[前編]「かかとのひび割れ」って何が原因でなるの?うるおい皮ふ科クリニック院長豊田先生に伺いました!
冬場はどうしてもかかとがカサカサになってひび割れなどにも悩まされますよね。
今回は、なぜそうなるのか、前編ではかかとのひび割れの原因について、うるおい皮ふ科クリニック院長で皮膚科医の豊田雅彦先生にお話を伺いました。
手足の乾燥やひび割れは特に冬場に悪化します。
手足の症状には類似点が多いため、本稿ではかかとのひび割れの原因や対策(特にセルフケアにおける注意点)ついて解説し、手荒れに関してはその対策のポイントおよび医療機関(皮膚科専門医)を受診するタイミングに関して触れたいと思います。
かかとのひび割れはどうして起こる?
足裏が乾燥すると、かかとなどの角層(皮膚の一番外側を覆っている表皮の最外層に存在する堆積した角層細胞)が異常に厚くなります。これを「角化」と言います。
角化が進むと足裏は乾燥しひび割れを生じやすくなります。「ひび」とは、いわゆる亀裂のこと。
かかとのひび割れは「パックリ割れ」と言われることもあり、割れると強い痛みや出血を生じることもあります。
かかとのひび割れの経過と原因
では、どのようにかかとにひび割れが起こるのか、順に説明したいと思います。
1)乾燥(皮膚の水分不足)
通常、皮膚には皮脂を分泌する「皮脂腺」があります。皮脂腺は毛包に付着する付属器で皮脂腺から分泌された皮脂は、汗と混ざって皮膚表面に「皮脂膜」を形成します。この膜がバリアとなって皮膚内部の水分蒸発を防ぎ、肌の潤いを保っています。
ところが、足の裏にはその皮脂腺がありません(足の裏には毛が生えていませんよね)。そのため、肌内部の水分が蒸発して乾燥しやすくなっています(角層バリア機能の低下)。
空気が乾いていたり、エアコンやストーブなどの暖房を過度に使用すると、角層バリア機能が低下しやすく乾燥しているかかとの皮膚からさらに水分が蒸発して乾燥に拍車がかかります。
2)皮膚のターンオーバーの乱れ
表皮の最下層にある基底層で作られた皮膚細胞が、細胞分裂を繰り返して角層細胞となり、これが剝がれ落ちるまでのサイクルを「ターンオーバー」といいます。
ターンオーバーが長くなって古い細胞がいつまでも角層にとどまっていると角化が進みます。このターンオーバーの乱れ(遅延)によりかかとがガサガサして厚くなり、ひび割れが生じる結果となります。
ターンオーバーの乱れは乾燥状態の放置、すなわち保湿不足により生じやすくなります。もともと足底の皮膚は顔の皮膚の2倍の速度でゆっくりとターンオーバーを繰り返していますから、乾燥によるターンオーバーの遅延で角層が分厚くなってしまうわけです。
3)血行不良
そもそも足は血液やリンパ液の流れが滞りやすく、新陳代謝が悪いため乾燥しやすい部位です。これは、足が心臓から遠く離れているために血液循環が悪く、皮膚のターンオーバーが遅いことも一因となっています。冬の寒さで足の毛細血管が収縮して血行不良が生じ、表皮への栄養不足によりターンオーバーの遅延が加速します。
4)足にかかる負荷:角化の亢進(外部からの刺激・圧力・摩擦)
足裏は全体重を支える部位ですから、もともと足裏の角層はその圧力に耐えうるために厚く出来ています。
さらに、歩く時には通常かかとで着地しますから、かかとは地面から常に衝撃を受けています。さらに、パンプスのような足を圧迫する靴を長時間履くと、足は常に刺激や摩擦を受けやすく足裏が角化しやすくなります。
なお体重が増えただけで足裏への付加荷重は重たくなり足裏の角化が進みます。
5)誤った角層ケア
かかとの角化が亢進してガサガサしたり、足の臭いが気になる方が、「適切なかかとの角層ケア」を行うことは良いでしょう。しかし、足の裏を強くこすり過ぎるとかえって角層が厚くなってしまうので要注意です。皮膚が過剰な刺激に反発するからです。
足の裏の角層は落としにくいので、週に1~2回程度、やすり、軽石、角層リムーバーでかかとを中心に適度に取り除く程度に留めましょう。足を清潔に保つことは大切ですが、フットブラシの過剰な使用も避けましょう。
診察では、過剰なかかとのケア(特に擦り過ぎ)で硬くなった鏡餅のような状態となり深いひび割れを生じている方を見かけます。硬くなった鏡餅がひび割れやすいように、乾燥して硬くなったものに衝撃を加えるとひびが入りやすくなるのは当然ですね。
6)角層増殖型水虫に要注意
かかとを厚く硬く角化する原因で気を付けなければいけないのは、乾燥以外に「角層増殖型水虫」があります。水虫はかゆい・・というのは誤った思い込みです。水虫にはいくつかのタイプがありますが、このタイプの水虫は痒くないから分かりにくいのが特徴です。
後編は、家でできる対策についてお話ししたいと思います。
執筆者
豊田雅彦先生
うるおい皮ふ科クリニック院長
[経歴]
皮膚科医として、特に皮膚科の患者の中で最も多い悩みである「かゆみ」をとることをライフワークに掲げる医学博士。
「頑固なかゆみもアトピーも1分肌活で必ずよくなる:三笠書房」「新しい皮膚の教科書~医学的に正しいケアと不調改善~:池田書店」など書籍も多数執筆、好評を得ている。
現在までに2,000以上の医学論文・医学専門書を執筆。国際皮膚科学会において臨床 (2002)と研究(2004)の両部門で世界初の単独世界一を受賞。
また、国内外で年間最多250以上の講演会・学会発表・保健所指導を行う皮膚病・かゆみのスペシャリスト。
現在は千葉県松戸市にてうるおい皮ふ科クリニック(皮膚科、美容皮膚科、漢方皮膚科、アレルギー科、形成外科)を開業、院長として日々患者と向き合い、かゆみを失くすことに尽力している。
[専門医]
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
うるおい皮ふ科クリニックホームページ
http://www.uruoihifuka.com/sp/