生活習慣が原因でドライマウスの可能性が!?お口の健康を守る万能選手!唾液のお話
前回は、オーラルケアとして歯みがきについてお話ししました。
しかし・・・実は、私たちの口の中には、その健康を守るため、24時間体制で働く万能選手がいるのです!
なんだか分かりますか?
その正体は、「唾液」です。
唾液というと、ツバとか涎とか、あまりキレイなイメージはないかもしれません。
しかし、お口の環境にとっては最重要といっても過言ではない、唾液。
今回は、唾液の役割についてお話ししたいと思います。
こんなにたくさん!唾液の働き
まずは、唾液の仕事ぶりをご紹介します。
1.消化作用
唾液の中に含まれるアミラーゼという酵素には、デンプンを分解し、吸収しやすい形に変える働きがあります。
その際に分解されてできた糖(麦芽糖)の甘みが、食欲を増進させる効果もあるそうです。
ご飯を良く噛んで食べることの重要さが分かりますね。
2.自浄作用
歯に付着したプラークや食べカス・細菌などを洗い流す作用があります。
唾液の量が少ないと、この働きは低下してしまいますので、食事の際はやはり良く噛み、唾液の分泌を促すことが大切です。
3.抗菌作用
お口の中には無数の細菌が存在しており、その中には病原細菌も多く含まれています。
唾液に含まれる、リゾチーム・ペルオキシダーゼ・ラクトフェリンなどが働くことにより、細菌の毒性物質の産生を抑えたり、増殖を抑制したりして、体を病気から守っています。
4.保湿・保護
唾液には粘性たんぱく質のムチンが含まれています。
ムチンは水分を多く含み、口腔内のうるおいを保ち、さらに飲食物などによる外部からの刺激より、お口の中の粘膜を保護します。
5.歯の再石灰化
虫歯の原因菌が発する酸や酸性の飲食物などにより歯のエナメル質は、いつも少しずつ溶解しています。
そのまま溶解を続けると虫歯となってしまいますが、唾液に含まれるハイドロキシアパタイトが歯に沈着して再石灰化し、表面を常に修復してくれています。
6.口内のpHの調節
通常の口の中はpH6.8~7.6でほぼ中性を保っていますが、食後は細菌が増えて酸性へ傾き、pHが5.5以下になると虫歯となりやすい環境となります。
唾液の中に含まれている重炭酸塩やリン酸塩は、飲食物や菌によって産生される酸を中和して、食後30~40分ほどで口内のpHを元の状態に戻してくれます。
唾液は、1日約1.0~1.5Lも分泌され、常時口内環境の保全に努めてくれています。
しかし、平常時には19mL/h分泌される唾液も、睡眠時には2mL/hと少なくなってしまい、睡眠中は唾液の働きが下がってしまいます。
朝起きた時の口臭や口内の粘つきが特に気になる・・・という方もいるのでは?
ですから、特に就寝前の歯磨きで、しっかりと口内をキレイにしておくことが重要になります。
磨き残しのないよう、しっかり磨いてくださいね!
唾液が不足?!ドライマウスって?
このように、口腔内の守護神ともいえる唾液ですが、「口が渇く」「のどが渇く」などの乾燥感を覚える、いわゆるドライマウス(唾液の分泌量が少なくなることで口の中が乾いた状態になる症状)が口腔内の健康に影響を与えています。
ドライマウスに悩む方は年々増加傾向をたどり、日本ではなんと潜在的に約3000万人の患者がいる可能性があるとも報告されています(出典:老年歯学 23(3): 319-329,2008)。
鶴見大学歯学部附属病院によると、50代以降から受診者は増加し、60代でピークとなりますが、どの年代でも女性の方が多いとのこと(出典:日口腔外会誌 55 (1):11-18,2009)。
口腔内の悩みといえばむし歯がいちばんに思い浮かぶかと思いますが、厚生労働省が発表した「平成28年度 歯科疾患実態調査結果の概要」によると、むし歯がある成人は未処置・治療中の状態も含めて30%ほど。
ドライマウスも、むし歯と同等の規模の口腔トラブルといえるかもしれません。
ドライマウスの原因はさまざまで、未解明の部分も多いのですが、加齢による唾液の分泌機能の低下、ストレス、糖尿病・腎臓病などの病気、薬の副作用などであると考えられています。
さらに口で呼吸をする、硬いもの(よく噛む必要のあるもの)をあまり食べないことにより、あご周辺の筋力が低下し、唾液の分泌機能が低下するなど、生活習慣が原因となることもあります。
また、飲酒や喫煙によっても唾液の分泌量が減少することが分かっています。
唾液の分泌量が減ると、食べ物が飲み込みにくくなったり、口内が粘ついたり、口臭が強くなったりします。
お口の渇きを感じたら、ドライマウスケアを考えましょう。
唾液の分泌量をアップさせるには、よく噛むこと(ガムも有効です)、規則正しい生活を送ること、ストレスをためないことが重要です。
口腔内を保湿する効果のある歯みがき粉やマウススプレーなど、症状に合わせて使ってみてもいいでしょう。
肌のうるおい同様、お口のうるおいも守りましょう!
[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]