[1]お酒に強い人と弱い人って何が違うの?見分け方ってある?上手なアルコールとの付き合い方について船越先生にお伺いしました。

春は新歓コンパ、歓送迎会など飲み会などのイベントが多くなる。
5月後半となり、海辺でのバーベキューなど、アウトドアのイベントも増えてきたという方もいるかもしれませんね。
お酒が好きな方はもちろん、苦手な方にとってもアルコールとの付き合い方はとても大切です。
アルコールと体質の関係やお酒の適量について、まきこ胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 院長の船越 真木子先生にお話を伺いました。

自分がアルコールを飲めるかどうか見分ける方法はある?

自分がアルコールに耐えられるかどうかを見極めるには、アルコールを飲んだ際の症状・体調の確認やアルコール感受性遺伝子検査、アルコールパッチテストで調べることができます。

【症状・体質の確認】
アルコールに耐性があるかどうかは遺伝的要因が大きく関係しています。
アルコールを飲んだ際に、吐き気、頭痛、めまいなどの症状が出た場合には、アルコールに対して敏感な体質の可能性が高いです。
またアルコールが分解されにくい方は、赤面などの反応が現れやすくなります。
アルコールを飲み慣れるとこの反応は出にくくなりますので、『20歳の頃にビールコップ1杯で顔が赤くなることがありましたか?』という質問が有効です。
このような症状がある方は、飲酒を控えるようにしましょう。

【アルコール感受性遺伝子検査】
遺伝子検査といっても最近は手軽になり、頬の粘膜を綿棒でこするだけで調べられるような遺伝子検査キットが市販されています。
アルコールの代謝酵素は主に二つあり、遺伝子型によって活性が決まります。
市販のキットでは、アルコール脱水素酵素(ADH)とアルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)の二つの酵素活性を決める遺伝子を調べるものが多く、活性のバランスによって、『気持ちよくお酒に酔えるタイプで、飲酒量が増えやすい』や『ある程度飲めるが、アルコールによる害がでやすい』などのタイプがわかります。

【アルコールパッチテスト】
アルコールパッチテストは、アルコールに対する耐性を調べる検査です。
アルコールパッチテストは、少量のアルコールを肌に塗り、一定時間後の反応を観察します。
特に、肌が赤くなる、かゆみや腫れが生じるなどの反応が見られた場合、アルコール耐性が低い可能性があります。

今日はここまで…お酒をストップする目安は?

顔が赤くなる、頭痛、吐き気などの症状は、アルコールから代謝されてできた毒性物質である『アセトアルデヒド』が体内に蓄積されているサインです。
これらのサインが現れれば、それ以上の飲酒はしないでください。
また、おう吐、歩けない、意識が朦朧とする、言葉がしゃべりにくくなるなどの症状が見られた場合には、重度の急性アルコール中毒が疑われ、命にかかわる危険性があります。
即座にアルコールを飲むのをやめ、救急安心センター(#7119)に電話するなどして病院受診を検討してください。

全く酔わないタイプはどれだけ飲んでも平気?

酔いにくい体質の人でも、アルコールの過剰摂取は健康に悪影響を及ぼします。
肝臓のアルコール分解能力には限界があり、長期的なアルコールの過剰摂取は、肝硬変や他の消化器疾患のリスクを高めることが知られています。
また、アルコールはカロリーが高いものも多く、過剰に摂取することで肥満の原因にもなり得ます。
そのため、適度なアルコールの摂取が大切となります。

休肝日は本当に必要?

休肝日は、肝臓の健康を維持するために非常に有効となります。
肝臓はアルコールの代謝に不可欠な臓器で、肝臓を休ませることで肝臓の回復と再生を助けることができます。
お酒を減らしたいけれども飲んでしまう場合には、アルコールを避ける環境を自分でつくることが効果的です。
例えば、家にお酒を置かない、飲み会の頻度を減らす、アルコールフリーの代替品を試すなどから試してみましょう。

飲む機会を増やせばお酒に強くなれる?

アルコールを飲む機会を増やすことで”一時的”にアルコール耐性が高まることはあります。
しかし、アルコールを飲む機会を過剰に増やすことは、健康の観点から推奨はできません。
アルコールへの耐性が高まったとしても、毒性物質の『アセトアルデヒド』は体内に発生しており、これによりがんのリスクが高くなることが知られています。
また、耐性ができると酔うためにより多くのアルコールを必要とするようになり、それによってアルコールそのものが膵臓や肝臓などの臓器に更にストレスをかけてしまい糖尿病のリスクも高くなります。
適度な飲酒量を守り、健康的なアルコールの飲み方を心がけるようにしましょう。

いかがでしたか?
今回はお酒に強い人・弱い人の違いや適度なお酒の楽しみ方についてお話しいただきました。
次回はアルコールの健康への影響や二日酔い対策などについてお話しいただきます。
お楽しみに!

[執筆者]

船越真木子(ふなこし・まきこ)先生
まきこ胃と大腸の消化器内視鏡クリニック院長

略歴
2005年神戸大学医学部卒。
その後、基幹病院や京都大学医学部附属病院の勤務を経て、2021年に「まきこ胃と大腸の消化器・内視鏡クリニック」(京都市伏見区)を開院。
がん死の第一位である大腸がん、第二位である胃がんを早期発見するため、苦痛の少ない高精度な内視鏡検査を提供している。
ミッションは『人生を最高に楽しめる体と心を支える』。
総合内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医。

まきこ胃と大腸の消化器内視鏡クリニック
https://www.makikoclinic.com/

関連記事一覧