腸活するのに口腔環境も重要って本当?腸内と口腔内との関係性について歯科クリニック院長 赤松先生に教えていただきました。

口から腸までは、1本の管でつながった消化器官です。
そのため、口腔環境が腸内環境に影響し、腸内環境が口腔環境に影響を与えることも・・・。
腸活を考えるうえでは、口腔環境も重要って本当?
今回は、あかまつ歯科クリニック 院長、赤松佑紀先生にお話を伺いました。

腸内細菌と口腔内の細菌には関係があるって本当?

意外かもしれませんが、実は腸内細菌と口腔内の細菌には関係があります。
これらの微生物群はそれぞれ異なる環境で生活していますが、全身の健康において密接な関係があるのです。

1:免疫システムの相互作用
腸内細菌と口腔内の細菌は共に免疫システムに影響を与えます。
健康な口腔内環境は全身の免疫応答をサポートし、逆に口腔内の感染や炎症は全身の免疫機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
2:全身性の炎症
口腔内の疾患、特に歯周病は全身性の炎症を引き起こし、腸内環境にも影響を与えることがあります。
例えば、口腔内の炎症が腸内のバリア機能を低下させ、腸内細菌叢のバランスを崩すことがあります。
3:微生物の転移
口腔内と腸内は消化管を通じて繋がっており、唾液や食物を介して細菌が移動することがあります。
このため、口腔内の細菌が腸内に到達し、腸内細菌叢に影響を与える可能性があります。
4:食生活と生活習慣

口腔内と腸内の微生物は共通の食事や生活習慣に影響を受けます。
バランスの取れた食事や適切な口腔ケアは、両方の微生物叢の健康をサポートします。

これらの相互作用により、口腔内の健康が腸内の健康に、またその逆も影響を及ぼすことが明らかになってきています。
したがって、口腔ケアと腸内環境の両方を健康に保つことが重要です。

歯周病が全身に与える影響

口腔内の代表的な疾患である歯周病は免疫応答が関与する疾患です。
歯周病は、歯を支える組織が炎症を起こし、最終的には歯の喪失に至ることがあります。
これは主に歯垢や歯石に含まれる細菌が原因となり、これに対して体の免疫システムが反応することで炎症が引き起こされます。
具体的には、以下のような免疫応答が関与します。

細菌感染
歯垢に含まれる細菌が歯肉に侵入し、免疫システムがこれを認識します。
炎症反応
免疫細胞(マクロファージ、リンパ球など)が細菌に反応し、炎症性サイトカイン(インターロイキン-1βやTNF-αなど)を分泌します。これにより、炎症が引き起こされます。
組織破壊
長期的な炎症反応により、歯を支える骨や歯肉などの組織が破壊されます。
そしてこの歯周病に対して、腸の免疫バランスが影響を与える可能性があります。
腸内フローラ(腸内細菌叢)は、全身の免疫応答に重要な役割を果たしており、口腔の健康にも影響を与えることが示されています。

腸内環境が口腔環境に与える影響

先ほどとは反対に、腸の免疫バランスが歯周病など口腔環境に影響を与えるメカニズムについてもお話ししたいと思います。
全身の免疫応答
腸内フローラは全身の免疫系を調節します。
健康な腸内フローラは、免疫システムのバランスを保つのに役立ち、過剰な炎症反応を抑制します。
腸内フローラが乱れると、全身の炎症が増加し、歯周病のリスクが高まる可能性があります。
炎症性サイトカイン
腸内フローラのバランスが崩れると、炎症性サイトカイン(例:インターロイキン-6、TNF-αなど)の産生が増加することがあります。
これらのサイトカインは血流を介して口腔に到達し、歯周組織の炎症を促進する可能性があります。
免疫調節
腸内細菌は、免疫系の細胞(例:T細胞やマクロファージ)の機能を調節します。
腸内フローラが健康な状態を保つことで、免疫系のバランスが保たれ、口腔内の炎症を抑えることができます。
栄養の吸収と代謝
腸内フローラは、ビタミンや短鎖脂肪酸などの重要な栄養素の吸収と代謝に関与しています。
これらの栄養素は免疫系の正常な機能に必要であり、腸内フローラの乱れがこれらの栄養素の供給を妨げると、免疫応答が悪化し、歯周病のリスクが増加することがあります。
腸内フローラの健康を維持するためには、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスの管理、プロバイオティクスの摂取などが重要です。
これにより、全身の免疫バランスが保たれ、口腔内の健康も向上する可能性があります。

適切な口腔衛生管理と定期的な歯科検診が歯周病の予防や進行を抑えるために重要です。
また、重度の場合は歯科医による専門的な治療が必要です。
全身のトラブルはお口から・・・一度歯科受診を検討されてはいかがでしょうか?

[執筆者]

赤松佑紀
あかまつ歯科クリニック院長
博士(医学)
顎咬合学会認定医
一般社団法人一隅会理事

朝日大学卒業後、京都府立医科大学歯科で研修医として入局。
その後、京都府立医科大学大学院感染免疫病態制御学大学院に進む。
そして大学院後、京都府立医科大学大学院医学研究科歯科口腔科学助教(併任)と京都府立心身障害者リハビリテーション病院 歯科医長として過ごし、地元神戸であかまつ歯科クリニックを開業。
メディカルトリートメントモデルと呼ばれる歯科医療モデルで、予防歯科を基盤として全ての診療に幅広く従事している。
現在は、全国的に予防歯科医療を広めていくために、一般社団法人の理事として奮闘している。

あかまつ歯科クリニック
http://akamatsu-dental.jp

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