香水の始まりは女王の若返りの秘薬だった!?香りの歴史に触れてみませんか?~ビューティ今昔物語~
私たちはさまざまな香りに包まれて生活をしています。
私たち人類は、いつごろから香りを楽しむようになったのでしょうか?
意外と古い、香りと人間の歴史
パフュームの語源は、ラテン語のper(~によって)+fumem(煙)です。
このことからもわかるように、人は木や草を焚くことから香りとの関わりが始まったと考えられ、祭壇や神、死者などに香草や香木を焚いて捧げることは世界各地でおこなわれていたようです。
香料が大きく発展したのは古代エジプト文明で、ミイラの防臭・防腐や、パピルスの虫食いを予防することに使用されていました。
衣類や帽子に香を焚き締めたり、香料入軟膏をつくったり、口臭予防に香木を噛んだり、香りを楽しみ、身だしなみにも利用していたようです。
エジプトの女王クレオパトラ7世も、バラやジャスミンの香りを好んだとの逸話が残っています。
また、ある種の香料には鎮静効果や精神安定剤の効果があることが発見されたり、魔よけや病除けに珍重されたりしたという記録も残っており、香りの持つ薬理的な効果も着目されていました。
ギリシャ時代になると、ある花の香りは人をリフレッシュさせたり、リラックスさせたりする効果があるなどの効果が発見されました。医学の父ヒポクラテスは、300種類以上もの香草の薬効や、それらを用いた治療法について書き残しています。
そして10世紀ごろ、アラブ人医学者イブン・スィーナーによって、天然精油の蒸留方法(水蒸気による蒸留)が確立され、ローズの精油が誕生しました。
この発明によって、香料が液体状態で、品質のばらつきも少なく、安定供給ができるようになり、香料は徐々に広まっていったのです。
香水の始まり
香水の始まりは、14世紀の終わりに、ハンガリーで『ハンガリーウォーター』の登場からといわれています。
天然精油のローズマリー油に、バーベナオイルやローズウォーターなどをブレンドしてアルコールに溶かしたものが、香水の原型なのです。
もともとはハンガリーの女王エリザベートの若返りの秘薬としてつくられたもので、これをつけたエリザベートはみるみる若返り、72歳のときにポーランド国王に求婚されたという逸話も残っているそうです。
歴史的にみると残念ながら事実ではないそうですが、奇跡のアンチエイジング化粧品ですよね!
その後、16世紀初めにイタリアのフィレンツェに世界初の香料製造研究所がつくられます。
フィレンツェ出身のカトリーヌ・ド・メディチがフランス国王に嫁ぐときに、香料の技術を持ってきて、南仏のグラースにて発展させました。
なんと、カトリーヌがフランスに持ってきた処方と同じ香水が、今でもフィレンツェで「アクア・デ・レジーナ(王妃の水)」として売られているそうです。
18~19世紀に入ると、フランス国王や権力者の妻や愛人たちが対抗するように香りを使い始めたこともあって、グラースは香りの聖地としての地位を確立させていきました。
たとえば、
・ポンパドール婦人→ムスク
・デュ・バリー婦人→アンバーグリース
・マリーアントワネット→バラとスミレ
・ジョセフィーヌ皇后(ナポレオンの妻)→バラとムスク
といった具合に、当時の貴婦人たちはシグニチャー・セント(自分を象徴する香り)を有していたようですね。
グラースは今でも香水の都として有名です。
19世紀以降、有機化学の発達によって多くの合成香料が生み出され、現代のものに近いフレグランス化粧品として、さまざまな香水がつくり出されるようになりました。
アロマテラピーとアロマコロジー
20世紀に入って、病理学者のガットフォセにより天然精油やフローラルウォーターを使った治療法はaroma(芳香)+thrapy(療法)から、アロマテラピーと名付けられました。
アロマテラピーは、植物から抽出した油を使って、美と健康に役立てる自然療法を指します。
AEAJ(公益社団法人 日本アロマ環境協会)によると、アロマテラピーは
●心と身体のリラックスやリフレッシュを促す
●心と身体の健康を保ち、豊かな毎日を過ごす
●心と身体のバランスを整え、本来の美しさを引き出す
を目的におこなわれています。
アロマテラピーは精油を中心に組み立てられたもの。
しかし、精油だけでなく、香料全般の有用性を科学的に実証し、広く香りの効果を活かそうという考えから、aroma(芳香)+physio-psychology(生理心理学)の造語である、アロマコロジーが生まれました。
香りの効果を生理的心理的に科学的に評価、測定することで香りの効果を実証します。
香りと免疫力の関係や記憶力との関係、ストレスやメンタルに関する影響などさまざまな研究がなされています。
また、アロマコロジーにはプラスの面だけでなくマイナスの効果もあります。
近年話題となっている『香害(香りによって頭痛がしたり気分が悪くなったりすること。強い芳香の柔軟剤などの流行により話題に)』は悪い例のひとつと考えられます。
香りを使う上では、香りの持つ良い作用と悪い作用の両方を考えることが大切なようです。
古来から私たちがさまざまな形で愛用してきた香り。
香水、シャンプー、バスグッズや入浴剤に柔軟剤やルームフレグランスなど、現代でもさまざまな形で、好きな香りをいつでも楽しむことができます。
何かと忙しい現代。
たまには好きな香りにゆったり包まれて、のんびり過ごす時間を設けてみてはいかがでしょうか。
[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]