
身体に悪いのはわかってる。どうしたらいい?禁煙によるメリットを理解して新しい自分に。
止めたくてもやめられないのがたばこ。
絶対やめるべき?どうやってやめたらいいの??
今回は、保健師の本田和樹さまにお話を伺いました。
喫煙が身体に悪いのはなぜ?
「たばこが身体に悪い」ということは広く知られていますが、実際の喫煙による影響は皆さんが想像している以上のものかもしれません。
本日は、現在喫煙者の方や、禁煙に迷っている方の「禁煙への一歩」となるように、喫煙が健康に及ぼす影響についてお話ししたいと思います。
喫煙が健康に影響を与えることはご存知の方が多いと思います。
特に、がんの原因になると聞いたことがある方は多いのではないのでしょうか。
しかし、喫煙の健康被害はがんだけではありません。
喫煙は脳卒中や虚血性心疾患などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息などの呼吸器疾患、糖尿病などの生活習慣病、さらに歯周病などさまざまな病気の原因になります。
たばこに含まれる有害物質
・紙たばこに含まれる発がん性物質
たばこの煙には5,000種類以上の化学物質が含まれており、そのうち、健康への影響が懸念され発がん性があると報告されている物質は約70種類存在するといわれています。1)
・加熱式たばこの有害物質
加熱式たばこでも、たばこ葉を加熱し発生させた煙を吸う製品のため多くの有害物質を含みます。
・減煙や軽いたばこの有害物質
減煙や低タール・低ニコチンの軽いたばこに切り替えても健康への影響が小さくなるとは限りません。
減煙して逆に1本がよりおいしく感じられるようになり、無意識に1本を深く吸ってしまったり、吸う本数が増えてしまったりという可能性が高くなり、結果的に有害物質の摂取量は期待していたほど減らないことがわかっています。
受動喫煙のリスク
喫煙者が直接吸っている煙だけでなく、たばこから立ちのぼる煙や喫煙者が吐き出す煙にも有害物質が多く含まれます。
喫煙者本人ではなく、周りの人がたばこの煙を吸ってしまうことを受動喫煙と言います。
煙に含まれる有害物質は、喫煙者が直接吸い込む「主流煙」より、火のついたたばこの先端から立ち上る「副流煙」に多く含まれるものもあり、受動喫煙による影響は近年メディアでも多く取り上げられています。
また、喫煙している人が直接近くにいない場合でも、カーテンや家具、壁等に付着したたばこの煙に含まれる有害物質を吸い込んでいる、残留受動喫煙(三次喫煙)に関しても健康に影響を与えていると懸念されています。
禁煙を始めるには
ここまでの説明で喫煙がどれだけ健康に影響を及ぼすか、ということについてお分かりいただけたのではないでしょうか。
禁煙することで、自分だけでなく、周りの人の健康への影響も減らすことができます。
ではここからは、禁煙の始め方についてご紹介します。
1.禁煙開始日を設定し、周りに禁煙宣言をする
まずは禁煙を開始する日を決めます。また、周囲の人に禁煙宣言をすることで喫煙室に誘わなくなるなど、つい一服することを防ぐとともに、周囲からの応援で気持ちを強くもつことができます。
2.吸いたくなる状況を把握し、対策を立てる
禁煙開始から2,3日後をピークに禁煙による離脱症状が出現します。個人差はあるものの10~14日程度は継続します。
《離脱症状の例》
・「たばこを吸いたい!」という強い気持ち
・イライラする
・頭痛、だるさ
禁煙を始めると「たばこを吸いたい!」という強い欲求が出現します。喫煙をしたくなる場面とその時の対処方法について、事前に考えておきましょう。
[喫煙したくなる場面とその対処法の例]
・起きてすぐの一服→コップ一杯の水を飲む。すぐに顔を洗う。歯磨きをする。
・イライラしたとき→外に出て深呼吸をしてみる。軽く体を動かしてみる。
・口寂しいとき→ガムや飴を食べる
3.ニコチンパッチやニコチンガムの使用
たばこにはニコチンという依存性の高い成分が含まれており、ニコチン依存症になると禁煙をすることが難しくなってしまいます。
なかなか禁煙できない理由はこのニコチンに依存しているからです。
ニコチン依存症はたばこを吸うことでリラックスできると錯覚し、ニコチンが切れるとストレスを感じやすくなります。
禁煙したい方はニコチンガムを噛むことや、パッチを貼ることで禁煙時の離脱症状を軽減しましょう。
※使用前に製品の注意事項をよく確認しましょう。
病気の治療をしている方や薬を内服している方は事前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してからご使用ください。
4.医療機関での治療
健康保険で治療を受けるには、自らが直ちに禁煙をしたいと望んでいること、スクリーニングテストでニコチン依存症と診断された人など、いくつかの条件が必要になります。
・費用:保険診療で12週間に5回受診する場合、およそ13000円~2万円程度です。
全額自己負担で治療を受ける場合は、およそ4万円~です。(治療内容や医療機関等により異なります。)
喫煙が身体に及ぼす影響や禁煙の重要性についてご理解いただけたでしょうか。
禁煙をすることは非常に重要ですが、「一生たばこを吸わない」と最初から気負うのではなく、まずは1日、1日の禁煙に成功したら次は1週間、のように気軽に初めて徐々に目標達成を積み重ねていきましょう。
禁煙を継続していくと「1本くらい吸ってもいいかな」という気持ちになることもあるかもしれませんが、その1本が次の1本に繋がり、「たった1本」で今までの頑張りが台無しになってしまいます。
吸いたくなった時にはいままでの自分の努力を思い出して、禁煙によるメリット(周囲に気を使わなくて良い、たばこ代が浮く等)に目を向けながら、禁煙を成功させましょう。
1)出典:「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書 概要」厚生労働省.2016.p3
(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000172686.pdf)
(2025年3月5日に利用)を加工して作成
執筆者
本田和樹
株式会社エムステージ産業保健事業部
保健師業務マネージャー
看護師として急性期精神病院で5年間勤務したのち、2020年エムステージ入社。
産業保健師の業務委託事業立ち上げに携わり、現在は複数の企業で保健師として実務をおこなう。
労働と精神衛生についての啓蒙活動、寄稿などもおこなっている。
取得資格:保健師、看護師、養護教諭一種、第一種衛生管理者等
株式会社エムステージ『産業保健トータルサポート』
https://sangyohokensupport.jp/