皮膚科医が教える「冬を乗り切るアトピー性皮膚炎対策」は2つ!日ごろのケアが大切です!

冬になり、肌の乾燥を感じる方も多いのでは?
中でもアトピー性皮膚炎の方にとっては乾燥の悪化に悩まれる時季でもあります。
今回は、皮膚科医で肌クリニック大宮の院長である相馬孝光先生に、冬のアトピー性皮膚炎についてお話を伺いました。

冬場は気候の影響もあり、皮膚は乾燥しやすくなります。
一般の方でも「乾燥肌」を自覚することは多々あると思います。
アトピー性皮膚炎の人は、後述する理由で、「そもそも皮膚が乾燥しやすい人たち」ということができ、冬場は症状が悪化しやすい季節です。
それでは、アトピー性皮膚炎の人は、何故「皮膚が乾燥しやすく」、そして、それがどうして「症状の悪化を招く」のでしょうか?

アトピー性皮膚炎の皮膚の特徴


人の皮膚は外部の刺激から身体を守り、また身体の中の水分を閉じ込めておく、いわば「スーツ」の役割を果たしています。これを「皮膚のバリア機能」と呼びます。
このバリア機能は、皮膚の最外層である「角層」およびその産生を行う「表皮層」により形成されています。
この角層や表皮層の「隙間」を埋めて皮膚の密度を高めるたり、うるおいを保持したりする役割をしているものに「細胞間脂質」や「天然保湿因子」と呼ばれるものがあり、「セラミド」「フィラグリン」などがその代表的なものです。

アトピー性皮膚炎の人では、先天的な遺伝子変異により、この「セラミド:細胞間脂質の主成分のひとつ」や「フィラグリン:角層上部で分解され天然保湿因子となる」の分泌量が少ないことが分かっており、このため皮膚に「隙間」ができてしまい、皮膚のバリア機能が低下してしまうのです。こうしたバリア機能の低下した皮膚の状態は、前述の例でいえば、「穴だらけのスーツ」を着ているようなもので、皮膚本来の役割である「外部の刺激からの保護」「皮膚表面の潤い保持」が難しくなってしまい、「強い乾燥肌・敏感肌」になってしまうのです。

冬を乗り切るアトピー性皮膚炎対策

アトピー性皮膚炎の人は、前述の通り皮膚が乾燥して強い敏感肌になりやすく、自分の衣服・髪の毛などが擦れただけでも「かゆみ・炎症」を誘発してしまいます。
従って、アトピー性皮膚炎における基本的な対策は以下の二つです

1)かゆいところを掻かないこと
アトピー性皮膚炎の治療の基本はステロイド外用剤ですが、強い敏感肌となっていますので、搔破して刺激を与えている限りは、ステロイド外用剤をいくら塗っても症状は一進一退になってしまうことが多いです。したがって「掻かずに薬を塗る」ということが大変重要になります。
アトピー性皮膚炎の人にとっては、「掻かない」ということは大変困難なことでもありますので、症状次第ではステロイド外用剤に加えて抗ヒスタミン剤などのかゆみ止めの内服薬を併用してもらうこともあります。
また、冬は温かいお風呂に入りたくなりますが、一般的に「身体が火照るとかゆみは増す」ことなり、特に就寝前の入浴は、就寝中の搔破につながってしまうことがありますので、かゆみが強い状態の時には、なるべく入浴は「ぬるい温度で短時間」「シャワーだけで済ます」などの対策をおすすめします。

2)こまめな保湿をすること
前述の通り、アトピー性皮膚炎の人の皮膚では、フィラグリン・セラミドなどの分泌量の低下により、乾燥肌・敏感肌の状態となっています。そこで、こうした不足している天然保湿因子や細胞間脂質に代わるもの(いわゆる保湿剤)をこまめに塗って「皮膚の隙間」を埋め、「穴だらけのスーツ」を「本来のバリア機能を持ったスーツ」に近い状態に保っておくという作業が大変重要になります。
この保湿という作業は、アトピー性皮膚炎の人にとって、いわば虫歯予防のために毎日行う「ハミガキ」のような位置づけであり、アトピー性皮膚炎のガイドラインにおいても、長期的コントロールにおいて欠かすことのできないものとなっています。
保湿は年間を通して生活習慣として行ってもらうのが重要であり、またできれば1日に数回していただくとより効果的です。特に冬場は気候が乾燥して、皮膚の乾燥に拍車がかかる時期ですので、保湿をこまめにしていただくことをおすすめします。

冬場は湿度と気温が低下するため、肌の乾燥も進みやすい季節です。
・かゆいからといって掻かない
・こまめに保湿をする
ことは、スキンケアの基本となりますので、意識したケアを行いましょう。
セルフケアで改善が見られない場合や症状がつらいときは、早めに皮膚科医に相談してください。

執筆者

相馬孝光先生
肌クリニック大宮 院長
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医

[経歴]
一般皮膚科から美容皮膚科診療まで、患者さんの悩みにオールマイティに応え地域医療に貢献することを理念として、埼玉県大宮でクリニックを運営。
医師になる前は銀行員(!)という異色の経歴を生かしながら、日々患者さんや医院のスタッフと向き合い、日々の診療に邁進している。

肌クリニック大宮ホームページ
https://e-hifu.jp/

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