実に銃と大砲が街を、国を破壊し、人々を次々と死に追いやっていきます。

私は、この小説から現代につながる要素をたくさん読み解くことができると考えています。
第二次世界大戦後の明るい未来。
21世紀は? どのような時代になるのでしょうか?
誰もが予想だにしていなかったアメリカ同時多発テロ事件で世界は一変。
それは今までの根拠ない平和の神話が、音を立てて崩れ落ちた瞬間であったのでしょう。
世界の人々を3年も閉じこめたコロナはだいぶ落ち着いては来ましたが、 過去に猛威を振るった結核や梅毒も、この世からいまだに消滅されてはいません。
そして、多くの悲劇を生む独裁政治も。
小説を読みながら、是非未来へも思いを馳せて頂けたらと存じます。

[執筆者]

碧 千塚子(あおい ちずこ)/本名:菊地エイ子

[プロフィール]
1942年7月27日茨城県日立市生まれ
Aoi.Dream株式会社の代表取締役を務める。

ダン・ブラウンの「天使と悪魔」の一節に導かれ、3年間年金を貯めて資金を作り、現地イタリアにてイタリア語の勉強を63歳でスタートする。
その中で語学勉強の一環としてオペラを学び、そこからドップリとオペラの魅力に浸かる。
語学学習のためイタリアに渡り、壮大な遺跡を見学しながらホストファミリーや知人から第二次世界大戦中や、その後の悲しい逸話を聞き、感銘を受ける。
今日、ロシアによるウクライナ侵攻は第二次世界大戦の悲劇を繰返そうとしているようで、自身の小説と重ね合わせ憂慮している。

Aoi.Dream株式会社
https://27chizuko.muragon.com/

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