3Dアートで目はよくなるの? 懐かしの「マジックアイ」を健康管理士の視点で科学的に解説!

ぼんやり見ていると、模様の中から絵が立体的に浮かび上がって見えてくる、『マジックアイ』『3Dアート』などと呼ばれる画像、覚えていますか?
大人世代には懐かしく、子ども世代には「何それ??」となるかもしれませんね。
目がよくなるなどといわれ、当時は一大ブームとなったマジックアイ。
本当に効果があるの?どんな効果が期待できるの?
健康管理士上級指導員の船木彩夏さんの解説です。

立体視って知ってる?






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原案・監修   船木彩夏
漫画・イラスト 船井秋
※画像は生成AI(ChatGPT)を利用して画像を作成しています

そもそもマジックアイとは?どうして立体に見えるの?

いわゆるマジックアイと呼ばれる画像の多くは、正式にはオートステレオグラムと呼ばれるものです。
1枚の画像の中に左右の目で拾うべき情報のズレが埋め込まれていて、見方を変えることで脳が奥行きを再構成し、2Dの画像が3Dに、つまり立体的な形が浮かび上がって見えます。
これは単なる錯覚というより、両目と脳が協力して『奥行き』を作っている現象です[1]。
※1枚で完成しているものと、類似した画像が2枚並んでいるようなタイプのものもありますが、現象としてはほぼ同じです
昔、雑誌の付録などについていた赤青メガネ(アナグリフ)をかけて、画像を立体的に見た経験はないでしょうか。
最近では、特殊な偏光メガネをかけて、立体に見える映画(3D映画)を見たことがある方もいるかもしれません。
細かい原理はありますが、いずれも左右の目が拾う情報にそれぞれ差異を設け、そのズレを脳が奥行として処理することで立体視をつくりだす仕組みなのですね。
オートステレオグラムを見る方法は大きく2種類あります。
1)交差法:寄り目寄り(近くを見る方向の目の動き=輻輳が強め)
2)平行法(並行法):遠くを見るように力を抜く(開散方向)
慣れている人はどちらでも見られますが、見方によって立体の凹凸が反対になるなど見え方は変わります。
そして立体視を簡単にできる人と、できない人がいます。
これは、立体視の能力そのものにばらつきがあるためです。
あるレビューでは、良好な立体視をもつ人が約68%、中等度〜不良の立体視の人が約32%と報告されています[2]。

オートステレオグラムを立体視すると、視力がよくなるって本当?

「目がよくなる」との触れ込みで話題になったため、オートステレオグラムを立体視することで、視力が上がるのでは?と期待する人もいるかもしれません。
ですが、残念ながら視力向上に関する有力なエビデンスはありません。
私たちが一般にいう「視力」は、光が網膜にどれだけ正確にピントを結べるか、という光学的な要素に大きく関わっています。
近視なら眼軸長、乱視なら角膜や水晶体の形状などが影響しています。
一方、3Dアートで主に使っているのは、両眼の向きの調整や、脳の立体視処理で、担当している機能が視力とはそもそも違うのです[1]。
●視力:目で見た時に物体を識別できる能力のこと。
※いわゆる視力1.0、0.3などの数値は、基準となる距離から見て視力表の視標(ランドル環など)をどれだけ識別できるかを測定したものとなります
●立体視:両目と脳で奥行きを感じ取る能力のこと。
実際、視力が悪くてもオートステレオグラムを立体視できる人もいますし、視力がよくても立体視が苦手な人もいます。
立体視を見る能力と視力は、あまり関連はないのです[2]。

オートステレオグラムを見ることで、何か意味はあるの?

視力が向上しないからと言って、目にとって、全く意味がないわけではありません。
3Dアートの面白いところは、視力回復とは別の意味で、目の使い方に変化を与える点です。
現代人の目は、スマホやPCの見すぎで「近くを見続ける」状態に偏りがちです。
私たちが近距離を見るとき、目はピントを近くに合わせ、両目を少し内側に寄せています。
この状態が長く続くと、夕方になるとピントが合いにくい、目が重い、遠くがぼやける、といった不調につながりやすくなります。
このとき、オートステレオグラムを立体視(とくに平行法)すると、「画面の奥を見る」「目の力を抜く」といった動作になります。
目のピントを合わせる機能(調節)と、両目を寄せる・開く動き(輻輳・開散)は互いに連動しているのですが、その関係は一定ではなく、疲労や繰り返しの負荷によって変化することが報告されています[3]。
立体視を見る動きは「視力回復に役立つ」とはいえなくても、目のリラックスやストレッチ効果など、目の使い方に影響を与える可能性はあるようです。
スマホ疲れで固まりがちな目の使い方をリセットするきっかけとして、挑戦してみてはいかがでしょうか?

ただし、やりすぎ注意!

「目にいいらしい」と聞くと、つい長時間やりたくなりますが、ここは注意したいところです。
立体視では、実際の画面位置と脳が感じる奥行きにズレが生じるため、やりすぎると目にいいどころか、疲労感や頭痛、不快感につながることがあります。
これは立体映像研究でもよく知られている現象で、『VAC:Vergence–Accommodation Conflict(輻輳‐調節矛盾)』と呼ばれます。
VACは、「目の寄せ方(輻輳)」と「ピント合わせ(調節)」が、自然な見方では一致するはずなのに、3D映像やVRではズレてしまう現象で、視覚疲労や眼精疲労の原因と考えられています[1]。
立体視が得意な人も、そうでない人も、適度に楽しむ程度にしましょう。

昔の流行を、今の視点で見直してみる

3Dアートやマジックアイは、一時の疑似科学的なブームだった、と思われがちです。
でも実際には、立体視や視覚研究の文脈とつながる、れっきとした仕組みを持った画像です。
問題だったのは、その仕組み自体よりも、「見るだけで視力が回復する」といった言い方が一人歩きしてしまったことなのかもしれません。
だからこそ、今あらためて捉え直すなら、「視力改善法」ではなく、「目の使い方を変えるきっかけになる視覚体験」として見てはいかがでしょうか?
懐かしさもあり、家族で「見える?見えない?」と盛り上がれる。
しかも、スマホ時代の目の疲れを考える入り口にもなる。
昔流行ったものを、今の自分たちの生活に合わせて見直してみるのも、意外と悪くないのかもしれません。

参考文献:
1.Banks MS, Hoffman DM, Kim J, Wetzstein G. 3D Displays. Annu Rev Vis Sci. 2016;2:397-435. doi:10.1146/annurev-vision-082114-035800
2.Hess RF, et al. Stereo Vision: The Haves and Have-Nots. i-Perception. 2015;6(3)
3.Schor CM, Kotulak JC. Fatigue of accommodation and vergence modifies their mutual interactions. Invest Ophthalmol Vis Sci. 1986;27(8):1250-9.

[執筆者]

船木 彩夏
化粧品メーカー研究員

[出演情報]
2023.12.2 TBSラジオ:井上貴博 土曜日の「あ」

<資格>
・サプリメントアドバイザー
・健康管理士上級指導員
・健康管理能力検定1級
・日本化粧品検定 特級コスメコンシェルジュ

[監修]キレイ研究室編集部

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