骨盤が歪む、骨盤を締めるなど、骨盤に関する話題ってよく耳にしますよね。
今回は、姿勢専科KCSセンターの高山みどりさまにお話を伺いました。
骨盤ってそもそも何？
骨盤を含むお腹の下あたりを骨盤部といいますが以下のような役割があります。
・上半身と下半身をつなぐ『土台』になる
・内臓を守る
・歩行や姿勢の保持に関わる
さらに、女性にとっては出産にも大きく関わるため、健康や美容の面からも多くの関心を集める部位です。
骨盤は歪むの？
骨盤が歪むという表現を耳にしたことがある方も多いかと思いますが、結論から言うと、骨盤部そのものがズレたり開いたりすることはありません。
理由はその構造にあります。
骨盤部は左右の寛骨（腸骨・恥骨・坐骨の3つが合体したもの）が、前では恥骨結合、後ろでは仙骨とつながって「リング構造」をつくっています。
仙骨は両側の腸骨にくさび型のような状態でギュッと挟まれています。
さらに上から体重がかかる事で仙骨が押し込まれ、靱帯の働きも加わり自然にがっちり安定する仕組み（自己安定機構）が働いています。
例えば、アーチ橋のように両側から石を積んでいって最後の真ん中の石がカチッとはまる事で安定する仕組みと似ています。
この状態が崩れることは容易ではなく、もしリングが崩れてしまったら歩くことすらできなくなってしまいます。
骨盤の後ろ側にある仙腸関節は、靭帯で強固に支えられていて大きく動くことはありません。
ただし、全く動かないわけではなく、ほんのわずかに『あそび』と呼ばれる動きがあります。
これが歩行の際に体重移動をスムーズにする大事な役割を果たしています。
妊娠・出産時はホルモンの働きで恥骨結合や靭帯が一時的に緩みますが、それ以外の状況で「大きく開く」「ズレる」といったことは起こりません。
出産後、骨盤を締める必要はあるの？
出産後しばらくは、ホルモン（リラキシンなど）の影響で靭帯がゆるみ、体は不安定になりやすい時期です。
骨盤ベルトなどで固定すると、一時的に「支えられて楽」と感じることもあります。
ただし、ずっと外から固定してしまうと・・・
・本来自分で支えるための筋肉が働きにくくなり、筋力が回復しづらい
・骨盤の自然な動きが制限され、かえって体の歪みにつながる可能性がある
などの懸念もあります。
そのため、外部からの締め付けに頼りすぎるのではなく、自然な回復をサポートするよう使用時間を短くしていくなど工夫されることをお勧めします。
骨盤は締めれば痩せるの？
残念ながら、答えはNOです。
そもそも骨盤は「開く・閉じる」という構造をしていないので、締める必要はありません。
むしろ締めつけすぎると、骨盤本来の動きが制限されてしまい、歪みや痛みなどのトラブルにつながることもあります。
ダイエットや体型づくりの基本は、やはり食事や生活習慣の見直し。骨盤を締めることが痩せる近道にはなりません。
骨盤が「歪んでいる」と感じるのは？
骨盤は歪まないと先程お伝えしましたが、骨盤は体を安定させるためにバランスを取っています。
例えば、上半身が右に傾けば、倒れないように骨盤の右側を少し持ち上げて調整します。
この傾きを歪みと捉えられる事が多いですが、骨盤自体が自ら歪んだのではなく、上半身の傾きに「歪まされている状態」なのです。
そのため骨盤だけを整えても、上半身の傾きを整えない限り、バランスをとるためにまたすぐに戻ってしまいます。
上半身の傾きなど原因を正せば、骨盤は自然と正しい位置に戻ります。
そもそも歪みの原因はどこからきているのか、そこを知る事は大変重要です。
体の状態や仕組みを知らずに「なんとなく良かれと思ってやっていたこと」が、かえって体を悪くしてしまう・・・そんなケースは珍しくありません。
だからこそ、まずは体のことをちゃんと知る事が大切。
そして自分にあった対処法を自分で見つけ、快適に動ける毎日を守っていきましょう！
［執筆者］
高山みどり
姿勢調整師 姿勢科学士 徒手療法士
膝トラブルをきっかけに姿勢科学を学び、体型の崩れや不調の多くが『姿勢』に原因があると実感。
姿勢が変われば、幾つになっても体はラクに動き美しく整う。その可能性を届けたく活動している。
KCSセンター宇都宮中央にて、姿勢科学に基づいた手技による臨床や生活改善のサポートなど健康支援を行っている
Instagram（@midori_do14）でも情報発信中。
●書籍掲載
「日本が誇るビジネス大賞2022」
〜キレイと健康を求めて〜
●宇都宮コミュニティラジオ「ミヤラジ」77.3MHZ
毎月第2月曜日 18:00~18:50
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