夜型人間と生理

「早起きは三文の徳」ということわざがあるように、朝早く起きるということは、健康にも良いし、それだけ仕事や勉強がはかどったりするので得をするといわれています。最近では、「朝活」という朝型な生活を進める活動をおこなっている企業もあります。しかし、朝型であろうが、夜型であろうが、起きている時間はそう大きく変わらないので、実質的な差はないと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、サーカディアンリズムからみた朝型夜型の特徴と、メリットデメリットをご紹介します。

 

朝型夜型はサーカディアンリズムが関係する!

171019asatoyoru01世の中には朝型と夜型と呼ばれる人々がいます。一般的には、朝型は早寝早起き、夜型は遅寝遅起きといった特徴で知られていますが、その背景にはサーカディアンリズムが関係しています。

朝型の人は、夜型の人に比べてサーカディアンリズムのピークが早い時間帯(例えば午前)にあるため、目が覚めるのも早く午前中も活動的です。その代わりに夜眠くなるのも早くなります。

対称的に、夜型はサーカディアンリズムのピークが遅い時間帯(例えば午後)にあるため、朝は早く起きれませんし午前中は活動的になれません。そして、夜に寝るのも遅くなります。結果的にこれらが、朝型の早寝早起きと夜型の遅寝遅起きといった特徴につながります。

 

夜型が不健康だという2つの理由

171019asatoyoru03朝型夜型の違いは、サーカディアンリズムのピークだけを見れば、単にタイミングがずれているだけですが、社会的に見るとそこには大きな差が存在します。

例えば、学校や会社は始業時刻が決められており、朝型も夜型も同じ時刻に登校や出勤をしなければなりません。仮に起床時刻が朝型と夜型とで同じ時刻ならば、就寝時刻の遅い夜型は必然的に睡眠時間が短くなってしまいます。そのため、夜型は睡眠不足になりがちで日中に強い眠気を感じる人が多いのです。

このように、夜型のサーカディアンリズムと社会的な時間とのギャップは、夜型の人達の睡眠不足を助長する原因になっており、健康にも大きな影響を与える要因となっています。

夜型の人たちが、朝型の人たちに比べて不健康であるというのは、多くの研究で示されていますが、その原因は日常的な睡眠不足だけではなく、サーカディアンリズムも関係しています。夜型の人は、平日の学校や会社によって、睡眠時間が足りていないため、睡眠の不足分、いわば借金をどんどん抱える状態になります。睡眠の借金は“睡眠負債”と呼ばれ、夜型の人たちはこの睡眠負債を返済するために週末に長時間の睡眠をとりがちです。このような週末だけ寝る時間帯が変わってしまうような状態は、ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)と呼ばれています。つまり、夜型の人は週末だけ時差がある別の国の時間で生活をしているということになり、体内のサーカディアンリズムと睡眠覚醒のリズムがシンクロしない状況となります。

これが夜型の人の健康を脅かすもうひとつの原因となっています。

ここまで、夜型の人の悪い点ばかりを述べてきましたが、唯一、朝型よりも有利なことがあります。

それは、夜勤などの徹夜です。看護師や消防士、警察官などの交代制勤務では、必ず夜勤が存在しますが、夜勤への適応は断然、夜型の方が上です。朝型の人のサーカディアンリズムは、夜勤に適応するのが難しいため、夜中に強い眠気を感じたまま仕事をしなければならず、大きなストレスとなります。そのため、朝型の人は夜勤への不適応を理由に仕事を断念しなければならないこともあります。

しかし、夜勤そのものが体にとって不健康であるため、夜型のメリットは総合的に見ても高くないかもしれませんね。

 

朝型になるためのサーカディアンリズムの整え方

171019asatoyoru04ここまで読んで頂き、「夜型の私も朝型を目指そう!」と思った方は多いかもしれませんが、それはなかなかうまくいかないかもしれません。

朝型と夜型の背景には、遺伝的な要因も関係しているといわれています。したがって、もともと夜型の人が、完全な朝型になることはおそらく不可能です。

しかし、朝に光を浴びることで、サーカディアンリズムのピークを早い時刻に移動させることは可能です。“サーカディアンリズムと睡眠”のところで書きました、“朝に光を浴びて夜に光を浴びないようにする”ことで、夜型の人も朝型に近づくことはできます。

サーカディアンリズムを整えて、質の良い睡眠と朝型生活を手に入れてください。

なお、朝型・夜型は、質問紙で簡単に測定することができますので、インターネットで朝型夜型質問紙を検索して、ご自分の朝型・夜型を測定して参考にするのもよいでしょう。
(長島 俊輔)

長島先生
長島 俊輔(ながしま しゅんすけ)京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻
看護科学コース 基礎看護学講座 生活環境看護学分野 博士後期課程
日本学術振興会 特別研究員
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻。生体リズムに関する研究をおこない、さまざまな大学や学会で講演や研究発表をおこなっている。

経歴

平成22年 京都大学 医学部 保健学科 卒業
平成22年 看護師免許、保健師免許 資格取得
平成22年 京都大学医学部附属病院 看護部 就職
平成25年 京都大学医学部附属病院 看護部 退職
平成25年 京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 修士課程 入学
平成25年 京都光華女子大学 健康科学部 看護学科 非常勤講師
平成27年 京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 修士課程 修了
平成27年 京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 博士課程 入学(現在に至る)
平成27年 日本学術振興会 特別研究員 採用(現在に至る)

受賞歴

平成22年度 京都大学総長賞 受賞
平成27年度 日本看護技術学会 第13回学術集会大会賞 受賞

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