防ぐばかりが大切ではない!?紫外線とビタミンDと上手に付き合う方法

日光を肌に浴びないため、日傘や長袖、そして日焼け止めを欠かさないという方も多いと思います。
しかし、布団や洗濯物を殺菌したり、体内時計を調節したり・・・と、日光には大きなメリットもあります。
そのなかでも、私たちの健康の維持に大きな役割を持つ、日光浴によるビタミンDの生成。
日焼け止めを塗ることによりビタミンDの生成が妨げられ、ビタミンD不足を心配する声も挙がっていますが、実際にビタミンDは不足しているのでしょうか?
また、どの程度の日光浴でどれくらいのビタミンDが生成されるのでしょうか?
今回は、ビタミンDと日光についてお話ししたいと思います。

足りてる、足りてない? ビタミンDについて


ビタミンDは、骨の形成にかかわることで知られる脂溶性のビタミンです。
カルシウムやリンが十分な量を摂取できていても、ビタミンDがなければ骨や歯をきちんとつくることができなくなります。

以前は、ビタミンDは食事からも摂取することができるうえ、紫外線に当たることで体内のコレステロールを材料に皮膚で合成されるため、不足する心配はないとされてきました。
しかし、現在の食事摂取目安量と実際の食事摂取量を比較してみると、70代以上の男性と、70代の女性以外は目安量には届いていないことがわかりました。
実は、ビタミンDの推奨摂取量や目安量は、5年ごとに改訂される日本人の食事摂取基準では2005年版:5.0μg、2010年版:5.5μg、2015年版:5.5μgと増加傾向にあり、2020年版では8.5μgと大幅に増加しています。
目安量が増えたにもかかわらず、ビタミンDの食事摂取量は減少傾向にあります。
ビタミンDは、その多くが魚介類の摂取に由来していますが、特に若い世代を中心に年々魚介類を食べる量や機会が失われています。
そのため、最近では不足の懸念が少ないと思われていたビタミンDが、不足するようになってしまったのです。

実はビタミンDの摂取量は、日本に比べると、アメリカやカナダでは成人の摂取量が15μg(70歳以上は20μg)と、日本と比較すると高い設定となっています。
これはアメリカなどでは口腔摂取や日光浴による生成などの区別をせず、ビタミンDそのものの摂取目安量で設定しているからです。
つまり、私たちも、15μgから摂取量を引いた分のビタミンDを、紫外線を浴びて産生させる必要があります。
食事摂取量が減少傾向にあり、紫外線対策が着目されている現代ですが、実際にはどの位日光を浴びると、どの程度のビタミンDが産生されるのでしょうか?
日光を浴びるだけで、不足分のビタミンDを補うことは可能なのでしょうか??

日照時間とビタミンDの産生量について


環境省(2015年版紫外線環境保健マニュアル)によると、標準的な日本人(スキンタイプⅢ:紫外線に当たると、容易に赤くなり、わずかに黒くなる・・・Fitzpatrick skin typingによる)が、皮膚の25%(両腕と顔に相当)を、日焼け止めを塗らずに外出すると、東京都心では、真夏(8/1)の昼だと3分で10μgのビタミンDを産生することができると計算されています。
同様に真冬(1/1)の昼ごろに12%(顔と手に相当)を露出して外出すると、約50分となります。
しかし、ビタミンDの産生量は季節だけでなく場所(緯度)や時間によっても大きく異なることが報告されています。

上の表は、顔と手を露出した状態で、5.5μgのビタミンDを産生させるには、何分日光に当たる必要があるかを検証したものです。
夏季であれば、沖縄でも札幌でも、十分なビタミンDを産生できそうですが、冬場ではどうでしょうか。
札幌にお住まいの方にとっては、あまり日照暴露によるビタミンDの産生は十分な量を望めないでしょう。
つくばであっても、お昼でないと十分な産生量は期待できません。
更に、通常は紫外線対策として顔や手の甲には日焼け止めを塗っている方も多いですよね。
実は、ビタミンDをつくる紫外線の波長が日焼けを起こす波長に近く、SPF30の日焼け止めを使用すると、ビタミンDの産生量が5%以下になるという報告もされているのです。
だからといって、日焼け止めを塗らずに紫外線を過度に浴びると、シミやシワなどの光老化、さらには皮膚がんなどの原因となることが考えられます。
日光浴によるビタミンD産生を考えるなら、肌にダメージが起こらない範囲内で、日差しが強くなる前などに軽く日光浴をする、日焼け止めをあまり塗らない手の平を日光に当てるなど、日光と上手に付き合っていきたいですね。

紫外線になるべく当たりたくないという方や、冬季(特に高緯度地域や日照時間の短いにお住まいの方)は、食事から摂るビタミンDが重要となってきます。
近年、ビタミンDは骨の代謝以外にも、フレイルの予防や免疫への関連などが示唆され、注目が集まるビタミンです。
次回は、食品に含まれるビタミンDについてお話ししたいと思います。

[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]

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